千葉県工組 afterコロナ時代の印刷ビジネスについて学ぶ講演会を開催

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新春講演会を開催した千葉県工組

千葉県印刷工業組合は、1月15日、千葉市中央区の京成ホテルミラマーレで第1回連携組織活性化研究会「令和3年新春講演会」を開催した。なお、講演会の後に開催してきた新年合同互礼会については、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で中止となった。

講演会は、講師に日本印刷技術協会(JAGAT)のシニア・リサーチャー 藤井 建人氏を招き、「印刷ビジネスの現状分析から方向を考える―2020年の振り返りを踏まえて-」をテーマに行われた。当日は、新型コロナウイルス感染対策に留意しての開催となった。

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あいさつする村山理事長

開会挨拶で村山勝己理事長は、「千葉県印刷工業組合は、今後も学びに重点をおいた事業を行っていく。現在の大変な状況の中で、企業経営にあたって学びが重要。学びの中に次の一手があると思う」と講演会開催の趣旨を伝えるとともに、「千葉県の印刷産業の中には、入札問題など課題が残っている。最低制限価格制度の導入などに向けた活動を行っていきたい」と、今後の事業についても述べた。

講演した藤井氏は、JAGATが発行している『印刷白書』『印刷産業経営動向調査2020』『テレワーク時代の印刷ビジネスモデル読本』などの資料を中心に、コロナ禍前後の印刷市場の傾向、コロナ禍以降の市場の動きや、これからのビジネスヒントについて事例を交えて解説した。

全体的な市場状況は、①市場の実需水準が切り下がった、②廃業・倒産が増加している、③短期的には底が見えAfterコロナも見えてきた、④負けない戦略を選んで対応する、⑤設備よりもソフト・デジタル、⑥印刷量は元に戻らないことを前提に、⑦量よりも質・単価、⑧来てもらうマーケティングに重点を置く、⑨顧客や地域社会の課題解決で価値を創る、⑩グレートリセット、であるとした。

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講演する藤井氏

現在の印刷市場は5兆円を切ったほか、東京の市場が減少傾向にあり地方へ分散化する傾向があるなど、これまでとは異なる異変が起きていると指摘。コロナ禍で最も厳しかった商業印刷に比べて、出版大手4社を中心に出版市場は好調な面があるが、小ロット化も進んでいる。

さらに良い企業の傾向として、工場見学の開催をはじめ“お客様に来てもらう”仕組みを作っている企業が増えている。投資も設備からソフト係へ移行する傾向があるほか、働き方改革としてテレワークを利用し、地方に拠点をつくって成功している企業も登場している。

コロナ禍をきっかけに、地域を超えた往来がなくなった分、ビジネスはローカルへ向かう傾向がみられ、ローカルエリアでは地元の需要を創っていくしかないという状況にある。町そのものが「居心地よく働きたくなるまちづくり」を目指す必要があり、それを進めなければ産業も地域も発展せず、人も集まらないという状況になりえる。まちのこれからをつくる仕事への回帰が始まっている中で、印刷業は地域のコミュニティづくりの要となることができる業態でもあると提言した。

2021年の経済については、2020年に比べて高いことはもちろん、イベントが多いことにもビジネスのヒントがあることや、従来型の資本主義経済が疑問視される時代が到来しているとこにも触れた。今や単なる“リスタート”でも“リセット”でもなく、1月のダボス会議のテーマにもなった“グレートリセット”のタイミングであると捉え、①負けない戦略づくり、②顧客接点(マーケットを創り、来てもらう手法へ)、③受注創造(地域課題をビジネスに)、④将来投資(afterコロナに向けた種を蒔く)、⑤単価改善(サービス領域拡大と高付加価値化)を、今後のビジネスのキーワードに挙げた。

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