第58回造本装幀コンクール 授賞式・記念パーティーを挙行、「本を読まない人」へ向けた作品が多く集まる

(一社)日本書籍出版協会および(一社)日本印刷産業連合会(日印産連)は9月29日、東京都千代田区の出版クラブホールで「第58回造本装幀コンクール」の授賞式・記念パーティーを執り行い、入賞した22作品を表彰した。

造本装幀コンクールは、造本装幀の従事者(出版、印刷、製本、装幀、デザイン)の成果を総合的に評価する出版業界で唯一の賞。今回の応募作品は総数162者308点。作品の傾向としては読書経験の少ない生活者に紙の本の魅力を訴求する工夫が施されたものや、コミックス・ポップカルチャー分野のものが多く見られた。

受賞者集合写真

審査委員会は厳正な審査の結果、22作品の入賞を決定。文部科学大臣賞に「湯浅啓写真集 『Notochrome』」(龜鳴屋刊)、経済産業大臣賞に「イヴ・ネッツハマー  ささめく葉は空気の言問い」(宇都宮美術館/下野新聞社刊)、東京都知事賞に「生の実感とリアリティをめぐる四つの探求 ──『人文・社会科学』と『アート』の交差から立ち現れる景色」(《一社》デサイロ刊)が選ばれた。

全応募作品は9月24日から10月30日まで、出版クラブビル3階のクラブライブラリーに無料公開展示される予定。また、2026年2月にドイツ・ライプツィヒで開催される「世界で最も美しい本コンクール」に出展された後、2026年10月にドイツで開催されるフランクフルト・ブックフェアで展示される。

日本書籍出版協会の小野寺優理事長は「今年は読書経験の少ない生活者に本を手に取ってもらえるような工夫が施された作品が多かった。この傾向は、作り手が持つ、紙の書籍の良さを伝えたいという想いの発露であると思う。デジタルの時代にあって、作り手の想いを感じる体験の価値が高まっているのかもしれない」と作品傾向を述べた。

関連記事

最新記事