【小森コーポレーション】「印刷スマートファクトリー はじめの一歩」―KGCスマートファクトリーの取り組み―
株式会社小森コーポレーションは、「プリントテクノロジーで社会を支え感動をもたらす」をパーパスに事業を展開する印刷機械システムメーカーです。1923年の創業以来、品質と信頼を至上とするものづくりの原点にこだわり、100年培ったプリントテクノロジーで情報・経済・文化を支えてきました。オフセット事業や証券印刷事業をはじめ、デジタル印刷やプリンテッド・エレクトロニクス事業を通して、社会の課題を解決するソリューションを提供し、人々の期待を一歩超える価値「感動」を創造してまいります。
印刷会社を取り巻く環境はますます厳しくなっています。
資材・エネルギーコストの高騰、人材不足、多品種・小ロット・短納期化――これらの利益を圧迫する課題に対応するため、印刷業界では機械単体ではなく、工場全体の生産性向上を目指す「スマートファクトリー」の考え方が注目されています。
印刷機械システムメーカーのKOMORIは、プリントテクノロジーの「研究開発」「デモンストレーション」「教育」を担う小森グラフィックテクノロジーセンター(KGC)の第三次リニューアルを2024年に実施し、「印刷工場の仮想スマートファクトリー」(KGCスマートファクトリー)としての活動を開始しました。
本稿では、工場の生産性改善に取り組んでいる印刷会社に向けて、KGCスマートファクトリーの活動内容をご紹介します。
[KGCサイト]https://www.komorisolutions.com/kgc/ja/
「生産性」について
KGCスマートファクトリーの活動を始めるにあたり、KGCメンバー内で「生産性」の意味を改めて確認しました。人によって「生産性」という言葉の使い方が異なっていたからです。
ある人は生産スピードのことを生産性と言い、ある人は生産量のことを生産性と言っていました。そのため、皆が同じ方向を向くために「生産性」の意味を明確にしなければなりませんでした。
KGCではこれまで、印刷機械単体のパフォーマンスを測る指標としてのOEE(設備総合効率)やC能率の改善を主に追求してきました。
しかし、スマートファクトリーを実現するには、印刷機械だけでなく工場全体の生産性を測る指標が必要になります。そのためKOMORIは、「付加価値生産性」をKGCスマートファクトリーの管理指標(KPI)として定めました。
付加価値生産性は、企業の生産効率を示す指標であり、以下の式で算出されます。
付加価値生産性 = 付加価値 ÷ 労働投入量(人数や時間)
ここでいう付加価値は、売上高から外部購入費(原材料費や外注費など)を差し引いた、企業が生み出した価値を意味します。
付加価値は、企業の経済活動の基盤となり、社員の給料や設備費などの固定費を支払うための重要な指標となります。
付加価値生産性は、一人当たり・時間当たりでどれだけ稼げるかを示す、シンプルで分かりやすい指標ですが、この指標から導き出される生産性向上の方法は主に二つあります。
- 1.付加価値を増やすこと
- 2.労働投入量を最適化すること
どちらか、または両方のアプローチが必要になります。
業務効率化や技術革新によって、より少ない労働投入量で高い付加価値を生み出すことが重要という
ことになります。
KGC スマートファクトリー
KGC スマートファクトリーには、全工程をリアルタイムで監視する「中央管制室」が設置されています。複数
の大型モニターを使い、作業進捗状況を一目で把握できます。
中央管制室の機能は、KOMORI の製造実行システム(MES)「KP-Connect Pro」によって全て管
理されています。
「KP-Connect Pro」により、全工程のスケジューリングや進捗情報のリアルタイムでの収集が可能です。
工場管理者は「中央管制室」にいながら、工場全体の集中監視と作業指示を的確に行うことができるよ
うになります。
中央管制室による「見える化」に加え、KGCでは工場内印刷ワークフロー全体の「自動化」を推進しています。
KOMORIのスマートファクトリーコンセプトであるConnected Automation(コネクテッド・オートメーション)は、KP-Connect Proを中核ソフトウェアとして、スケジューリング、プリプレス、プレス(オフセット印刷・デジタル印刷)、ポストプレス、カラーマネジメント、品質検査、構内物流、に至る全印刷ワークフローを自動化連携する考え方です。
KP-Connect アライアンスプログラム
全工程にまたがるスマートファクトリーの構築には、KOMORIだけでなく、各工程のパートナー企業との協力が不可欠です。そのため、KOMORIは2016年に主要メーカーやベンダーとともに「KP-Connect アライアンスプログラム」を開始しました。
アライアンスプログラムのメンバー企業と連携し、開発を進めた「Connected Automation」は、多くの印刷会社で成果を生み出しています。
[KP-Connect活用事例サイト]https://www.komorisolutions.com/case/list_kp-connect.html
スマートファクトリー実証実験
KGCスマートファクトリーは、
“「働く人」と「自動化システム」が融合し、付加価値生産性を最大化する印刷工場”
を目指しています。
その実現に向け、一年以上の時間をかけスマートファクトリー実証実験を繰り返し行い、効果測定と改善活動を行っています。
この実証実験では、架空の印刷受注を複数ジョブ設定し、MISへの受注登録からデータ入稿、スケジューリング、プリプレス、プレス、ポストプレス、構内物流、出荷までの全印刷ワークフローを、最新のハードウェアとソフトウェアを駆使して実際に作業します。
その際、機械と人の動きを詳細に記録したうえで、生産性を測定し、工程ごとの課題を明らかにしています。
KGCスマートファクトリー実証実験において、KOMORIが特に重要視していることがあります。
それは生産性を阻害する課題の原因特定と解決策の検討を、KGCメンバーと開発メンバーが、「KOMORIワンチーム」として徹底的に議論し、印刷会社へのソリューション提供につなげることです。
そのため、実証実験のたびに振り返りミーティングを実施し、生産性向上に向けた討議を重ねています。
こうした成果を製品やノウハウの形で印刷会社にフィードバックし、印刷業界の発展に貢献できるよう、今後もKOMORIは「プリントテクノロジーで社会を支え感動をもたらす」活動を続けてまいります。
[スマートファクトリー実証実験の様子]
【会社情報】
株式会社小森コーポレーション
本社:東京都墨田区吾妻橋3-11-1
電話:
HP:https://www.komori.com/