アイワード 持続可能な出版事業の在り方を追求 見える化×自動化でスマートファクトリー

北海道の株式会社アイワードは、2025年4月10日、創業60周年を記念して「石狩スマートファクトリー オープンLIVE」を、同社石狩工場で開催し、顧客企業や業界関係者ら約240人が参集した。この年は、同社においてハイデルベルグ社製印刷機導入50周年、ミューラー・マルティニ社製製本機導入40周年でもあることから会見も行い、アイワードの奥山敏康社長、ハイデルベルグ・ジャパン株式会社ヨルグ・バウアー社長、ミューラー・マルティニジャパン株式会社五反田隆社長、アイワードの浦有輝ディレクターが、持続可能な出版事業の在り方やDXによるスマートファクトリー化への取り組みについて発表した。

左から奥山社長、バウアー社長、五反田社長、アイワード・浦氏

アイワードグループ(アイワード/共同文化社)は、本づくりと出版活動を通じて社会に貢献することを旗印に事業を展開している。中でも石狩工場はアイワードの製造拠点であり、設備投資や環境整備において常に注目され続けている工場でもある。
特に、同社の強みである出版印刷事業を基軸にした事業展開と、〝ブック印刷自動化への取り組み〟を進めており、オープンLIVEでは、その成果についても披露された。

工場見学会「石狩スマートファクトリーオープンLIVE」は、①刷版、②枚葉印刷機XL106シリーズ、③VMI印刷資材在庫管理システム、④調色システム、⑤自動用紙断裁システム、⑥用紙折り加工ライン、⑦製本システム、⑧カバー・帯掛け機トライオートの8つのエリアに分けて見学。その他に、本社と連動している管理棟は3人で管理しているなどの省人化が進んでいることや、石狩工場が竣工した約30年前と比べて印刷工程のデジタル化が進み、フィルムを保管していた部屋を多目的ルームとして活用していることなども紹介した。

印刷は枚葉印刷機XL106シリーズ4台に集約。すべてにカットスターを装備して紙の無駄を削減

石狩工場では、営業・生産管理・組版のコンピュータと石狩工場の生産設備を繋ぎ、スマートファクトリーとしてインフラを整備している。MISのプリントサピエンスで受注を管理し、生産管理システムのプリネクトが下版データ作成の自動処理から印刷の自動化までのワークフローを実現。後工程はワークフローのコネックスを採用して製本のDX化を進めている。

印刷エリアでは現在、8色両面機が3台、4色両面機1台の計4台のXL106シリーズが稼働。1万8,000回転の印刷機4台に集約し、4台全てにカットスターを装備することで用紙のロス・無駄を削減するなど効率化を図っている。また品質検査装置「BISAI」、紙面検査装置「SENSAI」を採用し、印刷時の汚れ・カスレや色ズレ検査を実施し、品質管理を徹底させている。

なお同社では、AMスクリーン、FMスクリーンに加え、2024年に「マルチドットスクリーン」を導入。3つのスクリーン技術から最適な印刷精度を選択できるようにした。「マルチドットスクリーン」は、異なる大きさのクラスターを最適化した網点を使用する技術で、AMスクリーンとFMスクリーンの特徴を維持しつつ、生産性向上を実現する。調色システムも採用し、社内で対応することで品質管理・スピード対応を両立。印刷資材の在庫管理システムでコスト削減と在庫管理の効率化を行い、在庫ゼロを可能にした。

VMI印刷資材在庫管理システムで在庫ゼロを目指す
製本DX の第一歩を踏み出した製本エリアにはPUR・無線綴じ兼用機と中綴じ機を新規導入

製本においては、PUR・無線綴じ兼用機「アレグロ」と中綴じ機「プリメーラ」を導入。ワークフロー「コネックス」を組み合わせることで4つの製本ラインの進捗状況や稼働速度、製本トラブルの内容の見える化を実現した。書籍製造では欠かせないカバー・帯掛け機トライオートのラインも設備されている。

見学会では、人への負担を軽減し、安定した作業を実現しているPOLAR自動断裁システムや、ブック印刷16ページ折・32ページ折・観音折・蛇腹折なども可能な用紙折り加工ラインも披露。同社の強みでもある何千ページの書籍製本を実現する無線綴じ機による厚本製本の技術や、A3サイズからB6サイズまで対応可能な中綴じ機のラインなども紹介した。

POLAR 自動断裁システムで人への負担を軽減
折加工は16ページ折、32ページ折のほか、観音折、蛇腹折にも対応

なお石狩工場は、紙・人・環境に優しい工場としても操業。365日24時間体制で温度と湿度の管理を行い、床は人と紙に優しい木製の床材を使用している。材料から排出される用紙クズやパウダーなどは、全てダクトに集めて再利用することでゴミ低減にも取り組むクリーンな工場となっている。

「サスティナブルな出版事業への貢献」 株式会社アイワード 奥山 敏康氏

アイワードは、印刷を専門とする本体と、出版事業を担う子会社・共同文化社の2社体制で、「人の営みを表す本」「人を育てる本」「人の命を守る本」という長期的価値を持つ書籍分野を中心に事業を展開している。これらの書籍は数十年、あるいは数百年にわたり読み継がれるものであり、そのコンテンツ制作の上流から関わるビジネスモデルを構築してきた。

変化する出版環境の中においても、情報の意味を読み解き、将来を見通すメディアは支持を得ている。その意味でも、アイワードの仕事は、時間の経過に耐えるコンテンツを、印刷メディアと電子メディアの両方で残していくことにある。石狩工場では、文字情報処理や高精細カラー印刷、アートブック、社史、記念誌、自費出版など多岐にわたる分野で実績を積んできた。

一方、積極的な技術投資も大切にしてきた。創業以来、ドイツ・ハイデルベルグ社製の印刷機や、スイス・ミューラー・マルティニ社製の製本機などを導入。2000年代以降は、高精細7色印刷技術の確立、国際標準PSO認証の取得、AI搭載印刷システムの導入とともに、スマートファクトリー化を進めた。2024年にはAMスクリーンとFMスクリーンの長所を併せ持つマルチドットスクリーンを導入。高画質かつ高速、さらに自動運転対応という利点を生かし、作品ごとに最適な印刷方式の選択が可能となった。また技術力だけでなく人の力によって顧客の課題解決に貢献する姿勢を貫いてきた。

世界経済の先行きは不透明だが、不況の時こそ、時間的余裕を活かし、社内の結束を高め、経営方針に磨きをかける時期である。今後は更に顧客先との繋がりを大切に、顧客が求めることを実現する会社を目指す。

「枚葉印刷DXの貢献」 ハイデルベルグ・ジャパン株式会社 ヨルグ・バウアー氏

紙媒体の価値が再認識される中、アイワードは常に時代に先駆けて最新技術を導入し、印刷の品質と効率を追求してきた。その過程で採用してきたハイデルベルグの機器やソリューションの中でも注目できることの一つに、2022年のハイデルベルグのサブスクリプションの導入がある。

このサブスクリプションモデルは、単なる機械提供ではなく、ソフトウェア、資材、ワークフロー、サービス、そしてコンサルティングを含むトータルソリューションであり、印刷現場の働き方改革と生産性向上を目的としている。

導入にあたり、現場の作業プロセスを一から見直し、スタッフの動線や段取りの最適化まで踏み込んだ改善を実施した。これは、ハイデルベルグのスタッフとアイワードの現場が一体となったプロジェクトとして進められている。

設備を導入するだけでなく、設備を使いこなせるかどうかは人次第であり、そのためにもリーダーシップと教育が最も重要であると考える。どんな企業でも最新の装置やソフトウェアを購入することは出来る。しかし、最大限に活用できるかどうかはマネージャーやスタッフに掛かっている。

〝トランスフォーメーション〟という言葉がよく使われるが、実現するには技術の導入だけでなく、スマートに行うことがポイントになる。その意味でも、アイワードの素晴らしい点は、〝スマートトランスフォーメーション〟にあると思う。

「製本DXがもたらすもの」 ミューラー・マルティニジャパン株式会社 五反田 隆氏

製本業界では、製造現場におけるデジタル化や自動化の遅れが長年の課題となっている。特に日本の製本工場では「納期優先」の文化や、「機械が仕事を決める」体質が根強く、現場の改善提案が通りづらい構造があった。こうした中、アイワードは、現場主導による改革を進め、スマートファクトリーの実現に大きな一歩を踏み出した。

同社のDXは、「現場の働き方をどう変えるか」を起点としたプロジェクトである。現場スタッフが抱えていた「製本機に縛られて仕事をすることへの違和感」や「将来への不安」といった課題に対し、経営層と機械メーカーも巻き込んで、「誰もが安心して働ける環境づくり」を目指す体制が整えられた。

象徴的なのが、無線綴じ機と中綴じ機の両方で同一製品が製造可能なラインを整備したことである。これにより生産の柔軟性が向上し、特定の機械への依存が解消された。バーコードによる乱丁防止機能や自動調整など、新機種ならではの高度な自動化技術も取り入れている。

これまでメーカー主導で決められていた工場レイアウトも現場が主体となって「働きやすさ」「効率」「安全」を基準に見直しが行われた。その時の大きなポイントは、経営―生産現場―機械設備メーカーによる改革方針の絶対共有がある。その結果、①自ら考え、自ら実行の意識改革、②設備機械の最大限の活用と生産効率アップ、③製品品質の向上、準備時間(お金を生まない)の短縮、④機械設備の維持と予防保全時間の確保、突発停止の回避を実現した。これにより、アイワードは、製本DX第一段階を完了したといえる。

「アイワード石狩工場の海外展開と現場力」 株式会社アイワード 浦 有輝氏

アイワードは現在、石狩工場を拠点とした新たな海外戦略を本格的に始動させた。DXによる業務効率化の次のフェーズとして余剰リソースを創造の時間へ再配分し、「世界のアーティストがアートブックを創造できる場」として石狩を位置づけていく。

海外のアーティストや出版社が日本の印刷会社に依頼したいという潜在的ニーズは高く、「もう少し深く」「輝いた感じに」などにも応える感性に寄り添った対応が評価されている。

アーティストに石狩工場に訪問してもらう理由の一つとして、色の見え方は人によって異なる点が挙げられる。文化的背景や年齢、生物学的要素によって色の捉え方は個人ごとに微妙に異なる。そのため同じ場所・同じ光の下で議論することに大きな意味がある。それはオンラインでは再現できないリアルな対話といえる。

加えて、アイワードが選ばれる理由として人の感性に寄り添い、すり合わせができる現場力にある。日本が誇る9,000種類以上の紙種や、きめ細やかな加工技術と対話力などの姿勢が、世界のクリエイターから支持を集めている。

DXは人を削減するためではなく、人にしかできない仕事のための〝余白〟を生み出すためのもの。現在は効率化の先にある人の価値を高めるフェーズに入っており、世界中のクリエイターが石狩を訪れる未来をつくりたい。

  • 企業情報
  • 株式会社アイワード
    本社・工場:札幌市中央区北3条東5丁目5番地91
  • 石狩工場:石狩市新港西3丁目768番地4
  • https://iword.co.jp/

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