アンケート調査結果【枚葉印刷機の未来形とAI・自動化】
枚葉印刷機の未来形とAI・自動化
アンケートが示す現在地と今後の方向性
ニュープリンティング株式会社は4月10日から4月16日まで、特集「オフセット枚葉印刷機の未来形-自動化とAIで拓く-」開設に伴い、枚葉印刷機のあり方や「今と未来」を可視化することを目的とした特別アンケート「枚葉印刷機の未来形とAI・自動化」を実施した。保有設備の実態から自動化の現状、AI技術への期待、次世代オペレーターの役割まで、中小規模を中心とした印刷会社20社のリアルな声を集約している。本記事では、その集計結果と現状分析、未来予測、総合考察を詳細に報告する。
調査概要
有効回答数は20名から得られた。回答企業の従業員規模は55%が「11~50名」規模となり、中小規模の印刷会社が中心のデータとなっている。
アンケート調査は、保有設備・自動化の現状・枚葉機の強み・次世代機導入の課題・AIへの期待・オペレーターの未来像・今後の投資意欲・自由記述の8項目で行った。
カテゴリ別の主要な集計結果
■保有設備:デジタル機とオフセット機の併用が主流
「現在の保有設備を教えてください(複数回答可)」という設問の回答からは「製本・後加工機」を併設している企業が18社あった。また、「枚葉オフセット印刷機」と「デジタル印刷機」の併用体制が定着していることが明らかになった。
【アンケートによる設備の分類と結果】
- 枚葉オフセット印刷機:UV、UV・LED 14社 / 油性 12社
- デジタル印刷機:トナー 17社 / インクジェット 10社
- 製本・後加工機:18社
- その他(企画・編集・データベース・組版・画像処理):1社
■現在の自動化レベル:「部分的な自動化」が主流、スマートファクトリーは一部にとどまる
「【現状】現在の自動化・省力化の導入レベルは?」という設問では、「部分的な自動化」が65%と最多を占め自動化の途上にあることが示された。
「高度な自動化」は25%で、完全なスマートファクトリー化を実現している企業はわずか5%にとどまっており、高度な自動化への移行が全体の課題として残されている実態が浮き彫りとなった。
■枚葉印刷機の最大の武器:量産コストと品質、用紙対応力が三本柱
「【枚葉機の強み】デジタル化が進む中で、貴社が考える「枚葉印刷機の最大の武器」は何ですか?(複数回答可)」の回答で最も多く挙げられた項目は「中〜大ロットにおける生産コストの低さ」(14票)、次いで「圧倒的な印刷品質」(11票)、「対応できる用紙の幅広さ」(11票)となった。
また、「長年培ってきた色管理の安定性と信頼感」(7票)や、「インラインコーター等の特殊加工・高付加価値化」(5票)にも票が集まり、コスト優位性・品質・用紙対応力・特殊加工という複数の強みが、デジタル化が進む現代においても枚葉機が選ばれ続ける根拠となっていることが確認された。
■次世代機導入・自動化の課題:ROIの不透明さが最大のボトルネック
「【課題】 次世代機の導入やさらなる自動化を成功させるために、最も重要(鍵)となる要素は何だとお考えですか?(最大2つまで)」という設問では、次世代機の導入および自動化を進める上での課題として「導入コスト・投資対効果(ROI)が見えにくい」が16票で圧倒的なトップとなった。高額な最新設備への投資に対し、回収シナリオが描きにくいことが大きな障壁になっていることが示されている。
また、「メンテナンス体制や故障時の不安」(6票)や、「小ロット・多品種化による切り替えロスの増大」(5票)にも票があつまり、導入後の運用面に対する懸念も一定数見られた。
■AI技術への期待:品質安定と技術継承がツートップ
「【今の傾向・期待】AI技術の導入により、最も解決を期待する項目は何ですか?」という設問では、「品質の安定(自動色調補正等)」が7票(35%)で最多となり、次いで「技術継承(ノウハウのデジタル化)」が5票(25%)を占めた。
単なる省力化にとどまらず、品質管理や熟練技術の継承という経営課題の解決手段としてAIへの期待が高まっていることがわかった。
また、「稼働率の向上: 故障予兆検知による「止まらない印刷機」の実現」は4票(20%)で、突発停止の防止や稼働率改善に対する関心も確認された。
その他の回答として「AI演算による消費インク(面積比)などを利用した実働価格の透明化」も挙げられている。
■オペレーターの未来像:監視者・マネージャーへの役割転換
「【今後の展望】AI・自動化が極限まで進んだ際、オペレーターの役割はどう変化すると予想しますか?」というオペレーターの将来的な役割を問う設問に対しては、「1人で複数台を管理する監視者・マネージャー」が7票(35%)で最多となり、「前後の工程や生産管理の重要性が高まる」が6票(30%)でこれに続いた。
また「職人的な感性は、機械化が進んでも依然として必要とされ続ける」3票(15%)で、AI・自動化の進展後も人ならではの判断や感覚の価値が残ると考えられていることがうかがえた。
その他の項目では「オペレーター人材の労働価値の低下」も挙げられたが、「品質管理、色調管理をAIで補助しながらも機器管理は経験のあるオペは必須である」という回答もあり、現場作業者としての職人像から工程全体を俯瞰するマネジメント人材へと役割が変化するという認識が共有されていることが読み取れる。
■次回の投資意欲:機能の厳選と後加工・ソフト面への転換
「【投資意欲】次回の設備更新時、AIや自動化機能をどの程度重視しますか?」という今後の設備投資の方向性についての設問に対しては、「コストとのバランスを見て必要な機能だけ」という回答が9票(45%)で最多となった。また、「印刷機そのものではなく、後加工やソフト面への投資を優先」が6票(30%)を占め、印刷機本体のフル装備を望む声は3票(15%)にとどまった。
投資の重点が本体のスペック競争から、効率化・付加価値創出のための周辺領域へとシフトしている実態が示されている。
現状分析:今の印刷を可視化する
デジタルとオフセットの共存と棲み分け
多くの企業がデジタル機と枚葉オフセット機を併用している。デジタル化が進む中でも、枚葉機は「用紙対応力」「高精細な品質」「中〜大ロットのコスト優位性」という点を武器として、適材適所の使い分けが行われている。デジタル機と枚葉オフセット機は競合関係にあるのではなく、それぞれの特性を活かした役割分担が現場レベルで定着していると見ることができる。
自動化の壁
自動化については、自動刷版・洗浄などの「部分的な導入」に留まっている企業が多く、高度化への壁が存在する。その最大のボトルネックは「ROI(投資対効果)の不透明さ」である。コスト高の最新設備を導入しても、小ロット・多品種化による切り替えロスの増大などの運用課題があり、回収シナリオが描きにくいのが現状だ。設備投資の判断に踏み切れない企業が多い背景には、こうした構造的な課題が存在している。
未来予測:方向性と示唆
オペレーターの役割は「職人」から「マネージャー」へ
AIや自動化が極限まで進むと、オペレーターは機械につきっきりで調整を行う職人から、複数台を俯瞰して管理する「監視者」、あるいは前工程・後工程を含めた「生産管理者」へとシフトするのではないか、という回答が多数挙がった。このアンケート結果から、AIは品質安定と技術継承を担うため、人に求められるスキルは感覚による技術の伝承から、データマネジメント・マネージャーなど生産現場を管理することへ変化していく可能性があると考えられる。
投資の焦点は「本体のハイスペック化」から「後加工・ソフト・最適化」へ
次回の設備更新では、印刷機本体のフル装備を望む声は15%に過ぎない。代わりに「必要な機能の厳選」や「後加工・ソフト面への投資」が重視されていることが分かった。
今後は、いかにして「既存設備をAIで効率化するか」「後加工を含めたトータルワークフローで付加価値を生むか」が未来の競争力を左右する鍵となるのではないだろうか。設備の高機能化よりも、全体最適を実現するための「つながり」への投資が求められる時代に入っているように考えられる。
回答者の声:枚葉印刷機の未来とは
以下、「【自由記述】 枚葉印刷機の未来について、期待することや不安なことがあれば自由にお書きください。」という設問の回答を紹介する。
- ■枚葉印刷とデジタルプレスでの数量分岐点が曖昧になって行くのでは?
- ■紙媒体の不要が極端に進むことは危惧しています
- ■枚葉印刷機というジャンル分けではなく、オフセット印刷の対応守備範囲を限定して考える必要があると考えます。他の印刷方式に比べて導入しやすかったオフセット印刷ですが、PODにその分野を奪われたように、他の印刷方式も用途と成果に合わせて選択されるべきだと思います。とすると現在の印刷会社においての選択肢はまだ数が少なく高価であると思われます。AIがもたらす効果として、生産機としてのイニシャルコストを下げる形での利用を期待したいと思います。
- ■枚葉印刷機だけだと不安と思わせるだけ、デジタル印刷機の生産性と柔軟性が向上すること
- ■人がいる限り、ブック印刷はなくならない。
- ■世界一のオフセット印刷品質が継続すると期待する。オフセット印刷特有の特殊加工の分野で価値が上がることも期待する。
考察:データから読み解く3つの課題
品質とコストのジレンマ
枚葉機の強みは「品質」と「量産コスト」にあるが、小ロット多品種化という市場ニーズと、最新設備の高い導入コストとの間にミスマッチが生じている。このジレンマは短期的に解消されるものではなく、各社が自社の受注構造を踏まえた上で投資の優先順位を慎重に見極める姿勢が求められる。
技術継承に対するAIへの強い期待
熟練者の高齢化や人材不足への対応策として、AIには単なる省力化にとどまらず、「ベテランのノウハウの代替(技術継承)」という役割が期待されている。この点は、AI導入の目的を生産効率だけで語ることは難しく、人材戦略と一体化した形でのAI活用計画が必要であることを示唆していると考えられる。
「成果物としての価値提供」への転換
自由記述の「枚葉印刷機の未来について、期待することや不安なことがあれば自由にお書きください。」の項目では、「オフセット特有の特殊加工での価値向上」や「デジタル機との数量分岐点が曖昧になる」といった声が寄せられた。単なる印刷方式の枠を超えた「成果物としての価値提供」が求められており、印刷会社としてのアイデンティティを方式や技術ではなく、顧客に提供する最終的な価値に置き直す視点が今後ますます重要になると考えられる。







