ラクスル MBOで非上場化後初の「事業戦略発表会」を開催 売上拡大・コスト最適化・資金支援を統合した「中小企業の課題解決プラットフォーム」構築へ、金融事業「ラクスルバンク」や「ラクスルホームページ」「営業BPO」を拡充

ラクスル株式会社は7月30日、港区の麻布台オフィスにて「ラクスルグループ事業戦略発表会」を開催した。同社代表取締役社長 グループCEOの永見世央氏、上級執行役員グループCRO兼ノバセル株式会社代表取締役社長の田部正樹氏、ラクスルバンク株式会社代表取締役CEO兼ラクスル株式会社上級執行役員グループCFOの杉山賢氏が登壇し、マネジメント・バイアウト(MBO)実施の背景と今後のグループ経営方針、新規事業やサービス拡充の詳細を発表した。同社は中小企業の経営課題を解決するため、これまで展開してきた売上拡大・コスト最適化領域に加え、金融領域を強化し、3領域を一体で提供する「中小企業の課題解決プラットフォーム」を構築する。

(左から)グループCRO兼ノバセル株式会社代表取締役社長田部氏、グループCEO永見世央氏、ラクスルバンク株式会社代表取締役CEO兼ラクスル株式会社上級執行役員グループCFO杉山氏

売上拡大・コスト最適化・資金支援の3領域を統合

ラクスルは、日本企業の多くを占める中小企業が人手不足や物価上昇、デジタル化の進展といった急激な環境変化に直面している現状を受け、個別の業務支援に留まらない経営全体のサポート体制を敷く。約48万社の顧客基盤を背景に、売上拡大・コスト最適化・資金支援といった3領域を企業の成長フェーズに応じて連携させる。

  • 売上拡大:印刷・広告サービスに加え、ホームページ制作や営業BPO、AI活用サービスを通じて新規顧客の獲得や販路拡大を支援する。
  • コスト最適化:印刷ECや購買EC、梱包資材、オフィス用品などの提供を通じて調達コストの低減と業務効率化を推進する。
  • 資金支援:金融領域を新たな柱に据える。銀行サービスや、成長投資を支える金融サービスを拡充し、企業の資金基盤を支援。

MBOによる中長期視点での投資体制を確立

同社は2025年にMBOを発表し、2026年5月に非上場化した。今回の経営判断は、短期的な業績変動に左右されることなく、サービス間の連携や新規事業への継続的な投資を中長期的な視点で遂行することを目的としている。

同社が2026年2月に実施した「中小企業の経営課題に関する実態調査」では、89.6%の企業が営業活動の仕組み化に課題を抱え、58.3%が資金繰りに不安を感じていることが判明した。こうした複合的な課題に対し、同社は事業・サービスを横断的に機能させることで、中小企業にとって不可欠な「経営インフラ」としての価値を創出する。

MBO実施の背景や今後のグループ方針について語る永見氏

中小企業を支援するサービス「ラクスルホームページ」「営業BPO」「ラクスルバンク」を拡充

同社は、印刷・集客事業を通じて蓄積した取引データと顧客網を強みに、独自の事業基盤を強化する。戦略の具体策として、「ラクスルホームページ」「ラクスルバンク」「営業BPO」といった3つのサービス拡充を公表。これらのサービスを一つのプラットフォームとしてつなぎ、中小企業の持続的な成長を支援する体制を強固なものにする。

中小企業向けホームページ・ランディングページ(LP)関連サービス
「ラクスルホームページ」

同社は、ホームページ作成サービス「ペライチ」を「ラクスルホームページ」に加え、自分で簡単に作成できる「DIY」、AIで効率よく制作する「AIサポート」、制作から運用までを外部に委託する「制作代行(丸投げ)」の3つの提供形態を新たにをラインアップした。

同サービスは、オフラインとオンラインをシームレスにつなぐ販促・集客支援サービスとして提供価値を高める。同社が推進する「売上拡大」「コスト最適化」「資金支援」を一体で提供する中小企業の課題解決プラットフォームにおいて、売上拡大領域の機能をさらに強化する。

同社が2026年6月に実施した「中小企業におけるホームページに関する実態調査」では、従業員2〜100名の企業の85.9%がホームページを保有する一方で、39.7%が効果を実感できず、50.0%が更新できていない実態が明らかになった。さらに、66.8%が「制作から集客まで1社にまとめて任せたい」、60.9%が「印刷と同じ会社に依頼できるとメリットがある」と回答している。

8月1日からプロによる制作代行と月額制集客支援を開始

「運用までを丸投げしたい」というニーズに応えるため、8月1日から新たなサービスの提供を開始する。AIが自動生成したページをプロのデザイナーが仕上げる高品質なページ制作と、月額5,500円から依頼できる集客・販促支援サービスをラインアップに加える。

製作例

ラクスルホームページサービスサイトURL:https://hp.raksul.com/purchased?utm_source=pr

中小企業向け金融プラットフォーム「ラクスルバンク」

ラクスルの100%出資子会社であるラクスルバンク株式会社は、中小企業の資金調達・決済・請求管理を一体で支援する金融プラットフォーム「ラクスルバンク」を通じて、「融資」「法人カード」「請求書発行」の3サービスを順次提供する。同サービス群により、中小企業の資金繰り改善とバックオフィス業務の効率化を後押しし、経営者が本業に集中できる環境を構築する。

中小企業の経営において、資金繰りやバックオフィス業務の手間とコストは本業を妨げる大きな要因となっている。同社が実施した「中小企業の金融課題調査」では、年商1億円未満の企業の56.1%が法人カードを保有していないか使用しておらず、76.9%が請求書業務を紙やExcelで対応している実態が明らかになった。

また、資金調達の必要性を感じる企業の61.1%が、融資の実行遅れによって大型取引や設備投資などの重要な事業機会を逃した経験を持つ。同社は、これらの「融資」「経費精算」「請求管理」といった課題をワンストップで解決し、中小企業が本業に集中できる環境を構築するため、今回新たに3サービスの提供に向けて検討を開始する。

  • オンラインで完結する新たな資金調達の選択肢として、売掛金(前払い)および買掛金(後払い)の双方に対応した柔軟な商品を企画検討する。従来の対面手続きや多量な書類提出を不要とし、機動的な事業投資を支援する。
  • 三井住友トラストクラブと提携し、「ラクスル ダイナース コーポレートカード」を提供する。最長約3ヶ月後(最長87日)の支払いを採用することで、キャッシュフローの安定化を図る。
  • 請求書の作成から送付、入金データの自動照合、売掛金管理までを一元化する。月額料金を抑え、ポイント還元の仕組みを導入することで、実質負担なしでのクラウド化を実現し、経理業務の工数削減と売掛金のリアルタイムな可視化を可能にする。

ラクスルバンク サービスサイトURL:https://raksulbank.com/

AIと実務代行を組み合わせた「営業BPO」

ラクスルは、印刷事業で確立した「テクノロジー×人」のビジネスモデルを中小企業の経営支援に展開し、AIと実務代行を組み合わせた営業BPOサービスを提供する。同社はSaaSツールの提供に留まらず、営業や集客、Web運用などの実行フェーズまでを丸ごと請け負うことで、中小企業の売上創出を支える経営インフラの構築を目指す。

ラクスルは、印刷業界においてテクノロジーで多重下請け構造を改革し、現場の生産性向上や品質管理には人が深く介在する手法で業界を変えてきた。この知見を中小企業の経営課題解決に応用する。同社の調査では、中小企業の89.6%が「営業を仕組み化できていない」と回答し、85.0%が「社外の専門相談相手が十分にいない」と感じている。これらの課題に対し、同社はアポイント代行とSaaSを組み合わせたソリューションを提供し、企業の営業基盤を強化する。

AI時代の到来により、従来の労働集約型だったBPOは、AIが制作・コール・運用の大部分を担うスケール可能な事業構造へと変化した。ラクスルはこの変化を捉え、ソフトウェアを提供するSaaSから、実行までを供与するBPaaS(Business Process as a Service、実行ごと提供)へと支援の形を転換する。

中小企業においてはITツールを導入しても使いこなせる人材が不足している現実があるため、同社はツールの提供で終わるのではなく、成果に直結する実行代行までを担う。AIの成果を中小企業に届ける最短ルートとして、営業領域における実務支援の価値を最大化する。

同サービスは、成果報酬型や少量発注が可能な仕組みを採用しており、企業の状況に応じたフレキシブルな利用ができる。導入事例として、AI SaaSを展開する企業ではローンチ直後で営業担当者の雇用前であったが、同サービスにより毎月一定量のアポイントを獲得した。リスクを抑えた成果報酬型により、少ない数から開始して徐々に稼働を増やす運用を実現している。また、新規営業の経験がなかった革製品製造企業では、ラクスルのBPOに月3件の少量発注から開始した。アポイントから受注に至る流れを可視化したことで、自社でのテレポア営業実施の検討に繋げるなど、具体的な成果を確認している。

3年後に目指す姿:中小企業の「経営インフラ」へ

ラクスルは今回の戦略発表で3年後の目標数値も掲げた。顧客基盤を現在の約48万社から100万社まで拡大し、流通総額(GMV)は1,500億円を目指す。また、HP・広告・印刷といった複数サービスをクロスで利用する顧客比率を50%以上、金融サービスの利用顧客数を50万社とする目標を設定した。金融・販促・調達をシームレスに繋ぐことで、1,500億円規模の経済圏構築を目指す方針だ。

同社がこうした構想を描けるのは、48万社との取引を通じて蓄積してきた購買データという独自資産があるからだという。銀行は商流を持たず、SaaS企業は金融機能を持たない中、ラクスルはこの購買データを起点に「金融」「集客・HP構築」「営業BPO」を一つの循環として繋ぐことができる。生まれた利益を再び販促へ再投資し、中小企業の売上向上に還元するというサイクルを描く。

「RAKSUL ID」を軸に、BtoBで前例のない経済圏を構築

同社が見据える将来像の中核にあるのが、単一IDで全事業を横断利用できる「RAKSUL ID」構想だ。BtoC領域ではPayPayやAmazon、楽天などがすでにID一つでEC・金融・保険・通信を繋ぐ経済圏を実現しているが、BtoB領域でこうした仕組みに本格的に取り組む企業はまだ存在しないという。ラクスルはこの未開拓領域に挑む。「RAKSUL ID」はひとつで、総務・購買・経理財務・マーケティング・営業といった企業活動のあらゆる機能に接続できる環境を目指す。今後は情報システムや税務法務、人事労務といった領域への展開も検討していくという。

同社は印刷だけにとどまらず、中小企業の経営そのものに変革をもたらす「経営インフラ」としての立ち位置を目指していく。

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