【インタビュー:ロボットスポーツ協会 古川拓氏・瀬田章弘氏】ロボット競技から始まる“ビジネス創造”と“人材育成” 企業が地域と交流し、地域に貢献するという課題を解決するツール
ロボット技術を活用して競い合う新たなスタイルのスポーツ『ロボットスポーツ』(商標登録済)の普及活動を行っている「一般社団法人ロボットスポーツ協会」(代表理事:標祥太郎氏)が、2023年12月に設立された。同協会は、ロボット競技の“スポーツとしての楽しさ”や“エンタメ性”に注目し、「誰もがロボット競技を競い、観戦し、楽しめる社会の構築」を目指して活動している。同協会の専務理事である古川拓氏(有限会社ソーシャルパイオニア 代表取締役)と、理事に名を連ねている瀬田章弘氏(弘和印刷株式会社 代表取締役社長)に話を伺った。
誰もが楽しめる「ロボットスポーツ」提唱
一般社団法人ロボットスポーツ協会は、純粋にロボット競技を“愛する”若い社会人や学生たちを中心に運営され、経験豊かな経営者などが実務面を支えている。
ロボット競技そのものの歴史は長く、競技種目も多種多様にある一方で、その大半は教育や研究が目的となっており、ロボット競技の持つスポーツやエンターテインメントとしての側面は重視されてこなかった。また、ハイレベルの技術が求められることから、競技者は一部の学生やエンジニアに限定され、裾野の広がりは限られたものだった。
しかし、ロボット競技には、子供から大人まで楽しめる魅力があると、同協会の共同設立者でもある古川氏は指摘している。その魅力について、単にロボットを制作するものづくりの側面だけでなく、スポーツとして誰もが楽しめ、論理的思考力やチームワーク、創造性、挑戦する力など、これからの時代を生き抜く力を育むことができる点を挙げている。
そこで同協会は、ロボット競技について、新たにスポーツやエンターテインメントとしてアップデートした「ロボットスポーツ」というコンセプトを提唱。現代の人々のニーズに応えつつも、スポーツやエンターテインメントとしての魅力を引き出し、新しいロボット競技や観戦のあり方を提案してくことを目指している。
これにより、ロボット競技の競技人口拡大や、関係する市場を拡げ、ロボットスポーツという競技を通じた地域連携、ビジネス創造、人材交流と育成へと繋ぐことを狙っている。古川氏は、「ロボット競技をこよなく愛する若い人たちが、自分たちの思いを形にし、社会へむけて新しい価値を提案する取り組みがロボットスポーツです」と語っている。
ロボットスポーツ普及の課題と挑戦
しかし、実際にロボットスポーツを普及する上では、様々な課題がある。現状では、ロボット競技に関する情報が不足し、開発する場所や加工設備は少なく、教える人も見つからない。加えて、一般の人が簡単に扱えるためのキットやパーツも適当なものがあまりない。事業としても、持続性のあるビジネスモデルもなく、市場も存在していない。
そのため、全てが新しく、事業環境を一から構築していく必要がある。古川氏は、「ロボットスポーツは何もないところから始まっているので、鶏と卵の両方を同時に作っていくような取り組みになっています」と表現する。
そこで、「ロボットスポーツ」というコンセプトを固めて商標登録も行い、一般社団法人を設立。加えて、ロボットスポーツをビジネスとして発展させるために、ロボットスポーツの興行事業を担い、スクールなどの人材育成やロボット開発キットやパーツなどの物販を行う「株式会社ロボットスポーツリーグ」を2024年1月に設立。同取り組みは、足立区の令和6年度創業プランコンテストで最優秀賞を受賞した。今年2月には、ロボット競技のための技術開発や製品開発を主な業務とする「株式会社ロボットスポーツゲームズ」も設立した。
この3つの組織を有機的に展開することで、ロボットスポーツの人口を増やし、社会的にも経済的にも持続するエコシステムづくりを目指している。活動を通じて地域に根付き、産業として成り立たせていく。現在、ロボットスポーツ協会の活動に関わる人は約30人に膨らんでおり、今年は、普及活動を積極的に行っていく予定である。
ロボットスポーツ産業をつくりたい
ロボットスポーツ協会が目標として掲げているのは「ロボットスポーツの産業化」である。そのためにも、2028年に全国大会、2030年に世界大会を開催することを目指している。
大きな目標に向けた活動は始まっており、2024年3月に東京都足立区で開催された「ロボスポフェスタin北千住」を皮切りに、様々な活動を展開している。
今年は7月26日・27日の2日間にわたり、足立区の西新井にあるギャラクシティで「第1回ロボスポフェスタinあだち」を開催する。1ヶ月間のロボット製作・プログラミング・競技練習等のワークショップを受けた児童たちが予選と決勝トーナメントに臨むもので、ロボットスポーツ初めての競技大会となる。メインスポンサーには3D CADのPTCジャパン株式会社がつき、競技体験やロボット展示も楽しめる。また10月には、神奈川県やJR東海と協働して相模原でも競技会が開催される。
また今年4月には、東京都荒川区の町屋に株式会社ロボットスポーツリーグが運営するロボスポクラブを開設した。月謝制でスポーツとしてのロボット競技やプログラミングも学ぶことが出来るクラブで、ビギナー(初級)とミドル(中級)の2つのコースを設けている。クラブ内には工作と競技スペースがあり、レーザーカッターや3Dプリンターを活用して自らロボットを創り上げていく“ロボット力”を培う場ともなる。
ロボットスポーツは、地域に根付く企業が地域と交流し、いかに貢献できるのかという課題を解決するツールにすることができるのではないかと瀬田氏は分析している。「地元の企業と一般の人が交流できるイベントとして役立てて頂けると思います」と期待を語っている。
【会社情報】
一般社団法人ロボットスポーツ協会
所在地:東京都足立区千住旭町17-8
HP:https://robotic-sports.org/