印刷業界ニュース ニュープリネット

フジプラス DXでパーソナライズ絵本の実現~子どもひとりひとりが物語の主人公

2021.8.30

“子どもひとりひとりに、世界で一冊の特別な、心の糧になる絵本を” という想いを実現したSTUDIO BUKI株式会社(東京都渋谷区)のオリジナル絵本ブランド『BÜKI』(ブーキー/ https://hellobuki.com)。2020年3月、株式会社フジプラス(大阪府大阪市)に寄せられた一本の問い合わせから、子どもが物語の主人公になれるオリジナル絵本の生産プロセスが組み上げられていった。一つひとつがオーダーメイドで作られる絵本のバックヤードにはデジタルトランスフォーメーション(DX)の仕組みが動く。フジプラス営業本部カスタマーマーケティンググループ部長の江藤直軌氏に『BÜKI』が形づくられた背景を聞いた。

 

クライアントの幼い頃の

想いをカタチに

 

フジプラス 江藤直軌氏

フジプラス 江藤直軌氏

『BÜKI』のオリジナル絵本は、名前や誕生日などの情報をもとに、子どもひとりひとりに合わせてイラストやストーリーが変化するパーソナライズ絵本である。第一冊目の『ほしのゆめ』は、絵本に登場するキャラクターの子どもが星座ごとに変わり、導き役として主人公を不思議な星の旅へと誘うというもの。利用者は『BÜKI』のWebサイトで、名前や誕生日などを入力し、絵本の中身を見ながらストーリーやメッセージなどをカスタマイズしてオーダーする。

 

STUDIO BUKIはコンサルティング会社やベンチャー企業などでマーケティングに携わっていたコズロブふくみ氏が創業。夫であるコズロブイゴール氏がビジネス戦略を担当し、二人三脚でオリジナル絵本のアイデアを具現化していった。

 

『BÜKI』を始めた背景には、コズロブふくみ氏の「小さい頃は絵本が大好きで、絵本を読み終えた後はいつも、自分が絵本の主人公になる想像をし、いつか本当にそれが叶うと信じていました。しかしいつしか、『主人公になれる子は特別な子だけで、自分は主人公になれない』と、想像と現実の間に線引きをした記憶があります。あの時の自分は、『あなたはこの世界の主人公なんだ』と誰かに言ってほしかった」という自らの体験がある。子どもたちに自分が主人公になれる絵本を手にしてもらいたい。オリジナル絵本にはそうした願いが込められている。

 

オリジナル絵本『ほしのゆめ』

オリジナル絵本『ほしのゆめ』

アイデアの種とビジネスプランは自らの手で担える。商品の体裁や品質などは、海外の同様のサービスを提供しているサイトからオリジナル絵本を取り寄せて参考にした。しかし、現実の“もの”にする部分は印刷会社の手を借りる必要がある。様々な情報を収集した結果、海外のサービスでは、印刷に『HP Indigoデジタル印刷機』が使われていること、国内で印刷連携を展開する企業があることなどが分かった。

 

「調査している過程で、Indigoを所有し、印刷連携サービスやWebマーケティングを展開する当社のWebサイトに行きついたようです。単なる元請け・下請けの関係ではない役割を求められていましたので、お客様のパートナーを目指す当社の方針とも合致していました」(江藤氏)。コロナの影響もあって、2020年3月の問い合わせから同年10月に初めてリアルで顔を合わせるまでは完全オンラインで打ち合わせを進めた。クライアントの品質や価格設定などの要望や生産に最適化するためのデータ制作方法をすり合わせ、実際の印刷サンプルを送付して実物を確認。リアルで顔を合わせた時にはサービスの形がほとんど完成していた。

 

「お客様はサービスや発想を重視され、とくに子どもの未来に影響することはしたくないと要望されていました。環境認証紙、バイオマスのOPP封筒など環境に適応した素材を使うことが一つのポイントでした」(江藤氏)

 

サービスがスタートしたのは同年12月。現在は1週間に1回のペースで生産・出荷している。主に子どもがいる親が対象のため、一般的に在宅率の高い土日の発注が多いことを踏まえ、日曜の夜にその週の出荷分を締め切り、週の初めから生産を開始する。

 

顧客とデータ連携

自動、高効率で生産

 

オリジナル絵本の発注から納品までのプロセス概要

オリジナル絵本の発注から納品までのプロセス概要(クリックすると図が拡大します)

STUDIO BUKI側では利用者が『BÜKI』に入力した発注情報を元に、フジプラスの生産環境に適応した印刷用PDFを生成し、FTPサーバーに格納する。フジプラス側では、RPA(ロボティック プロセス オートメーション)が決められた時間に、FTPサーバー内の印刷用データ顧客情報をコピーして、フジプラス社内のシステムに取り込む。ジョブのグルーピングや、ソフト・デバイスに面付・印刷を指示するグーフの『OneFlow』が社内システムからデータを受け取るが、この仕組みがDXに大きく貢献している。フジプラスは複数のサービスからの受注を集積しているので、『OneFlow』を使うことでストレスも低く継続的なバージョンアップで高効率ひいてはROI(費用対効果)も期待している。そして面付ソフト『Impostrip』に渡して自動的に面付されたものを、オペレータがB2判対応の『HP Indigo 12000 デジタル印刷機』に出力指示して印刷が完了する。

 

STUDIO BUKIで生成した印刷用PDFには顧客情報や印刷仕様の情報が紐づいた管理番号を含むバーコードが印刷されている。ホリゾンの製本システムがバーコードを読み取り、利用者ごとに内容が可変している表紙、本文を付け合わせながら製本・加工。出荷工程では商品に印刷されたバーコードを読み込むと、フジプラスの独自の運送EDIシステムが動き、顧客情報に紐づけて出荷伝票を出力して発送する。生産プロセスの中で、人がかかわるタッチポイントを極力減らし、人的ミスの防止と小ロット・多品種生産の効率を上げている。

 

「PDFデータの生成フォーマットをアドバイスするとともに、データ連携のルールを取り決め、何度か印刷テストし、品質やエラーのチェックを重ねていきました」(江藤氏)バーコードの管理番号はSTUDIO BUKI、フジプラス共通。フジプラスの出荷部門でバーコードを読み取ると、出荷情報がSTUDIO BUKIのシステムに送られる。

 

一連の仕組みは10年前、江藤氏が海外のフォトブックを手掛ける印刷会社を参考に構築。同社の印刷通販サイトやECサイト、過去にはフォトブックサービスでも利用されている。一人の利用者が複数の商品を発注した場合にでも条件により同梱判定して発送できるシステムになっている。現在、『BÜKI』の商品は『ほしのゆめ』のみだが、2021年末までに数種類が追加されるため、一人の利用者が複数の商品を発注するケースが増えていくことが想定され、運送EDIシステムを利用したパッキングが役立つと見られる。

 

出荷状況はサービス開始から毎週、増えているという。サービス開始から約半年の出荷数は2,000~3,000部と言われている一般的な絵本の初版部数と比較して遜色ない。SNSでの書き込みも増えており、利用者数、出荷数とも順調に推移している。

 

江藤氏は「今後、FTPサーバーを経由せず、APIで連携できればと考えています。API to Printを強化することで、国内外問わずお客様のシステムとシンプルにつなぐことができるためです」と展望する。同社では拠点のある大阪・東京に限らない新たな顧客からの問い合わせなどに対応するため『フジプラスコンタクトセンター』を設置。今後、STUDIO BUKIのようにクライアントのシステムと連携した事例を含め、DX対応によるインサイドセールスをさらに拡充していく。

 

株式会社フジプラス
大阪市北区南森町1-2-28
https://fujiplus.jp/