山陽製紙 20年で約1,200万個の梅の種を炭にして再資源化、脱臭・調湿効果を持つ「Sumideco Paper」 地域資源を活かした混抄紙で新たな紙文化を創出
山陽製紙株式会社は、和歌山県産の梅の種を炭化して再生紙に混ぜ込んだアップサイクルペーパー「Sumideco Paper(スミデコペーパー)」の提供を続けている。産業廃棄物の再資源化という社会課題に応えながら、炭の持つ脱臭・調湿といった機能性も備えるユニークな製品で、20年以上にわたり活用が進められてきた。
Sumideco Paperは、地域の梅加工業者で大量に排出される梅の種を原料とし、それらを炭化・粉末化した上で、独自の製法により紙に混抄。梅の種というこれまで再利用が難しかった素材を活かし、紙として新たな用途を見出した好例といえる。
海洋投棄の禁止が契機に、梅の種の再利用に挑む
和歌山県は日本一の梅の産地として知られ、加工品が生産されている。その過程で大量の梅の種が排出されてきたが、かつては産業廃棄物として海洋投棄されていた。
しかし、ロンドン条約により海洋投棄が原則禁止となったことを受け、梅の種の処理方法が大きな課題となった。こうした中、隣接する大阪・泉南市の山陽製紙は、炭化処理による再利用に着目。梅の種をパウダー状にし、紙に混ぜ込むことで、脱臭・調湿など炭の持つ機能性をそのまま活かした新素材としてSumideco Paperを誕生させた。
機能性と風合いを兼ね備えた用途展開
Sumideco Paperは、炭由来の性能により、靴の脱臭シートや畳の裏材、ブックカバーなど、紙でありながら機能性を必要とする用途で活用されてきた。
見た目にも独特の質感を持ち、紙製品でありながら「機能を持った素材」としての個性を発揮している。20年間で再資源化された梅の種の総量は約48トン。個数に換算すると約1,200万個(1個あたり約4gで計算)にのぼる。
素材としての再利用だけでなく、梅の産地に根差したストーリー性も高く評価され、企業や自治体からの関心も高まっている。
混抄紙による“紙の可能性”を広げる
山陽製紙では、Sumideco Paperに代表されるような「混抄紙」を顧客ごとの要望に応じてオリジナルで制作する取り組みも展開している。「ある産業廃棄物を再資源化したい」「地域の特産素材を紙として残したい」などのニーズに対し、企業や団体とともに紙づくりを通じたアップサイクルの実現を目指している。
“循環する紙”としての提案
紙は、情報伝達や包装といった用途で消費される「使い捨て資材」の側面が強い。しかし、Sumideco Paperのように廃棄物の価値を再定義し、機能性や物語性を持たせた製品は、紙という素材に新しい意味を加えている。
サステナビリティへの関心が高まる中、素材の選定や開発段階から環境配慮が求められている。そうした背景において、地域と連携した再資源化のモデルとして、山陽製紙の取り組みは他産地や異業種にも広がりを見せる可能性がある。