【みつや】『衰退か、再成長か』印刷業界の変化やシナジーにとらわれない新規事業の意義を語る 印刷業の生き残りをかけた戦略、再成長へのヒントを示す
株式会社みつやは、印刷業界に特化したコンサルタントファーム。『印刷会社の生存戦略』『印刷業界の未来図』といった著書のほか、「九州印刷新聞」などの情報サイトや講演、社内研修を通じて、全国の中小・中堅印刷会社の再成長を支援している。株式会社みつやの代表、光山忠良氏による印刷業界を生き残るための生存戦略について寄せられた記事を紹介する。
第2次社名変更ブーム
凸版印刷が2023年にTOPPANホールディングスに社名変更したのは周知のとおりだが、社名変更したのはなにも大企業だけではない。第一印刷所(新潟市)はDI PALLETEに、水上印刷(東京都)はMICに、平林印刷(福井県)はチャンスメーカーに、協進印刷(神奈川県)はココラボに、それぞれ社名変更している。第二次社名変更ブームといっていいかもしれない。
しかしマルチメディア時代と騒がれた1980年代~90年代の第一次社名変更ブームとは大きな違いがある。当時の社名変更は「〇〇メディア」とか「〇〇コミュニケーションズ」といった社名変更が多かった。しかし今や、印刷どころか、メディアやコミュニケーションにもとらわれていていないCI変更がほとんどである。たった10年前には「印刷に捉われないメディア提案を」と提唱していた私も、前言を撤回しなければならない。もうメディアにすらとらわれない業態変革をしなければならない。
シナジーは後付けでもいい?
「飛び石戦略は絶対に成功しない」とある経営者がおっしゃっていた。その通りだろう。今ある人材や設備、技術を活かした業態変革が王道だろう。シナジー(相乗効果)は大切だ。
しかし印刷に落とし込むための施策づくりという思考の檻の中では、ひょっとしたら印刷業とともに共倒れするかもしれない。新しい発想も生まれないかもしれない。
東日印刷の子会社である毎日新聞首都圏印刷センターは、きくらげの栽培を開始した。新聞印刷工場が食物を栽培するなんて突飛な事例のようだが、よくよく聞いてみると、シナジーはある。温度が一定に保たれた工場、24時間オペレーターが常駐するシフト体制、機械の操作に慣れたオペレーター、これらの要素は、きくらげのハウス栽培には適している。
私の地元・福岡には、喫茶店を開いた印刷会社もあれば、パン屋を開いた印刷会社もあれば、農業を始めた印刷会社もある。各社とも、消費者の声を聞くため、地域密着会社のシンボルにするため、地元の社会課題を解決するためといった、素晴らしい理由があり、印刷業とのシナジーもある。
だが、この際、シナジーは脇においてもいいのではないか。新規事業を考えるうえで、ゼロベースでものごとを考えてもいいのではないか。「そんなシナジーなんて後付けではないか」と言われてもかまわない。成長市場に投資して、会社を再成長させようという強い意志こそが、会社を救うのではないか。
解体してものごとを考える
『印刷会社の生存戦略』
拙著『印刷会社の生存戦略』(2023年)はおおむね好評をいただいたが、少なからず批判も受けてきた。「印刷はなくなるというのか」「印刷業はオワコンなのか」などなど。
私は「印刷はなくなる」とは一言も言っていない。だが、印刷業は解体されるかもしれない。印刷会社はマーケティング支援会社になるかもしれないし、事務局運営会社になるかもしれないし、コンサルタントファームになるかもしれないし、顧客のロジスティックスを担う会社になるかもしれない(すべて実例だ)。その時、印刷は目的ではなく、顧客のソリューションのための手段にすぎなくなるだろう。同著の終章に「印刷業がなくなる日」と書いたのは、そういう意味である。
このたび、『衰退か、再成長か 記者が見た印刷業界の20年』を出版させていただいた。衰退するのか、再成長するのかというご質問に対しては、この本を読んでいただきたい。だが印刷市場の低迷を嘆くライバルを横目に、39期連続増収を達成した印刷会社や、起業から13年で売上30億円を達成した印刷会社や、数年で100億円企業に成長し、次の10年で200億円企業を目標としている印刷会社があるという事実をお伝えしたい。市場や経営環境を言い訳にせずに、成長を希求し、成長領域に投資し、時流に乗ることが、結果的に自社を生存されることになると、私は考える。
関連書籍
■印刷業界の未来図 「危機の20年」を超えて
「印刷産業は斜陽産業かもしれない。しかし自社は、自社だけは成長するのだという強い覚悟が必要なのである」――話題作となった『印刷会社の生存戦略』に続く光山忠良の印刷業界に向けたビジネス書第2弾は、2030年の印刷産業の俯瞰図である。「危機の20年」を切り抜けた先には明るい展望が開けてくる。2030年までに中小・中堅印刷会社がするべきこととは。生き残るメディアと、絶滅するメディアとは。具体例をふんだんに盛り込んだ印刷業界関係者必読の書! ¥1,980(税込)
■衰退か、再成長か 記者が見た印刷業界の20年
テレビさえ「オールドメディア」とされる現代。かつて隆盛を誇った印刷業界は、IT革命の荒波に晒され、20年で市場規模が約4割縮小した。衰退産業と揶揄される一方で、それでも成長を遂げた企業がある。この違いは何か。同書は、長年印刷業界を取材し続けた記者が、自らの体験と現場の声をもとに、業界の変遷を克明に記録した。
衰退と成長の分岐点を見つめることで、次の10年に何が問われるのかが見えてくる。メディア、広告、製造業に関わるすべての人に手に取ってほしい一冊。 ¥1,980(税込)
印刷業界専門コンサルタントです
ライターやコンサルタントは数多くいますが、私たちは印刷業界専門コンサルタントファームです。『印刷会社の生存戦略』『印刷業界の未来図』などの著書、「九州印刷新聞」などの情報サイト、講演、社内研修などを通じて、全国の中小・中堅印刷会社の再成長を支援します。
印刷会社、特に中小・中堅印刷会社の経営者様の目となり、耳となることをお約束します。マーケティング・サービスやビジネス・プロセス・アウトソーシングなど、印刷会社が再成長できる分野は必ずあります。それをお伝え、成功に導くことが、私たちのミッションです。
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