田中紙工 戸田に新本社工場を開設。 機能を集約して生産性向上、断裁機も新設、作業ロスも削減

 印刷物の加工およびトランプ・カルタ・トレーディングカードの加工等を行う㈱田中紙工は、埼玉県戸田市に本社工場を移転。改修工事など全て完了したことを機に、7月1日、メディア向けの披露会を開催した。この度の本社工場の移転にともない、断裁機などの設備を一部刷新したほか、生産性を向上させる導線づくり、セキュリティカメラの増設などを行った。新工場の移転により社内コミュニケーションも活性化され、生産に良い影響を与えているという。

事業拡大に向けて新工場開設へ

 工場披露会では、同社代表取締役社長の田中眞文氏、専務取締役の田中大貴氏、常務取締役の野畑健一氏、営業部部長の佐藤走矢氏が同席し、本社工場移転について解説した。

冒頭、挨拶した田中社長は、板橋区蓮根で断裁機1台から創業して以降、事業拡大と共に必要に迫られて工場を移転してきた経緯を紹介した。今回の移転の背景には、板橋区の前本社が住居地域になり、新しく工場を建て替えることができないこと、老朽化が進んでいたことを挙げた。隣接していた新館も昭和30年代後半の建物をリフォームしたもので、築60年が経過。、耐震性への懸念もあり、新しい場所を探していた。
そうした中、戸田工場に隣接した元紙工会社が工場を売りたいという情報を得て、東京の本社も含め戸田に集約することを決め、一昨年7月に購入を決断。12月に正式に契約し、今年3月末に引っ越しを行った。

野畑常務、田中社長、田中専務、佐藤営業部長
田中紙工新工場

田中社長は、「田中紙工の歴史の中で一番大きな買い物であり、一番大きな決断だと思う。新生・田中紙工として紹介したい」と披露会の趣旨を述べた。なお、今回の披露会は、同社が秘匿性の高い商品も扱っていることから、メディアに限定しての披露会となった。

新本社開設で①工場スペックの改善②生産性の向上③セキュリティ強化を実現

田中専務からは、新本社工場開設の効果について発表があった。新本社移転の目的は、老朽化と工場が再建築できない物件であるという2つの点にある。この度の移転により得られた効果としては、①工場スペックの改善、②生産性の向上、③セキュリティ強化の3つを挙げている。

工場スペックの改善としては、旧本社工場と比較して延べ床面積が25%拡大したことになる。新本社は2001年に建築された建物で、床面積が1350.74㎡(408坪)。加えて、リフォームにより新しいフロアも増床しているため、実際には延べ床面積が1.8倍の広さに拡大した。その結果、課題だった刷り本を置く場所などが確保できるようになり、仕事がしやすい空間が生まれている。

生産性の向上では、戸田工場の近くになったこと、機械配置を見直したことで移動のロスが削減。以前は、1階に断裁機、3階に丁合機があったため、業務に応じて断裁から丁合へエレベーターを使った縦の移動が必要だったが、同じ1階に丁合機と断裁機を設置。これによりフォークリフトでの行き来がしやすくなり、移動に掛かるタイムロスが改善。1人あたり、1日の生産性が30分以上向上している。

断裁の現場

なお、新本社工場開設にあたり、設備も一部を刷新した。断裁機は、勝田製作所の断裁機JMCー7(HOWー137)1台を新設したことで、全13台の断裁機が全て勝田製作所製となった。さらに工藤鉄工所製の紙揃え機クドエースMJー14 1000を2台入れ替え新設した。

 また同社では秘匿性の高い案件を扱っているため、高いセキュリティを維持することは大きなポイントだった。以前は、カメラは建物の外部にのみ設置していたが、この度、監視カメラを15台に増設し、現場にもカメラを新たに設置した結果、侵入者や内部監視にも繋がり、作業ミスの確認などでも期待できるとしている。
 加えて災害への対応も強化した。田中紙工の戸田工場は、2019年の台風で45㎝浸水した経験がある。その時、断裁機が全て使えなくなるなどの被害を受けた。この時の反省を活かし、床を70㎝嵩上げし、2019年レベルの水害には対応できるよう改善した。

働く社員の意見も反映した現場づくり

本社工場の移転を行うにあたり、3つの点に留意したという。一つは、お客様への業務影響を最小限抑えるべく、約1年前から移転を伝え、生産調整など含めて準備を進めた。移転中も戸田工場は稼働し、本社に勤務していた従業員を戸田工場に集約。それにより生産数を維持しながら移転を実行した。

また作業導線については生産数に影響してくるため、従業員と議論しながら決めていった。結果、生産性を上げられる工場が実現した。従業員の希望も踏まえた作業環境づくりにも取り組んだ。仕事を気持ちよく行えるような事務所設計などを進めるとともに設備増強などの拡張も踏まえた機械配置を行った。

新本社工場の開設で、以前よりも従業員間での情報共有やコミュニケーションが向上しているという。田中専務は、「コミュニケーションの向上は、生産効率の向上に繋がっています。新たな交流が進み、それが絆を深めることになり、全体の生産効率が上がっているのだと思います」と効果を語っている。

なお、現在の同社の生産体勢は、勝田製作所の断裁機が13台、丁合機は東京出版機械の40鞍・28鞍・22鞍の3台と、ホリゾンの丁合機が3台設置されている。またアイセルのブッシュ抜き機12台のほか、角丸、穴あけ、折り加工などにも対応する。

食堂
オンデマンドトランプ作りで活躍するオンデマンド印刷

オンデマンド印刷機を活用した小部数のトランプ、トレーディングカード、タロットカードなどの製造も行う。小部数のカード製造は同社が運営している「オンデマンドトランプ.com」「オンデマンドカルタ.com」からオンライン上で簡単に発注できる。個人ニーズや企業等からの小部数受注にも対応するほか、発送や商品管理などのニーズにも応える。

なお同社は、2025年1月の決算で過去最高の売上を達成。中でもオンデマンド印刷事業の売上は年率30%で成長している。一般的にトレーディングカード市場は2030年には2倍以上の市場に成長するとの予測もあり、その波に乗っていきたいと語っている。新たな取組みとして、外箱の内製化も予定。今後も顧客の要望に応えられるように事業を拡大する。

【田中紙工 本社工場】
所在地:埼玉県戸田市笹目南町27―4/℡048―483―4852
https://www.tanakashikou.co.jp/

関連記事

最新記事