【不二オフセット】「RevoriaPress PC1120S」で紙製帽子を製作 抜き加工された紙もエア給紙で紙詰まり防止

オフセット輪転機と枚葉機を組み合わせて生産する独自の仕組み、「マルチスペックオフ輪」でパンフレット・リーフレット・折込チラシなど印刷物全般を手掛ける不二オフセット株式会社は富士フイルムのプロダクションカラープリンター「RevoriaPress PC1120S」を導入し、紙で作るオリジナルの帽子やうちわなどさまざまな紙製作を展開。また、近隣地域とのコラボレーションで地元キャラクターの商品を手掛けるなど町おこしにも貢献している。PC1120S導入の背景やオリジナル紙製品誕生の経緯など、取締役生産管理部部長システム開発部の横山敏之氏とシステム開発部兼制作部次長石原啓一郎氏に伺った。

株式会社不二オフセットは昭和50年5月に創立し、東京都西多摩郡瑞穂町に本社を構えている。オフセット印刷を強みとし、3台の機械を組み合わせるマルチスペックシステム「マルチスペックオフ輪」で効率的な大量生産を実現しているのが特徴。「マルチスペックオフ輪」は設置された3台のオフセット輪転機を個別に稼動させ、上下に重ねた2台を連動させる「デュープレックス」、さらに並列の1台を加え連動させる「トリプレックス」など、独自の印刷工程を確立したもの。これにより、従来まで別々に印刷した後に合体させていた行程が不要となり、多数のページ物の印刷はもちろん、「ミシン目入装置」や「シート出力」機能を活かし様々な需要に対し柔軟に対応することができる。

加えてオンデマンド印刷機は富士フイルムの「RevoriaPress PC1120S」(以下、PC1120S)、CANONの「imagePRESSV900」と「imagePRESS C910」の3台を導入し、少部数でもグラフィックを正確に再現する高い出力品質とスピーディな対応を実現している。

石原啓一郎氏(左)、横山敏之氏(右)

現在同社では、メイン事業の他に組み立てが簡単なオリジナルの紙製サンバイザーを開発・製作している。

製作に至ったきっかけはコロナ禍。外出が難しいなか、石原氏は子供のためにネット通販で届いた段ボールを切って組み合わせることで制帽風の帽子を製作した。自宅ではその帽子を使って子どもが自身で遊びを考え遊んでいた。その姿を見て石原氏は更にクオリティを上げたら、製品化できないかという考えに至る。石原氏は横山氏に試作を作った上で打診したところ、そのユニークさに惹かれ賛同した。横山氏は「明らかにクオリティが高くて、試作で持ってきたのがほぼ製品と同等のクオリティでした。コロナ禍で時間に余裕があったので、すぐ行動に移しました」と語る。

なりきりシリーズのサンバイザーとうちわ

横山氏と石原氏はさっそく稟議を通し、金型を製作。「なりきりシリーズ」の第1弾となる制帽風帽子を完成させた。この帽子製作で活躍しているのがPC1120Sである。

「RevoriaPress PC1120S」でより高度なデザイン性 同社は紙製帽子の製作が始まったことがきっかけでPC1120Sの導入を決断した。プリント用紙に抜き加工を施しているため、厚紙が安定して通り、紙詰まりの少ないエア給紙が搭載されたPC1120Sが製作に必要であると考えた。プライスPOPの製作では特殊トナーを使用することにより、付加価値の向上を図れることも魅力のひとつだという。PC1120SはCMYKトナーに加え、最大2色の特殊トナーを搭載することが可能となっている。特殊トナーは、クリア、ゴールド、シルバー、ホワイト、ピンク、カスタムレッドがある。中でも同社はシルバー、カスタムレッド、ホワイト、クリアを使ってより効果的なPOPの提案に挑戦している。

RevoriaPress PC1120S

同社はプライスPOPを多いときで20万枚から40万枚製作している。PC1120Sが出力品質と生産性が高いレベルで両立されているため繁忙期には他のオンデマンド印刷機2台だけでは印刷しきれない量を補う役目を果している。また、不具合があった場合、富士フイルムの担当者が相談に乗り、パーツをカスタムするなど寄り添った対応に心強さを感じている、と横山氏は語っている。

横山氏は「なりきりシリーズ」第1弾について、「部品点数がすごく多く、初めて組み立てるのに、40分から1時間かかってしまいます」と課題を挙げ、それを解決する製品として「なりきりシリーズ」第2弾となるキャップを紹介した。組み立てが簡単で、野球場などで活躍しそうな同製品はデザイン性も高く子どもから大人まで楽しめるユニークな製品となった。しかし、また新たに生まれた課題はパーツが大きくPODで量産することが困難であること。そこから再び試行錯誤した結果、製作されたのが「なりきりシリーズ」第3弾のサンバイザーである。

サンバイザーの大きなメリットは組み立てが簡単なだけではなく、PODだけあれば製品になる。印刷後はシートから本体を抜きとるだけで完成する。抜き加工が施されたシートはそのままプリンターに通すことが可能となっている。プリンターの中でばらけてしまうと、機械に損傷を与える可能性があるため、切れ目と接合部分のバランスを何度も修正しこの形を完成させた。サンバイザーは印刷前の抜き加工されたシートで実用新案・特許を取得しており、昨年で3万枚製作した。

なりきりシリーズのサンバイザーとうちわ(組み立て後)

さらに同社は地元の産業祭に向け、サンバイザーに瑞穂町のご当地キャラクター「みずほまる」をプリントし、300個配布した。こうしたサンバイザー製作において、過去には急遽「100枚足りなくなったので刷って欲しい」という依頼があったが、即座に対応できたのはPC1120Sの高速印刷によるものだと語る。また抜き加工により出来る溝にもトナーが密着し、鮮やかな印刷ができる点も高く評価している点である。

同社では帽子だけでなく、穴の空いていない紙製うちわも製作した。同製品はサンバイザーに組み合わせることでデザイン性を大きく広げる。

印刷会社向けのPOD商材として、100%紙製の「POD卓上カレンダーケース」も製作した。会社名、企業情報は背面に印刷する仕様となっている。表に会社名が印刷されていると会社で使う以外の用途が難しい、という女性からの声により背面パーツに印刷できる仕様が誕生した。

組み立て方法は簡単で、本体の背面にパーツを差し込むだけ。オフィスでも家庭でも活躍する卓上カレンダーになる。「小ロット印刷の場合、後工程でトムソン抜きを行うよりも、予め型抜きされた用紙にPOD印刷を施す方が、コスト削減に繋がります。このカレンダーのパーツも、印刷した後に断裁機で切断するだけで出

来上がります。多くの印刷会社はPOD印刷機と断裁機を両方持っていますので、その両方があれば完結できる仕組みを目指しました。同業他社でもこの用紙をご利用いただければ、同等の品質の製品を製造・販売することができます」と石原氏は語り、ユーザーのニーズと企業側のニーズどちらにも応えた製品を提供して

いる。なお、不二オフセットでは帽子やうちわなどの印刷依頼を受け付けているが、印刷会社やデザイナー、クリエイターが白紙のまま購入し、自由に印刷することも出来る。

POD卓上カレンダーケース

横山氏は今後の展望として名入れ済み卓上カレンダーの個人・企業向け販売に加え、新たに印刷会社向け名入れ済みカレンダーケースに加え無地カレンダーケースを提供し、各社で印刷できる仕様の商品展開も視野に入れている。また「紙でしか表現できないものを製作し、『紙って最高だよね』と思えるものをこれからも作っていきたい」と語った。「なりきりシリーズ」第4弾としてキャスケットの製作もされており、今後も様々なアイディア製品が期待できる。

 【会社情報】
 不二オフセット株式会社
 本社:東京都西多摩郡瑞穂町箱根ケ崎東松原5-7
 電話:042-556-1105(代表)
 HP:https://fuji-offset.jp/

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