TOPPAN 慶應義塾大と量子カーネル活用で遠距離・非接触の高精度設備異常検知を実現 スマートファクトリー化の推進に寄与

TOPPANホールディングスは慶應義塾大学と共同で、量子カーネルを応用した異常検知システムを開発した。従来は困難だった3メートルの距離からでも92%以上の精度を維持し、非接触で複数設備の異常を同時に検知・分類することができる。この成果は量子コンピューティング国際会議「QCE25」のテクニカルペーパーQMLトラックに採択された。

従来のICTベースのスマートファクトリー(左)から量子技術を活用した未来のスマートファクトリー(右)への進化を示す概念図

高精度・非接触・同時分類を可能に

開発したシステムは指向性マイクロフォンで設備音を非接触収集し、ARモデルで特徴量を抽出、量子カーネル空間にマッピングすることで異常を判定する。実験では0~3メートルの全距離で92%以上の精度を維持し、従来のRBFカーネルが2メートル地点で38%に低下したのと比較して大幅な性能差を示した。さらに、特徴空間の可視化によって異常タイプを直感的に分類可能であり、保守担当者が迅速に故障箇所を特定できる可能性を示した。

背景と今後の展開

従来の異常検知は多数の接触センサー設置が必要で、コストや配線の課題を抱えていた。今回の成果は非接触で複数の異常を同時検知できる技術基盤として、スマートファクトリー化の推進に大きく寄与すると期待される。今後は実工場での実証や異常分類の拡張、さらに商用量子コンピューターへの実装を目指す。医療や金融分野への応用も視野に入れ、次世代製造システムの標準技術確立に向けた研究が進められる。

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