日印産連 2025年度「グリーンプリンティング(GP)認定制度」表彰式を開催 「GP環境大賞」ゴールドプライズにあわしま堂、GPマーク普及大賞ゴールドプライズには株式会社北四国グラビア印刷と六三印刷株式会社が選ばれた
一般社団法人日本印刷産業連合会は10月15日、東京・神保町の出版クラブホールで、グリーンプリンティング(GP)認定制度の2025年度「GP環境大賞」「GPマーク普及大賞」「GP資機材環境大賞」の表彰式を開催した。GP環境大賞ゴールドプライズには株式会社あわしま堂、GPマーク普及大賞ゴールドプライズには株式会社北四国グラビア印刷と六三印刷株式会社が選ばれた。
当日は表彰式に続き、トークショーと懇親会も行われ、環境配慮への取り組みを共有する場となった。
印刷業界が環境配慮を牽引、GP認定制度19年目の広がり
開会にあたり、日本印刷産業連合会 副会長・添田秀樹氏が挨拶し、「GPマークの認知をさらに広め、サプライチェーン全体での環境負荷低減を進めたい」と語った。
GP認定制度は、印刷産業の環境負荷削減を目的に2006年に創設され、19年目を迎える。2025年8月末現在で全国441工場がGP認定を取得しており、環境省「グリーン購入の調達者の手引」などにも取り上げられるなど、社会的信頼を得た制度として定着している。
GPマークは、紙やインキなどの資材だけでなく、印刷工程全体が環境基準を満たしていることを示す総合環境ラベルであり、官公庁や企業のCSRレポート、パンフレットなど幅広い印刷物に利用されている。年間約1900社がGPマークを表示し、累計で12億部を超える印刷製品が製造されるなど、印刷業界における環境対応の象徴となっている。
印刷業界の環境配慮を推進 GP認定制度の意義と表彰概要
グリーンプリンティング(GP)認定制度の中核を担うのが「GP環境大賞」「GPマーク普及大賞」「GP資機材環境大賞」の3部門である。GP環境大賞は一般印刷部門とパッケージ印刷部門に分けて選出。過去3回の受賞を重ねた企業には、その功績を称えて「GP環境大賞ゴールドプライズ」が授与される。
GPマーク普及大賞はオフセット印刷、グラビア・シール・スクリーン印刷、製本・表面加工の3部門に分かれており、年度内で最も多くGPマーク表示製品を受注・製造した工場が選ばれる。こちらも、3回以上の受賞歴を持つ企業には「ゴールドプライズ」が贈られる。
GP資機材環境大賞は、GP資機材認定製品の新規登録数が多いメーカーが評価対象となり、本年度からは過去受賞メーカーも選考対象としている。
表彰式・トークショー・懇親会、印刷の未来を語る場に
表彰式では、放送作家・脚本家でGPPR大使の小山薫堂氏から「GP環境大賞」の授与、添田副会長から「GPマーク普及大賞」「GP資機材環境大賞」が授与された。
受賞者を代表して株式会社教育芸術社 代表取締役社長 市川かおり氏が登壇。同社は音楽教科書を出版しており、「GPマークを表示した教科書を通じて環境問題への意識を高めたい。未来を担う子供たちのために環境問題に取り組んでいきたい」と語った。
小山氏は閉会挨拶で、「大阪万博を通じて、人がリアルに集まることの重要性、そして異なる立場や価値観を持つ人が理解し合うことの大切さを学んだ」と述べ、さらに「グリーンプリンティングも、立場の違う多様な皆様が共に受賞し、同じ感動を共有する活動。印刷物は人の心をつなぎ、感動を生む媒体である」と語った。
【2025年度 GP認定制度 受賞一覧】
◆GP環境大賞
- GP環境大賞ゴールドプライズ:株式会社あわしま堂
(過去受賞企業:NTTタウンページ株式会社、大阪商工信用金庫、株式会社ジェイアール東日本企画、株式会社タカラトミー、東京都、東武鉄道株式会社)
<一般印刷の部>
- GP環境大賞:株式会社教育芸術社、日本航空株式会社
- GP環境準大賞:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、沖縄市役所、全国間税会総連合会、株式会社ホンダモビリティ中部
<パッケージ印刷の部>
- GP環境大賞:竹下製菓株式会社
- GP環境準大賞:チャコット株式会社
◆GPマーク普及大賞
- GPマーク普及大賞ゴールドプライズ:株式会社北四国グラビア印刷、六三印刷株式会社
<オフセット印刷部門>
- GPマーク普及大賞:宝印刷株式会社、丸正印刷株式会社
- GPマーク普及準大賞:株式会社KASAMA、大日本印刷株式会社、株式会社文伸
<グラビア・シール・スクリーン印刷部門>
- GPマーク普及大賞:株式会社巧芸社
- GPマーク普及準大賞:賀谷セロファン株式会社
<製本・表面加工部門>
- GPマーク普及準大賞:株式会社シュウエイ、株式会社多田紙工
◆GP資機材環境大賞
<資材部門>
- GP資機材環境大賞:日本シーマ株式会社
<機材部門>
- GP資機材環境大賞:株式会社リコー
トークショー「印刷と私」 テーマは“いい会社になる方法”
表彰式後は、トークショー「印刷と私」では、放送作家で脚本家の小山薫堂氏(GPPR大使)と、ノンフィクション作家の野地秩嘉氏が登壇した。30年来の親交をもつ二人が「いい会社になるための方法」をテーマに、伊藤忠商事やトヨタ自動車の事例をもとに語り合った。
トヨタが示す“イノベーション”の本質
トヨタ生産方式の話題では、株式会社デンソーウェーブが提供するQRコード誕生の背景が語られた。
「QRコードってあるよね。デンソーが作ったんだけど、もともとはトヨタの工場で使うためだった。トヨタ生産方式ってあるんです。お客さんが欲しいって言った車を4日以内に作れる。これはトヨタだけ。売れない在庫を抱えず、在庫ゼロを実現している」
その効率的な生産を支えたのが、暗くて汚れた現場でも正確に部品や看板を識別できるQRコードだったという。
「しかも特許を取らなかった。みんなが使えるようにした。だからこそ広まった。QRコードは発明ではなく“イノベーション”なんです」と語った。
トヨタの工場では、ネジがひとつ落ちているだけで会議が始まるという。落ちないようにどうするかを考え続ける文化こそがイノベーションを生む。
野地氏は「トヨタは数字を追っていない。世界一ではなく“まち一番”の販売店を目指している」と強調する。さらに「他人と比べない。数字ばかり追っていたら疲れちゃう。自分たちが思う“いい車”を作ることが目標なんです」と語り、数字よりも“理念”を重んじる姿勢を紹介した。
伊藤忠が示す「社員を幸せにする経営」
さらに伊藤忠商事の経営姿勢を例に挙げ、「伊藤忠の社長や役員は、社員が楽になることを常に考えている」と語った。具体的な取り組みとして、ホテルのように整えられたシャワー室や仮眠室、上質なタオルの用意、朝食の無料提供などを紹介した。さらに「残業をさせないよう努め、代わりに早朝出勤を認めている」とも述べ、社員の健康と生活のバランスを重視する方針を評価した。
「伸びる会社は長期で経営を考えている。1年でできることは限られている、だからこそ“長くやるためには社会のため”という考え方が大切なんです。それが社内の共通の志になり、誰も否定できない命題になる」と語った。
“いい会社”とは何か
トークの最後に野地氏は「いい会社になるには、まず労働環境を整えること」と述べ、「優秀な女性が働きたいと思える会社づくりが重要」と強調した。さらに「社会に対して良い影響を与える会社であることが、最終的に企業の価値を高める」と語り、トークを締めくくった。