【キングコーポレーション】SDGs対応製品「サーキュラーコットンペーパー」と軽包装商材で印刷業界に新たな価値を提供

株式会社キングコーポレーションは、昭和7年(1932年)に名刺・カード等の製造販売で創業して以来、時代のニーズを捉えながら名刺以外にハガキや封筒類、カレンダー等の通販サイトの運営、パック封筒などのホームセンター用商品を扱うなど紙製品の製造・販売している。2024年にはM&Aやラインアップ商品を増やすなどサービス内容を拡充した。

近年は、社会的にも自社的にもビジネスに関係する分野で変化があった年になった。特に2024年10月の郵便料金の値上げでは、封筒を使う定型郵便物が「25gまで84円/50gまで94円」から「一律50gまで110円」になり、DMなどビジネスで封筒を扱う企業においては、封筒からはがきへの切り替えを考える企業も少なくなかった。

しかし同時に、値上げの問題は郵便料金に限ったことではない。諸資材そのものが高騰し、ガソリン代や人件費の値上げの影響もあり、宅配などの運送費も値上がりした。この状況から、“物流クライシス”とまで言われ、配送・物流業界に危機感が蔓延した。加えて、「翌日に荷物が届かない」「再配達が増えている」といった課題も噴出し、その結果として置き配文化も定着しつつあるのが現状である。
棚橋社長は「郵便料金の値上げはインパクトのあった出来事でもありましたが、郵便局のサービスには値上げしていないサービスもあり、宅配サービスと比較すると郵便の方が安いものもあります。一方で宅配サービスにおける再配達問題は年末には再配達が6割を超えるともいわれるなど、深刻な問題となっています」と解説する。

棚橋利仁社長

こうした時代の流れの中、社会課題を解決するものとして注目を集めている商品の一つに、キングコーポレーションのポストインができる「軽包装用商材」がある。同社では10年前から提供している商品で、組み立てて箱にしても厚さが3㎝程度なので配達先のポストに入れることができる。これにより届け先が不在でも配達を完了でき、宅配業者も不在だから持ち帰って再配達することもなくなる。これは人件費を抑え、配達する人の拘束時間の縮小にも繋がる効果が期待できる。ポストイン商材(小型薄型荷物)については、日本郵便、ヤマトのネコポスが継続されることになり厚さ25㎜の商品の新商品を企画するなどますます注文が高まっている。

社会課題に対応できるポスト投函可能な「軽包装用商材」について、「メニュー数も増やして、今後も商品の充実に力を入れていきたい」と関課長は語る。現在、ポストン対応の包装材「軽包装用商材」としては、片面ダンボール封筒、ビジネスバッグ、ポストイン封筒、ポストイン封筒厚口の他、G段を使用しているポストインカートンA4 H28、PEクッション封筒、発送用名刺ケースホワイトCoC、ポストイン対応名刺ケースなどをラインアップ。製造については、一部で海外製品も活用しながら、薄紙、厚紙、段ボール素材まで、用途に応じた包装材を選択できる。

  

ポストイン封筒厚口

また最近では、インクジェットプリンターを設備し、小ロットでも名入れが出来るようにした。1ケース単位から受けられる付加価値のある商材にランクアップした。

「軽包装用商材」の採用は、企業のSDGs活動にも貢献する。ポストインにより再配達をなくして配達ロスを削減し、リサイクルできる紙製品の持続的な配送梱包商材を選択することが、SDGsの9番(産業と技術革新の基盤をつくろう)と、12番(つくる責任 つかう責任)に該当する。「軽包装用商材」を使うこと自体がSDGsの活動をしていることになり、2030年のSDGsの目標達成に向けて貢献していることがPRできる。

また、既製品マチ付きの封筒も、これまでは単色でしか名入れ印刷ができなかったが、カラーで印刷が可能になった。企業のロゴマークなどのカラー印刷が出来るようになり、好評な商材となっている。これまではまとまったロット数でなければカラー印刷で名入れができないと思われていた商材でもあることから、顧客先からは良い反応が得られている。既存顧客が学校や役所、一般企業で書類を送る場合に重宝してきた商材でもあり、従来から使われていたものだが、カラー印刷ができることで付加価値が高い新たなサービスになっている。

同社は、廃棄コットンを50%以上配合した用紙「サーキュラーコットンペーパー」を活用したSDGsに貢献する製品を、昨年から販売している。

廃棄コットンとは、綿のゴミや生地の切れ端を原料に採用するプロジェクトで、アパレル業界で問題となっている繊維のゴミを減らし、パルプの消費量も抑えることができる。
この活動は繊維業界だけでなく、学校、病院、環境を扱った会社からの注目度が高く、「サーキュラーコットンペーパーは、単なる混抄紙ではなく、ストーリーとして提案できる商材づくりを行うことができる点が魅力です」と棚橋社長は語る。

絶滅危惧種カレンダー

また、雑貨デザイナーで絵本作家のシンジ・カトウ氏が展開している絶滅危惧種を扱ったデザインのカレンダーを企画し、企業の名入れなどをするカレンダーとして販売した。同カレンダーは、二つ折りと卓上の2種類を用意。カレンダーの紙には、サーキュラーコットンペーパーを採用しており、カレンダーの売上の一部は国際自然保護連合日本委員会に寄付され、絶滅危惧の保護活動支援に役立てられる。

このカレンダーを購入することで、繊維ゴミが再利用されて無駄を少なくし、森林パルフ使用量の削減にも貢献でき、絶滅危惧種の保護活動にも寄付が出来る。つまり、販売すること自体がSDGsに繋がり、購入した人も、商材を卸す会社も、製造して提供する印刷会社も含めて、カレンダーに関わる全てのステークホルダーがSDGs活動を一緒に行うアイテムになる。1部あたりの単価が高くても、環境意識の高い商品として、社会に貢献したいという気持ちに寄り添う商材となっている。  サーキュラーコットンペーパーについて棚橋社長は、「廃棄コットンが50%も配合されている紙なんて、想像を超えていると思います」という。独特の風合いもあるのが特徴で、一度採用して、気に入り、何度もリピートする顧客も多い。価格で競争する商品とは異なり、付加価値の高い商品として、今後も発展していくことを期待している。

同社は、地域のつながりを大切にした「都道府県いいとこかるた協会」にも参加している。女性3人が中心となり、地域の協力者を募り、読札になる言葉を募集。ワークショップで子供たちが絵札の絵を描き、最後に、かるた大会を開催するハートフルな企画。
必要経費はクラウドファンディングを使用し、初回は「茨城県」で実施した。

製作には、環境に配慮した素材としてサーキュラーコットンペーパーを採用。地域の魅力を伝える製品であるからこそ、環境負荷の少ない素材選びを重視した。プロジェクトの目的は、地域の魅力を発信することと、かるた大会の開催にあった。5月5日には、実際にこのかるたを使った大会が行われている。

小ロット製作が難しいとされるかるただが、同社では専用テンプレートを用意し、オンデマンド印刷機と名刺カッターを活用することで対応。オンデマンドならではの柔軟な小ロット印刷を実現している。

その他にも同社では、クリアホルダーの代外品として「ペーパーホルダー」もランアップしている。厚口の素材や色上質の素材も加わり、ニーズに応えている。色上質のペーパーホルダーは、企業名などを印刷する時にカウント料金が安いモノクロ印刷にしても、見栄えがよい点が評価されている。また「ペーパーポケットホルダー」は実用新案を取得している商品で、印刷会社が販売できるアイテムの一つとして提供している。

クリアホルダーの小ロット製造はコスト高になるが、同社のペーパーホルダーシリーズを利用することで、小ロット・カラーのオリジナルなペーパーホルダーを提供できる。PPに変わる紙製のホルダーなので、SDGsのマークも入れることができ、採用する企業にとってもSDGsに参加しているアイテムになる。そのため印刷会社としても提案しやすい商材となる。

「キングコーポレーションにとって2024年は、一つの変化を受け入れた年でもあった」と振り返る棚橋社長。横断幕やタペストリーなどのPOP製造している会社の全株式を取得し、グループ会社化したのだ。新しいグループ会社を獲得したことで、商品が増加し、提供する顧客先にとってもメリットがあったのではないかと語る。

同社は完全な内製化ではなく、一部海外からの仕入れなども活かしながら商品を充実させているほか、後工程のサービスも強化するなど、ベンダー的な機能も持ってサービスを展開している。

こうした動きは、主な顧客先である印刷会社にとって役立つ関係を目指しているもの。ただし最近は、印刷会社側にも様々な機能を拡充する動きがあるため、「さらに一歩進んだ機能へとサービスの質を高めていくことでお役立ちできる会社であり続けないといけないと思っています。またお客様と連携することでも、お役に立てていけるのではないかと期待しています」と述べている。
特に、同社が本業としている封筒の市場は競合他社との間で厳しい競争があり、局地戦の傾向が強い市場でもある。そのため「いかに自社の市場を守るのかを常に考えております。2024年は新たな市場を創ることで売上規模を維持してきたいと考え、そこに腐心していました」と振り返る。今後の目標については、ECサイトの拡充を目指しており、印刷や紙の世界からさらにビジネスを拡げていきたいとしている。

 また、デジタル化が進み、ペーパーレス化が正義のように言われるシーンが増えていることも懸念する。紙は従来からリサイクル率が高く、正しく活用することで環境にも優しい素材である。こうした見方は“紙”に携わる人の間での話に終始しがちなことも課題であると指摘する。世界では紙の教科書が見直されたり、若年層のSNS利用を抑制しようという動きも出ており、「紙は本来、インフラであるのに、軽視される風潮がある。社会一般に向けて、紙の重要性や良さを発信していくことは大切なことだと思う」と棚橋社長は語る。

 現在の印刷市場は約5兆4000億円規模で推移しており、「現在の紙の市場規模を守っていきたい」。そのためにも、新商品やアイデアを出し続けることが大事だと語る。「時代は変わります。紙に対する付加価値への要望が強くなるかもしれません。紙の力がもっと見直されると言いなと思っています」と展望している。

【会社情報】
 株式会社キングコーポレーション
 本社:愛知県名古屋市中区丸の内3丁目7番23号
 電話:052-961-7661
 HP:https://www.king-corp.co.jp/

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