印刷博物館 「現代日本のパッケージ2025」開催、3大コンクール受賞作を一堂に展示 館長の京極夏彦氏が“包む美学”を語る
TOPPANの印刷博物館(東京都文京区)のP&Pギャラリーでは、展覧会「現代日本のパッケージ2025」を10月4日から12月7日まで開催している。社会の変化とともに進化するパッケージデザインの最前線を紹介する内容で、国内主要3コンペの受賞作品を一堂に展示。10月3日には関係者を招いた内覧会とレセプションが開かれ、今年4月に館長に就任した作家・京極夏彦が挨拶した。
現代日本のパッケージ2025について
身近な印刷物の代表格ともいえるパッケージは、商品を包み保護するだけでなく、企業理念や消費者とのコミュニケーションを担うメディアとして発展を続けている。近年はSDGsの視点が重視され、社会課題の解決を意識した事例も増えている。
同展では、「第64回ジャパンパッケージングコンペティション」「日本パッケージデザイン大賞2025」「2025日本パッケージングコンテスト(第47回)」の受賞作を展示。食品・日用品から輸送用まで、多様な分野のパッケージが紹介されている。美しさや仕掛け、機能性、環境への配慮といった切り口を通じて、印刷と包装の融合がもたらす創造性を体感できる内容となっている。
第64回ジャパンパッケージングコンペティション
一般社団法人日本印刷産業連合会が主催する第64回ジャパンパッケージングコンペティションは市場に出回るコマーシャルパッケージの完成度を競う。経済産業大臣賞には、日清食品株式会社の「カップヌードル カプヌのエモい出パッケージ」と、味の素株式会社の「CookDo®(中華・韓国醤調味料)熟成豆板醤/コチュジャン/甜面醤/担々醤」が選ばれた。
日清食品の作品は、顧客の体験を文字化しブランド書体で構成するという独自のアプローチが評価された。消費者との感情的つながりをデザインに昇華させた点が高く評価されている。一方、味の素のCookDo®シリーズは、プラスチック使用量を約50%削減した新チューブパウチを採用。環境配慮とユーザビリティを両立させた設計に加え、親しみのあるキャラクター的なビジュアルが購買継続を促すデザインとして注目を集めた。
日本パッケージデザイン大賞2025
公益社団法人日本パッケージデザイン協会(JPDA)が主催する日本パッケージデザイン大賞は、デザイン性と創造性に焦点を当て選出される。今回大賞を受賞したのは、株式会社ポーラによる「ポーラ コスモロジー」。
「どこでも誰とでも繋がりを感じられる、言語を超えたボーダーレスなコミュニケーション」というテーマのもと、容器に付属するしぼりツールが動くたびに眉や口のような表情が生まれる仕掛けを持ち、使う人の気持ちを和ませ、心まで明るく豊かにするようなデザインとなっている。
2025日本パッケージングコンテスト(第47回)
公益社団法人日本包装技術協会が主催する日本パッケージングコンテストは、素材・設計・技術・デザインなど、包装に関わるすべての観点から優秀作品を選定する。
経済産業大臣賞には資生堂「イプサ ME」が輝いた。CO2削減に加え、「LiquiForm」技術を採用し、ボトル製造と中味充填を一体化。環境貢献を“実感できる”設計とし、サステナビリティに感性価値を融合させた点が評価された。
京極夏彦氏が語る“包む”美学
レセプションに先立ち、4月に第4代館長に就任した作家・京極夏彦氏が印刷博物館を代表し登壇した。
パッケージは現代に馴染みすぎて評価されにくい存在であるとし、その本質を梱包芸術に重ねた。対象を覆い隠すことでかえって本質を際立たせる行為は、商業デザインの在り方にも通じるという。
また、SDGsの登場によって複合的な視点から作品を評価する時代に入ったと指摘。展示作品について「評価の対象になりづらいジャンルだが、奥深さ、未来に繋ぐ努力をしているところを1人でも多く知って貰えたらいいと思う。印刷博物館でこの展示を行うことには大きな意味がある」と語り、展覧会の意義を強調した。
続いて、一般社団法人日本印刷産業連合会理事の高島淳一氏が登壇。高島氏は「日本印刷産業連合会賞」「日本パッケージデザイン大賞」「印刷文化典拠賞」という3つの賞について紹介し、「一度に3つの受賞作を見られる貴重な機会」と述べた。さらに「この展示を通じて素敵なパッケージがさらに増え、新たな発見が生まれることを願う」と挨拶を結んだ。続いて日本パッケージデザイン協会(JPDA)理事である内田喜基氏が乾杯の発声を行い、関係者によるレセプションが幕を開けた。
日本パッケージデザイン大賞2025 受賞者トークショー
「日本パッケージデザイン大賞2025」の大賞および金賞受賞者によるトークショーが10月19日、印刷博物館地下1階の研修室で開かれる。
登壇者は重田くるみ氏(株式会社ポーラ)、加藤亮介氏・加藤千洋氏(株式会社KAAKA)、天畠カルナ氏(合同会社KISSDESIGN)。モデレーターには内田喜基氏(株式会社cosmos)と石原由紀子氏(トーイン株式会社)が登壇する。
デザインの背景や制作現場での発想、社会的価値と創造性をどう結びつけるかといったテーマを中心に、最新のパッケージデザインの潮流を探る。
- 【開催概要】
・日時:2025年10月19日(日)15:00~16:40
・会場:印刷博物館 研修室(地下1階)
・定員:60名(先着順・事前申込制)
・参加費:無料(展示室入場は別途料金) - ▶申し込みはこちら