【昇寿堂】セキュリティ技術とデジタル印刷で新ビジネス構築へ Revoria Press PC1120で偽造防止印刷も提供

フォーム印刷以外に、セキュリティ印刷や長尺印刷の技術で知られる株式会社昇寿堂は、2024年夏、富士フイルムのプロダクションカラープリンターRevoriaPress PC1120を深川工場に導入し、オフセット印刷では対応できなかった小部数対応のサービス体制を確立。これまで大量向けが当たり前だったセキュリティ印刷などの分野にも小ロット対応を可能にするなど、サービス体制を拡充させた。同社代表取締役会長兼社長の瀨戸良教氏と取締役デジタルプリント開発担当の新保朝男氏に話を伺った。

昇寿堂は、セキュリティ印刷やフォーム印刷、特殊印刷・加工などの技術力を強みとして、中でもロール紙対応のデジタル印刷機Xikonを活用した鉄道のダイヤグラム印刷で知られている。同社のダイヤグラム印刷は、印刷した後の蛇腹折り加工も含めたノウハウが特長で、これらの技術力は深川工場のある江東区から「江東ブランド」企業として認定を受けている。

また同社の主力事業であるフォーム印刷市場で必要とされるセキュリティ印刷については、多種多様なセキュリティ印刷技術に対応。現在は、これまで蓄積してきたノウハウを生かした新たなビジネスへの取り組みとして、新商品開発プロジェクトチームを立ち上げ、新たな商品づくりにチャレンジしている。

一方、技術を生かした取り組みにチャレンジする中で浮かび上がったきた課題の一つに、デジタル印刷システムの代替えがあった。特に、既設の小ロット・スピード対応のモノクロ印刷が代替えのタイミングを迎えており、新たな設備選定が必要となった。

新保朝男取締役

しかし、市場が縮小している昨今のビジネス環境もあり、簡単に設備投資を決めることは出来ない。そこで補助金を活用し、新たな事業の開拓にチャレンジできるシステムの導入を考えるに至ったという。同社が活用したのが、東京都中小企業振興公社の躍進的な事業推進の為の設備投資支援事業助成金で、富士フイルムの両面同時プリント対応の連帳モノクロプリンター(Revoria Press CF135)と圧着シーラー機のみではなく、付加価値の高い小部数でスピード対応できるビジネスモデル構築に向けて、Revoria PressPC1120の導入にも踏み切ることとなった。

Revoria Press PC1120を選択した大きなポイントは、4色(CMYK)に加えてゴールドやシルバーなど2色追加できる点と、高画質Super EA-Ecoトナー採用による2,400dpiの高解像度にある。

特に、高精細印字と高画質トナーにより、偽造防止印刷に必要なマイクロ文字のプリントも、デジタル印刷で可能になった。加えて、6色プリントの機能を使うことで、オフセット印刷で行ってきた偽造防止印刷に近い印刷表現も可能になっているという。

「従来受注してきた偽造防止印刷は、ほとんどが大量ロットの仕事でした。しかし、デジタル印刷でマイクロ文字などの表現ができれば小ロットニーズに対応できるようになります。これは営業活動の強い武器となり、様々な領域に広がっていく可能性があります」と瀨戸会長は期待を語っている。

新保取締役も、「これまでもセキュリティ印刷にはそれなりの実績がありますが、顧客先にはショップの金券など偽造防止の印刷が欲しいけれど、少量しか必要ないという事情があります。オフセット印刷では量とコストの問題から、なかなか受注できませんでした。デジタル印刷で偽造防止印刷が実現できれば、店頭で使う割引券や商店街単位での商品券など期間限定、あるいはお店単位で使うサービス券などが、無理なく製造できるようになります」と語る。

セキュリティ印刷の見本
Revoria Press PC1120

これまで同社で製造している偽造防止印刷には、マイクロフォントやバーコード・ナンバー印字のほか、コピーガード、ホログラム、偏光インキ(トリックインキ)、モアレ印刷、実線グラデーション、レインボ―印刷、トラフォスクリーン、ラインスクリーン、ラインエンボス、すかし印刷、ブラックライト対応の蓄光インキ印刷、彩文印刷、封印シール、セキュリティインキの活用など様々な技術がある。

デジタル印刷は、こうした多彩な技術を全て再現できるわけではないが、RevoriaPress PC1120の高画質トナーや高精細印刷技術により、モアレ印刷に近い表現も実現。加えて、クリアトナーやシルバートナーを使った表現はコピーのできない偽造防止技術として採用できる。「オフセット印刷で行ってきたノウハウをベースに、限られた期間や限られた場所で、小規模に利用したいというニーズに対して、実用的な偽造防止の印刷ができるようになりました」と新保取締役は解説する。

加えて、ゴールドトナーやクリアトナーを活用したRGBに近い表現力も、今後期待している取組みだと言う瀨戸会長。特に同社では、両面プリントすることで反射光と透過光が1枚で楽しめるダブルミーニング「ピュアWプリント」サービスも行っている。両面にプリントすることで光を通すシート素材でも、漆黒の黒などを表現できるようになる。 
ビュアWプリントは、サイネージなど透過素材でも美しい写真素材の利用が実現する。特に、幅広い素材へのプリントが可能なRevoria Press PC1120は、写真画像の再現も得意なため、個人市場向けの写真素材グッズづくりが期待できるとしている。

透過素材への写真プリント

「好きな写真で、様々なものを作る個人市場が少しずつ動いています。デジタル印刷を活用することで、1個からでも生産できるので、様々なニーズに対応できるようになります。写真素材の表現の幅が広がることで、個人市場に向けたモノづくりが提供できるようになると思います」と展望している。

なお同社が江東区から認定されている『江東ブランド』では、長尺印刷と蛇腹折り印刷技術を活用し、長さ無制限印刷/長さ無制限蛇腹折り機の“無限蛇腹”を製造する企業として紹介されている。江東ブランド企業に認定されたことで、デザイナーやクリエイターと接する機会が生まれ、「フォーム印刷会社のままでは発想できないアイデアを得る機会になっています」と振り返る瀨戸会長。「これからは培ってきた技術や設備を広く解放し、コラボレーションしながら新しいものづくりをしたいと構想しています」と語ると共に、「デザイン会社やデザイナーにも付加価値の高い印刷表現ができる設備を積極的に活用してもらいたい」と呼び掛けている。

新保取締役も、「デジタル印刷の良さを生かしながら、“セキュリティ+エンタメ”で楽しいものづくりができると思っています。楽しいものに目を向けることで、新たなビジネスの広がりも見えてくるのだと感じます」と語っている。

 【会社情報】
 株式会社昇寿堂
 深川工場:東京都江東区牡丹3-33-6
 電話:03-3642-4596(営業部)
 HP:https://www.shojudo.com/

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