緑陽社 お客様の宝物を大切に作り届ける “最高の品質と最良の誠実”で

同人誌やキャラクターグッズの制作を手がける株式会社緑陽社は、確かな技術と豊富な経験を武器に、幅広い商品を展開している。書籍の印刷・製本に加え、アクリルグッズやノベルティ製品などにも注力し、高品質な製品を提供している。同社のグッズ事業の歩みと今後の展望について、常務執行役員営業本部本部長兼営業支援部部長の鈴木祥恭氏に話を伺った。

緑陽社がグッズ制作に取り組み始めたのは約30年前にさかのぼる。ただし当時は製造を協力会社に依頼することが中心で、主力はあくまで同人誌印刷にあった。同人誌市場においては個人との取引が大半を占め、いわゆるBtoCを軸とした事業展開で成長を続けてきた。

転機となったのは2015年頃。アクリルキーホルダーの内製化を開始し、その後グッズ事業が大きく拡大。当初は売上の15%程度に過ぎなかったが、現在では全体の6割を占めるまでに成長している。残りの4割を同人誌が支えており、現在は2本柱による安定的な収益構造を築いている。

グッズ事業において、2018年から19年にかけ法人からの依頼が増加したことも成長を後押しした。出版、ゲーム、アニメ業界などからの需要が拡大し、BtoBの領域へと事業が広がっていった。

鈴木本部長

現在のグッズ市場ではキャラクターやアイドルの全身をデザインした大型アクリルスタンド、いわゆる“アクスタ”がブームとなっている。さらにホログラムやオーロラ加工などを加えることでアクスタの付加価値を高める手法が注目を集めている。緑陽社は、こうしたニーズに対応すべく、株式会社ミマキエンジニアリングのフラットベッドUV-LEDインクジェットプリンタ「UJF-7151 plusII」を導入している。この機種は8ヘッド搭載による高い生産性と高画質、さらに新機能「カラーグロス」による独自の光沢表現と、1,800dpiの高精細印刷を実現するもので、同社の強力な武器となっている。

また、グッズ定番の缶バッジも不動の人気を誇る。特に57㎜サイズが主流となっている。中高生でも購入しやすい手頃な価格であることに加え、大人のファンは大量に集めて「痛バッグ」を作る目的で買い求める。痛バッグとは、推しキャラクターやアイドルの缶バッジやキーホルダーを大量に装飾したバッグのことであり、ファン活動を象徴する文化の一つとなっている。鈴木氏は「子どもから大人まで気軽に手に取れることが、缶バッジの根強い人気の理由だ」と語る。

幅広い人気商品
アクリルスタンド

緑陽社の製品づくりが評価されている根幹には、経営理念「最高の品質と最良の誠実で社会に貢献する」がある。鈴木氏は「社員一人ひとりにこの理念が根付いている」と語る。

社員の多くは同人文化やオタク文化に精通し、作家やファンと同じ目線を持っている。同人誌制作を長年手がけてきたからこそ、作家の“晴れ舞台”であるコミックマーケットで失望させないという思いが強い。

その熱意が品質へのこだわりとなり、法人向けグッズ制作においても一貫して反映されている。単なる指示通りの制作にとどまらず、「こうしたほうがより良い」と提案する姿勢も同社の特色である。顧客とともに高品質な製品を作り上げるという姿勢が支持を集めている。

オタク文化において、グッズ購入は「お布施」とも呼ばれることがある。単に欲しいから買うのではなく、作品やアイドルを応援する気持ちを込めて購入することを指す。鈴木氏は「初詣に行ってお守りを授かる時に傷や汚れがあれば嫌ですよね。私たちは皆さんにとってのお守り、あるいは宝物を作っているのだから、汚れや傷のある商品は出したくないんです」とものづくりへの真摯な姿勢を語っている。

同社の強みは、品質に厳しい大手企業との取引で培われたノウハウにもある。

データ調整から製造現場との連携、徹底した品質管理に至るまで、細部にまでこだわった仕組みを整えている。特にキャラクターグッズでは、色調補正やカットライン、台座の嵌合部分などに細心の注意を払う。制作から印刷、加工、組み立て、全国発送まで自社工場で一貫生産することで、品質と納期の双方で高い信頼を得ている。

さらに独自技術の開発にも積極的に取り組んでいる。実用新案登録済みのホログラムアクリルキーホルダーやオーロラフィルム加工の製品、アクリルの貼り合わせによる立体的表現など、新たな可能性を切り開いてきた。こうした挑戦が、同社の存在感を市場で一層高めている。

ニーズに応える製品

コムネット株式会社が提供するレーザーカッター「GCC LaserProシリーズ Piolas 400(パイオレス)」を導入し、新たな生産体制の強化にも取り組んでいる。

同機は従来保有機と比べ、約1.6倍のスピードでカット加工が可能となり、生産効率の向上に直結している。断面の仕上がりも非常に美しく、厚さ10mmのアクリルにも対応。これにより、従来のアクリルスタンドだけでなく、アクリルブロックの提案にも力を入れている。加工品質とスピードを両立させたPiolas 400の導入は、グッズ製造の可能性をさらに広げる大きな一歩となっている。

Piolas 400(https://www.comnet-network.co.jp/から出典)

現在、同社は同人誌印刷中心の事業構造から、時代に合わせてグッズ制作へ軸足を移している。そして次の目標としてはライセンスビジネスの強化を挙げており、豊富なラインナップと高い技術力を背景に、さらなる成長を視野に入れている。

同人誌から始まった緑陽社は、時代の変化を捉えてグッズ市場での存在感を拡大し続けている。その根底にあるのは「最高の品質と最良の誠実」という理念であり、作り手とファンの心を結ぶ製品づくりが市場拡大へと繋がっている。なお同社ではBtoCだけでなくBtoBへも対応する。

鈴木氏は「600種以上のグッズを揃えておりますので、製造にお困りの際はぜひお声がけください。工場見学も受け付けていますので、ぜひお越しください」と語った。

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