PrintNext2022特別対談 開催テーマ〝印刷を再定義〟に懸ける想い語る 後編

前編から続く)

定量・定性的にビジネススキームで提示

稲満信祐実行委員長
稲満信祐実行委員長

稲満:これまでPrintNextでは、先輩方が印刷業界を変えていかなければならないという想いをテーマに込めて活動してきました。今回は第10回の節目にあたるため、〝印刷を再定義〟の結論を発表しようと考えています。ビジネスとして「お客様の集客のお手伝いをしている」という見かたで、インフルエンサーを起用した仕掛けによりSNSで情報発信した結果、どれくらいの「いいね」が付いて、何名集客できたのか、具体的な過程と結果を提示します。うまくいかなかった施策も含めて、数値で表せる定量的な結果と、数値化できない定性的な結果をはっきりさせて、第三者がみても理解できるように整理・図解したビジネススキームとして皆さんに報告します。

印刷業は、情報産業の担い手という位置付けを変えずに、紙を刷る会社から、『紙も刷る会社』に変わるべきだと提言しようと考えています。情報の発信を求めているお客様に対して、紙はマストではなく、お客様が求めている課題を解決するための手段として情報を発信し、提供するのが我々の役割です。印刷を主な業務としつつも、お客様には販促パートナーだと認識してもらえるようにならなければならないということをしっかり共有できればと思います。

青木:PrintNext2022では、〝未来の担い手づくり〟を大きな柱の1つに据えています。現在、世間が印刷に持っているイメージは、あまり良いとは言えません。それは当然、学生も同じなので、今後の業界を担っていく若者に対して、印刷業界が幅広い方面で精力的に活動していて、社会に対しての重要な位置付けであることを理解してもらうべく、PrintNext2022の活動に参加してもらいました。

まず、デザイン系、美術系の大学、専門学校生や独学でデザインを学んでいる30歳未満の方を対象に、ロゴマークコンテストを開催しました。コロナ禍の影響でアルバイトの数も減り、デザイン学校などでは企業案件も少なくなっています。賞金を設定したロゴマークコンテストで少しでも助けになればと最優秀賞1点、優秀賞5点に賞金を設定し、多くの学校の学生から50点の応募がありました。学生たちはロゴデザインを考えるためにPrintNextを通して印刷業界についても学ぶことになります。

その中で、コンセプトに賛同した学生たちに継続して活動に参加してもらい、ポスター制作やフリーペーパーの編集・取材・記事作成、印刷工程まで一緒になって取り組み、面白いことをやっている業界だと感じてもらうことができました。

この就職難の時代に、就活生の受け入れ先としての役割も期待していたところ実際に、活動を通して関わった学校の生徒から実行委員会の印刷会社へ就職の応募がありました。これはPrintNextが人材発掘に貢献した大きな成果です。詳細は当日に発表したいと思います。

稲満:業界が発信するイベントに、一般の学生の参加を募るのは難しい部分がありますが、デザイン学校の就職課につながりを持つ実行委員の伝手で、学校関係にPrintNextのコンテストなどを周知できました。講演依頼も、アパホテルにつながりのある実行委員からお願いし、若手の経営者が集まるイベントだと知った元谷社長から快く承諾いただけました。個性的なメンバーが集まり、さまざまなコネクションが得られるPrintNextならではの展開です。

青木允運営委員長
青木允運営委員長

青木:学生たちと一緒に印刷の未来を考えるにあたって、日本で唯一の印刷業界に特化した専門学校である日本プリンティングアカデミー(JPA)には大いに協力していただきました。花井秀勝理事長、曺 于鉉(チョ ウヒョン)校長に今回の趣旨をお話ししたところ共感いただき、学生にもその想いを伝えてほしいと、授業として私がお邪魔して学生の皆さんと座談会をする貴重な機会を得られました。座談会の模様は、学生編集者たちの手によってフリーペーパー「PrintNext」の第1号に掲載しています。

稲満:JPAは現在、留学生が多いこともあり、どのような技術を何年で身に付けて、自国の印刷会社の発展、もしくは開業といった目的がしっかりしている学生が多いです。業界への問題意識や学習意欲が非常に高く、我々にとっても良い刺激になっています。若手経営者が集うPrintNextを通じて業界について学ぶことで、学校で教わったことがさらに活かされると思うので、今後もこういった機会をつくれたらと思います。

五感に訴えるマーケティング手法を試運用

稲満:『ココカラ市場』では、DXにつながる試験的なマーケティング手法にチャレンジします。その1つ目は、山櫻様が開発し、今回提供していただくことになったデジタル名刺管理サービス『NAME ROOM(ネームルーム)』の活用です。カンファレンスは、現地に来ることができないオンラインの方も含めたハイブリッド開催なので、遠く離れた方とも名刺交換し、しっかりコミュニケーションが取れるように設えます。

2つ目のDX施策は、マーケティングツールを開発しているウイズ様の協力による、ビーコンを使った『人流可視化ソリューション』の運用です。来場者には受付けでカード型のチップをお渡しします。それを天井に設置したビーコンの発信機が感知して、レシーバーに発信することで、人の動きがデータで可視化できます。

このソリューションは、五感への訴えがより効果的なマーケティングにつながるという考えのもとに開発されたもので、匂いや音による人の動きの変化がデータで提示できます。ある特定の時間でどのブースに人が集まっていたか、食品、音楽、ワークショップなど多彩なブースがある中で、どのような順番でまわる人が多いのかなどが判別できるわけです。例えば、北海道のブースでカレーを食べた人たちにコーヒーの匂いを流し、飲み物を提供しているブースに誘導するなど、新しい考え方やマーケティングの手法の実用性を共有したいと思います。

今回は個人のデータまでは取らずに簡単な人の動きを測りますが、実際のマーケティングに活用するときは、年齢や性別などを属性付けすればさらに詳細なデータが収集可能で、より効果的な分析ができるでしょう。これまで、マーケティングツールの運用は、仕掛けを施し、その結果から原因を推測する考え方が主流でした。このように詳細な情報の収集が可能となった現在では、自分たちで収集したデータに基づいて仕掛けを考えるリアルマーケティングが主流になっています。

青木:PrintNext2022では、従来の企画部会・広報戦略部会・総務部会の3部会にスペシャルコンテンツ班を加えて準備を進めてきました。2年に1度のPrintNextは、その年の開催が終われば組織を解体し、次の実行委員会設立の際に新しく編成されるため、これまで実施した内容やうまくいった点、改善点などが新しい実行委員会にうまく伝わりにくい部分がありました。そこでスペシャルコンテンツ班では、その回のテーマに込められた想いや、業務的な引継ぎ事項を体系的に整理し、PrintNext2024につないでいくための体制づくりを担ってもらいました。

稲満:PrintNextは、印刷会社だけではなく、多くのメーカー、ベンダーの方々からも協力も得て企画されています。厳しい環境の中で、メーカー、ベンダーと印刷会社は、単に売り手・買い手という関係ではなく、一緒に考え協力して、同じ目線で仕事をしていくビジネスパートナーになる必要があると考えています。PrintNextはそうした関係づくりにも貢献しています。

また、今回は2日開催ということもあり、例年の約2倍の頻度で実行委員会を開いているほか、各部会でも頻繁に協議して、力を入れた内容をつくり込んでいるので楽しんでいただけるでしょう。

青木:青年団体の垣根を超えて印刷業界の面白さを探求するPrintNextの活動はとても刺激的で、濃い内容になっています。私自身、この経験は今後の会社人生においてとても重要なものになると実感していますし、今回一緒に活動してきた仲間とこの先ビジネスを展開していけると思うと心強いし楽しみです。こうした仲間との関係構築が大変有意義ですので、若い世代の人たちには今後もぜひ企画を進行する側として参加していただきたいと思います。

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