王子ホールディングス 「Domopalooza Japan 2025」でDX推進の取り組みを紹介、1万2000人が活用するデータ基盤を構築 「Excel地獄」から脱却し全社DXを推進

王子ホールディングス株式会社執行役員で王子ビジネスセンター株式会社代表取締役社長の藤川 健志 氏は10月15日、横浜BUNTAIで開催された「Domopalooza Japan 2025」で講演した。同社のデータ活用とDX推進の取り組みを紹介した。
同イベントはドーモ株式会社が主催するデータとAIを活用した最新テクノロジーを体験しながら、企業が“何を実現したいか”という目的から発想する次世代のビジネス変革を探るイベント。藤川氏が登壇した講演では「1万2000人が使うデータ基盤、王子ホールディングスが切り開くデータ経営」をテーマに語った。国内外で約4万人を抱える巨大グループが、いかにしてデータドリブン経営を実現していったかを紹介する。

講演の様子
多くの来場者が集まる講演

DX後発からの挑戦、課題は「Excel地獄」

藤川氏はまず、王子ホールディングスの歩みを紹介した。同社は1873年創業、渋沢栄一が設立に関わった日本最古級の株式会社として知られる。現在は連結で約3万9000人を擁し、売上高は約1兆8000億円。印刷・情報メディア事業に加え、ボール紙や資源リサイクル、バイオマス関連など、多角的な事業を展開している。国内外に約63万haの森林資源を持ち、環境と経済の両立を掲げる企業グループである。

本格的なDX推進部門が立ち上がったのは2024年2月で比較的後発だったという。CEOから「情報資産としてのデータを活かしきれていない」という課題が提示されたことを契機に、全社的なデータ経営を目指す取り組みが始まった。
当時の社内状況について藤川氏は、「優秀な社員ほどExcel資料の作成に多くの時間を費やしていた」と語る。社内のあらゆる部署でExcelファイルが乱立し、“Excel地獄”とも呼べる状態が続いていたという。

経営会議を2週間でデジタル化 トップダウンで推進

王子ホールディングスが選択したのは、BIツール「Domo」の全社導入だった。藤川氏によると、2024年初頭、CEOの強いリーダーシップのもと「まずは経営会議をDomoに切り替える」との決定が下された。
藤川氏は「4月の役員会で全員の前で『2週間後からすべてDomoで会議を行う』と宣言した」と振り返る。社長や会長を含む経営陣が率先してデータドリブン経営を実践したことが、社内全体の意識転換につながった。

背景には、経営層の多くが海外経験を持ち、ダッシュボードによる経営管理が当たり前という認識を共有していたこともある。国内の“Excel職人文化”に対し、「グローバル水準に引き上げる」という明確な危機感が変革を後押しした。

「早く広く」広げるための仕掛けと全社浸透

同社のDX推進は、従来の“現場から積み上げる型”ではなく、トップダウンで一気に広げる戦略を採った。
「CEOからは“早く広くやりなさい”と明確な命令がありました」と藤川氏。まず経営会議をBI化し、そこから幹部層・部門会議と下層へと波及させる。トップ層がデータを活用する姿を見せることで、「やらざるを得ない」仕組みを作り、スピード感を優先したという。
また、CEOメッセージ動画を全社に配信し、「全員で取り組む」姿勢を明確化。併せて社内トレーニング「Domoアカデミー」を設置し、1万人以上の社員が受講。わずか数か月で1万2000人のDomoユーザーが誕生するという急速な浸透を果たした。

若手を中心に新しい文化が定着

データ基盤の導入から数か月、現場では着実な変化が起きつつある。Excelのバケツリレーは減少し、若手社員を中心に自発的な分析活動が進む。
「作られたダッシュボードの中には、経営会議資料を凌駕するレベルのものもあります」と藤川氏は語る。
データを見る習慣が根づき、トレンドを分析し課題を見つける方向へと意識が変化。数字を「作る」から「考える」へ。全社にデータドリブンな文化が芽生え始めている。

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