取協・電流協 出版業界のデジタル印刷活用に本腰、出版流通改革へ向け業界連携で共同宣言を発表
(一社)日本出版取次協会(取協)と(一社)電子出版制作・流通協議会(電流協)は1月20日、「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」を発表した。
この共同宣言は、業界連携のプロジェクトとして取り組むもので、従来の大量生産・大量返品型の出版流通モデルを見直し、デジタル印刷(DSR)の活用と出版DXの推進によって、「読者のために、必要なときに、必要な形で届ける」の実現を目指している。
背景 ― 出版流通が抱える構造的課題
日本の出版産業では長年、委託販売制のもと大量の新刊が市場に供給されてきた。しかしその裏で書籍の約35%が返品され推定で年間約130億円もの販売機会が失われている。
一方で、書店の現場では書店の現場では「買いたいのに本がない」「再入荷の見通しが立たない」という声が後を絶たず、読者が欲しい本に出会う機会を損失している。
こうした現状は出版文化の多様性と持続性を脅かす要因ともなっており、業界全体での抜本的な対策が求められてきた。
小ロットのデジタル印刷(DSR)を活用した新たな流通スキームを確立
共同宣言の目的は、出版流通における従来型の大量生産流通による在庫過多・返品率増加などの課題に対応する解決策の一つとして、小ロットのデジタル印刷(デジタルショートラン:DSR)を活用した新たな流通スキームを確立すること。書籍のデジタル印刷は2000年代から実現されていたが、当時は印刷品質がオフセットに見劣りし、コストも高かったため、多くの出版社は導入を見送っていた。
しかし近年のデジタル印刷は、オフセット印刷とそん色のない品質での印刷が可能となっている。加えて、小ロットで短納期かつ効率的に製造できるDSRの特性を活かすと、印刷単価だけで見るとオフセット印刷より若干割高になるが、返品・保管・廃棄・在庫管理など出版物流の全体コストを削減できる。既に大手を含む10社以上の出版社がDSRを活用している。(2025年10月時点)。
業界団体としてのDSR活用普及に向けた協調的な取り組み
取協と電流協は流通構造の課題を解決し、DSR活用の好事例を周知共有することで、業界全体でDSR活用を推し進めることができると考え、業界横断のプロジェクトチームを組成した。
同プロジェクトは、取協内に設置された「デジタル印刷推進委員会」と、取協からの要請により電流協内に設置された「DSR推進委員会」との両委員会による合同プロジェクト。DSRの活用を拡大することにより、読者需要と書店からの注文や在庫数の変動に即応した商品供給を可能にし、品切れや入荷未定の解消、リードタイムの短縮、流通効率の向上を図る。
また、その実現のために必要な業界標準モデルやガイドライン作成を連携して進めている。今回の共同宣言は、これら委員会での検討結果を集約し、業界全体で共有していくための声明となる。
