【FFGS寄稿:Revoria Press PC1120導入事例ー新藤慶昌堂】特殊トナーを用いたビビッドな色再現が、品質重視の同人誌市場で高評価 大容量スタッカー・自動検査システムで大ロットジョブでも品質・生産性を確保
富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社は、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社のRevoria Press PC1120を導入した株式会社新藤慶昌堂の事例を発表している。その内容を紹介する。
1931年創立の老舗総合印刷会社、株式会社新藤慶昌堂(本社:東京都江戸川区松江7-6-18、代表取締役:藤江弘明氏)は、2024年7月、富士フイルムのプロダクションカラープリンター『Revoria Press PC1120』(以下 PC1120)を導入し、商業印刷の小ロットジョブに加えて、高い印刷品質・表現力が求められる同人誌や、1万~2万部の大ロットの書籍・パンフレットなどの仕事にも活用している。また、デジタル印刷ならではのメリットを活かして作業の効率化を進め、生産性向上も実現している。導入の背景や効果、今後の展開などについて、生産管理本部デジタルプレスグループのグループリーダー・永井悟士氏に伺った。
■同人誌の受注拡大が見込める中、生産力の増強が課題に
新藤慶昌堂は、1931年に『新藤画版所』として設立された、90年以上の歴史を持つ老舗総合印刷会社である。創業当時はノート、ポスター、カレンダーといった紙工品の卸売業などを手がけていたが、数度の社名変更を経て2018年に『株式会社新藤慶昌堂』となり、現在は国内6拠点、従業員数160名の規模で、デザインから配送まで、幅広い商材やサービスを提供している。
同社が初めてデジタル印刷機を導入したのは20年以上前。短納期のチラシや名刺といったオンデマンド市場を開拓しながら、デジタル印刷ビジネスの知見を蓄積してきた。2016年には、デジタル印刷サービスを担当するデジタルプレスグループが両国から千葉工場へと移転。製版部門・刷版部門・デザイン・Web制作とさまざまな部署を経験してきた永井氏が、グループリーダーに就任した。
同グループでは現在、3台のデジタル印刷機と後加工機を保有し、小ロットジョブから1~2万部という大ロットの書籍やパンフレット、永井氏が立ち上げた同人誌印刷サービスのジョブを、出力から梱包・発送まで4名のチームで一貫生産することで、幅広いニーズに応えている。
そんな同社がPC1120の導入検討を始めたのは、2024年1月頃。当時運用していたデジタル印刷機のうち1台の保守サポートが切れ、そのうえ機械トラブルが増加し生産性が下がっていた。
「当時、デジタルプレスグループでは“1台で1時間あたり1,000枚”を出力の目安にしていましたが、その実現が厳しくなっていました。また、同人誌印刷サービス『PriPera(プリペラ)』が軌道に乗ってきたタイミングでもあり、これから拡大していくマーケットが目の前にあるのに生産力が落ちていくことに、危機感を持ち始めていたのです。そんな状況を打開するためには、新機種への入れ替えが必須でした。せっかくなら、品質と生産性を高いレベルで兼ね備えたものを入れようと考え、検討を進めました」(永井氏)
■“ワクワク・ドキドキできるハイエンド機”としてPC1120を選択
機種選定において永井氏は、2つの点を重視したという。
「まず、営業やお客さまに満足していただける高画質と、大ロットにも対応可能な生産性を持つハイエンド機であること。そしてもう一つ、当グループのメンバー全員が『これから自分がどんなふうに仕事をしていくのかが想像でき、ドキドキ感・ワクワク感を持てる機材』であること。これがとても重要だと考えました」
2024年5月に、グループメンバー全員と前工程を担当するスタッフで、FFGSのショールームを訪問。実機やサンプルを見ながら、PC1120の画質や表裏見当精度、生産性などを確認するとともに、特殊トナーを使うことで広がる表現の可能性についてFFGSから説明を受け、イメージを膨らませていった。
「デジタルプレスの分野を長らく牽引してきた富士フイルムさんですから、製品のスペックとか品質についてはまったく心配していませんでしたし、長いお付き合いの中で、メーカーとしての信頼感もありました。あとは実際にこの機械を見てチームのみんなが『使ってみたい!』と思えるかどうか。そこがポイントでした」(永井氏)
こうしてメンバー全員が期待を持って選んだのがPC1120だった。同年7月には千葉工場に設置、夏に開催される同人誌即売会に向け、早速フル稼働を開始した。
今回同社が導入したPC1120は、後加工の作業をスムーズにするため、連続出力を可能にする大容量スタッカーや、合紙を差し込むインターポーザーといったオプションを採用。さらに自動検査システムも搭載し、万全の態勢を整えた。
「大きいロットの仕事でもしっかりと品質と生産性を維持するには、大容量スタッカーと検査システムは必要不可欠な組み合わせだと考えました」(永井氏)
■期待を超える印刷品質、現場のマルチタスク化によりサービス向上
PC1120を導入して最初に実感したメリットは、つねに安定した仕上がりが得られる「品質・安定性の高さ」だったと永井氏は語る。
「企業様からの仕事では、データ通りの忠実な再現が求められます。その点、PC1120の品質と安定性は非常に心強いものがあります。一方、同人誌の仕事では、イベント会場でパッと見たときのインパクト、“表紙のきれいさ”が何より重要になります。それも普通のきれいさではなく、“期待の上を行くきれいさ”が求められる。納品後、イベント会場に視察に行くこともあるのですが、そのときにお客さまから 『すごくきれい!』と喜びの声を直接お聞きすると、“期待以上の品質”の大切さをあらためて感じますね」(永井氏)
もう一つ、PC1120を導入したことで格段に向上したのが、デジタルプレスグループ全体の作業効率と生産性だという。
「導入・設置したのが同人誌の大きなイベントの直前だったのですが、メンバーの協力もあり、うまく立ち上がってくれて、稼働開始直後からトラブルもなくフル回転で生産に入ることができ、納期に間に合わせることができました」(永井氏)
このようなスムーズな立ち上がり、効率的な生産が実現した背景には、永井氏を含めた4名のグループメンバー全員が製本工程経験者であることも挙げられる。 「後工程をわかった上で出力するのと、データを出力することだけを仕事にするのとでは大きな違いがあります。当グループは、全員が出力から出荷まですべての工程を理解し、サポートし合える体制になっています。そんな環境にあって、PC1120の導入によって出力オペレーションの負荷が大幅に軽減されたので、全体の生産性向上につながっているのだと思います」(永井氏)
加えて、PC1120の大容量スタッカーや検査システムなどにより、出力している間にさまざまな作業を並行して進める「マルチタスク」的な動きができるようになったことも、生産性向上に大きく寄与している。とくに、製本加工や梱包、発送まで次々と効率よくこなさなければならない小ロット・短納期の仕事では、マルチタスクを可能にするPC1120は重要な役割を果たしている。
■PC1120のメリットをさらに引き出し、新たなサービス・商材の提供へ
新藤慶昌堂では現在、PC1120の大きな特徴である特殊トナーを前面に打ち出した新しいサービスや商材の準備を進めている。その中には、ピンクトナーを使った同人誌向けサービスや、ゴールドトナーを活用したカレンダーなどがある。
社内の経験値を蓄積するため、複数の同人誌の顧客に了解を得てピンクトナーを試験的に使用したところ、「イベント会場で飛ぶように売れた」との反応があったという。
「イベントでは、たくさんの同人誌がテーブルに並べられるわけですが、その中で、ピンクトナーを使った鮮やかな表紙は来場者の目を引き、予想以上に売れ行きが良かったそうです。特色の効果をあらためて実感しましたね」(永井氏)
また、同社では、PC1120の品質の高さを活かし、「営業がオフセット印刷・デジタル印刷を意識せずに仕事を流せる環境の構築」を目指している。現在は大部分の仕事で、顧客の予算感や納期などをもとに、オフセット印刷/デジタル印刷への振り分けを営業が判断しているが、後工程まで含めた効率・コスト面を考えると、デジタル印刷の方がメリットが大きくなるケースは多いという。
一方、社内にはデジタル印刷の品質に対する不安がまだ残っているといい、永井氏は「オフセット機とデジタル機のシームレスな活用を実現するためには、いままでのデジタル印刷に対するマイナスのイメージを払拭する必要がある」と語る。
「PC1120の品質の高さ、オフセットと遜色のない仕上がりを営業にしっかりと見てもらい、理解を促しつつ、活用の幅をさらに広げていきたいと思っています」(永井氏)
今後、新しいサービス・商材の開発や生産環境づくりを進めていくにあたり、FFGSの役割に対する期待も大きいという。永井氏は最後にこのように語ってくれた。
「私はこれまで、製本、製版、デザイン、Web制作、刷版などさまざまな部署を経験し、その過程で社内にたくさんの“相談できる仲間”ができましたが、FFGSさんも、サービスや商材のイメージを一緒に膨らませてくれたり、それを具現化する方法を一緒に考えてくれたりする仲間だと思っています。こうした仲間は、PC1120を有効に活かしていく上で欠かせない存在です。今後、デジタルプレスグループのメンバーの力も借りながら、PC1120のメリットをもっと引き出し、新藤慶昌堂としての商品開発力・提案力の底上げを図っていきたいと考えています」
■プロフィール
株式会社 新藤慶昌堂
本 社:東京都江戸川区松江7丁目6-18
千葉工場:千葉県千葉市稲毛区六方町218-1
https://www.shindo.co.jp
■関連リンク
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