FFGS 新無処理版『SUPERIA ZD-Ⅲ』発表、刷り出し・耐刷・耐キズ・視認性を強化

SUPERIA ZD-Ⅲに投入された4つの新技術
SUPERIA ZD-Ⅲに投入された4つの新技術(クリックすると図が拡大します)

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(FFGS)は新無処理プレート『SUPERIA ZD-Ⅲ』を発表した。同社では新プレートを軸に、2023年度までに現在20%の無処理プレートの出荷比率を50%に引き上げる。

無処理プレートは自動現像機や廃液保管などのスペースを省くほか、現像液の管理等の属人的な技能を必要としないため、省人化や柔軟な人材の活用が可能になる。また、自動現像機で使われる電力が不要なほか、現像廃液を発生させず、環境保護の観点からも採用が進んでいる。一方で有処理版が優れる点もあり、無処理版普及の制約になっていた。

挨拶するFFGSの辻 重紀社長
挨拶するFFGSの辻 重紀社長

同社では既存製品の『SUPERIA ZD-Ⅱ』で、刷り出し性、網点耐刷性、耐キズ汚れ性、画像視認性の向上を図り、無処理プレート市場を拡大させてきたが、今回の『SUPERIA ZD-Ⅲ』の開発で、プレートに求められる基本性能をさらに高めた。これにより無処理版の市場での採用を一層、促していく。

新プレートは「有処理を凌駕する性能の無処理プレートでより多くのお客様に理想の印刷を提供する」を開発ビジョンに、刷り出し性、網点耐刷性、耐キズ汚れ性、画像視認性を向上させる4つの新たな技術を採用した。

説明するFFGSの藤嶋克則常務執行役員
説明するFFGSの藤嶋克則常務執行役員

刷り出し性では「Print Control Layer Technology」により、従来の保護機能に加え、現像速度を制御する機能を付与。これによりインキ着け時に感光層へのインキ着肉を阻害せず、機上現像と初期の着肉を両立し、有処理プレート同様の刷り出しの早さと安定性を実現した。

視認性では「High Color Generation Technology」を採用し、従来の発色技術に加え、新たな発色技術を導入することで視認性と耐刷性を高いレベルで両立。露光後のコントラストが大幅に向上し、版面情報が見やすくなることで、プレートの仕分け作業が容易になる。

耐キズ汚れ性では新開発の「Process Gumming Technology」により、軽微なキズが入ったアルミ表面を親水化。印刷時のインキの付着を抑制して印刷紙面のキズ汚れの発生を低減する。

説明する富士フイルム グラフィックシステム研究所の後藤孝浩所長
説明する富士フイルム グラフィックシステム研究所の後藤孝浩所長

網点耐刷性では「Extreme Adhesive Bonding Technology」でMGZ砂目をさらに進化させるとともに、レーザー露光時の硬膜化効率を高める新技術により、露光部の感光層と支持体との密着性が向上し、有処理プレート同等の性能を実現した。枚葉UV機や輪転機による一般商業印刷をはじめ、紙器パッケージ印刷などの様々な印刷条件下で有処理プレート同等以上の文字・画質品質が安定的に得られる。

市場テストでは、刷り出し性について30枚が15枚に向上し、有処理版と同等との結果が出ている。また、耐刷性では28万部を刷了。視認性が高まったことでオペレータの安心感が高まり、週末を跨いでも視認性が維持されることが報告されている。平台校正でも6枚から9枚の刷り出し枚数が3枚にまで抑えられている。

【辻社長 挨拶】

2021年は富士フイルムグループにとって大きな変革の年となる。7月1日には富士ゼロックス株式会社が社名を変更し、富士フイルムイノベーション株式会社として新たなスタートを切る。7月からは富士フイルムと富士フイルムビジネスイノベーションの印刷関連事業を統合したグラフィックコミュニケーション事業部を設立する。商業印刷、パッケージ印刷の分野を中心に豊富な知見を持つ富士フイルム、デジタル印刷技術に強みを持つ富士フイルムビジネスイノベーションのそれぞれの技術力、販売力が融合することにより、オフセット印刷とデジタル印刷の両方で幅広いソリューションをワンストップでご提供できる体制が整う。これによって印刷業界の皆様のビジネス拡大にこれまで以上に貢献できると考えている。

一方で、昨年から続いている新型コロナウイルス感染症拡大の影響で私たちの生活、企業活動を含め、社会全体の仕組みが大きく変化している。その一つがデジタル化の動きだ。印刷業界でも小ロット・多品種化、短納期化の進展、深刻化する人手不足を背景に工程全体のデジタル化や、自動化の取り組みが加速している。環境対応についてもこれまで以上に明確な成果が求められるようになってきている。

こうした課題を解決するソリューションの一つとして、15年に渡り完全無処理CTPシステムをご提案してきた。無処理プレートの開発ではお客様にとっての使いやすさを追求し、2006年のET-Sから、現在お使い頂いているSUPERIA ZD-Ⅱまで、お客様のご要望に応えるため、常に進化させてきた。

今回発表するSUPERIA ZD-Ⅲは、これまで追求してきた使いやすさを全面的に大きくレベルアップさせた新世代の完全無処理CTPプレート。これは先般のvirtual.drupaで発表したSUPERIA ZXを世界に先駆けて国内向けに発売するものだ。様々な新技術を盛り込み、現場の方々にも納得頂ける性能を実現できたと自負している。

このZD-Ⅲを、現在、有処理プレートをお使いのお客様へ積極的にご提案し、業界全体の無処理化を加速させていきたいと考えている。実際にテスト導入して頂いたお客様からは視認性が良くなり、これまで以上に安心して使えるようになったという声や、耐刷は有処理と遜色がないという声を頂いている。

皆様に自信を持ってご提案できる無処理プレートが完成したわけだが、これがゴールではない。今後もさらに使いやすさを追求し、現場の方々に感動して頂ける究極の無処理プレートを目指して、開発に取り組んでいく。

関連記事

最新記事