【インタビュー】ジャグラ 原田大輔会長 新会長に聞く―会員企業が“儲かる”組織~真のグラフィックサービス業に
6月20日、一般社団法人日本グラフィックサービス工業会(ジャグラ)の第61回定時総会で、第23代会長に原田大輔氏が就任した。副会長として岡本泰前会長を支えながら、「ジャグラコンパクトDX」の推進に深く関わってきた原田氏が、ジャグラの舵取り役を担う。就任にあたっての抱負と方針、ジャグラの未来について、原田会長に語って頂いた。
重圧と自問自答の末に
会長への就任が決まった時、相当な緊張感と重圧を感じました。一歩間違えれば、ジャグラを誤った方向に導いてしまうかもしれないという責任の重さ。身の引き締まる思いとはまさにこのことです。
私は大学卒業後に広告代理店に勤め、その後、電子決済代行業として独立して起業しました。そこからインターネット経由での名刺印刷に参入し、この業界に足を踏み入れました。いわば、外から印刷の世界に入ってきた人間です。
岡本前会長から「次を任せたい」というお話を頂いた時は本当に自分でよいのか、皆さんに納得していただけるのか、自問自答を繰り返しました。東京グラフィックサービス工業会の中村盟会長からは、「あまり印刷業の出身ではないとおっしゃらない方がよい。立派なグラフィックサービス業ではないですか」と大いに励まされました。しかし、印刷業として長年ジャグラとともに歩んできた先輩会員と比べると、会長としての適性があるのかという思いは拭えませんでした。
一方でそうした経歴が、むしろこれからのジャグラに求められているのではないかとも感じています。私という人間が会のトップを務めることへの期待があるとすれば、ジャグラという組織が持つ寛容さの表れであり、絶えず変わろうとする革新的な精神が求めたものだとも考えられます。だからこそ、私という人間がどういう考えを持ち、皆さんとジャグラをどう進めていきたいのか、自分自身を知っていただけるよう、会員の方々と対話していくことが最も大事なことだと思っています。
この4年間で、ジャグラは大きく変わりました。事務局体制や財政を含めた会の運営基盤が、岡本前会長のもとで整備されました。目立たない部分かもしれませんが、地固めとしての意味は非常に大きかった。
岡本前会長が目指していたのは、誰が会長であっても基本的な運営ができる仕組みづくりでした。そのベースがしっかりと出来上がったうえで新体制がスタートできるのは大変ありがたいことです。その土台の上に立ちながら、時代に合わせた改良・改善を重ね、会員企業にとってより価値ある組織へとジャグラを発展させていく責任を担っていると認識しています。
会長としての抱負を一言で申し上げるならば、「会員企業が儲かるようにしたい」ということに尽きます。ジャグラに入っていれば儲かる。そういう組織にしていきたいのです。これまでもジャグラはそうした啓蒙活動を行ってきました。これからはより実践的な施策を講じていきたいと思っています。その環境を、今期は全力で整えていきます。
会員企業が元気であるということは、儲かっているということです。儲かり、元気のある会員がどんどん増えていく。そういうジャグラであってほしい。そのためにできることは全部やりたいという気持ちです。
コンパクトDXを継続
岡本体制の4年間に取り組んだジャグラコンパクトDXでは生産性向上委員会、MIS研究委員会、地域活性化委員会、業態進化委員会の4委員会で、会員企業のDXを支援してきました。私も副会長として深く関わり、反省すべき点は多々ありますが、方向性として一つの旗印を打ち立てることはできたと思います。
ジャグラコンパクトDXは岡本体制の4年間で終了する事業ではなく、報告書を提出して完了し、次の新しい事業へと移行するという性質のものでもありません。事業に関わってきた委員は「システムができたから終わりではない。これからどう使い、どう改良していくかが本番」という意識で取り組みました。ですから、委員会を閉じるわけにはいきません。今期は二つの委員会を継続します。
ジャグラコンパクトDXが目指す「創注」や「業態進化」に挑戦していくためには、まず自社の本業がしっかりと回っていなければなりません。チャレンジするための投資ができるのは、本業で利益を生み出すからです。生産性の向上や単品損益管理も十分な仕事量があってこそ機能するものです。まず仕事の獲得ありきで本業を盤石にする。その先に創注や業態進化への挑戦が見えてくるというのが、私のイメージです。
私自身の経験からも申し上げられることですが、たとえばコールセンター機能だけを売りにいっても、その単体では売れません。おおもとのサービスがあって、その一つの機能としてコールセンターがある。印刷も同様です。「印刷いりませんか」と声をかけるだけで仕事は獲れません。お客様のウィークポイントを探し、「この方々にはこういうものが必要だ」という提案ができてはじめて、仕事につながるのです。本業を軸にしながら、お客様のニーズに寄り添った提案が求められていると思います。
仲間を増やしジャグラ経済圏
定時総会の就任挨拶で、私は重点施策に「会員増強」を掲げました。その理由を少し詳しくお話しします。
ゴールを申し上げると、仲間をたくさんつくり、自分たちの経済圏を形成することが目標です。たとえば東京グラフィックサービス工業会では、会員同士が横に仕事を回す文化があります。「こういう仕事があるんだけどできる?」と電話一本で気軽に相談できる関係です。そういう仲間がジャグラの全国ネットワークの中にいれば、東京で受けた仕事を納品先に近い地域で生産するといった適地生産も可能になります。その逆も然りです。全国にネットワークがあってこそ、実現できることです。
さらに「グラフィックサービス業」というくくりは、印刷業だけを指すものではありません。デザイナーやカメラマンもいれば、様々な業種の方々がいて、それぞれが異なる受注窓口を持っています。グラフィックサービス業という領域で、受注できるチャネルを増やしていくことが、ビジネスの拡大につながります。互いの強みを活かし合えるネットワークをつくっていく。それがジャグラ経済圏の本質だと考えています。
ビジネスを活性化させるためには会員を増やし、交流を深めることが最も有効です。具体策はこれから会員の皆さんとともに考えていきたいと思っていますが、まずは会員同士のコミュニケーションを活発にしていくことが出発点です。
この間、業界では「真のグラフィックサービス業」という言葉が語られてきました。それは印刷にこだわらず、「印刷もできる」という業態を指しているのだと思います。そのことは業界ビジョン『ジャグラビジョン2010』にも、明確に示されています。ビジョンが策定された2006年、厳しいと言われながらも今よりも状況はよかった。デジタル化の影響で本格的に印刷需要が減り始めるのは2008年以降のことです。当時は「そういうものかな」という漠然とした未来として捉えていたものが、今まさに現実となっています。先人が示した「真のグラフィックサービス業」への転換が、本当に必要な時代になったのです。
仲間の協力を得ながら、お客様のニーズやお困りごとに対応し続けることによって、自分たちの引き出しが少しずつ広がります。やがてお客様から「あそこに相談すればなんとかしてくれる」と思われる存在になる。それが私たちの目指す姿です。そのためにも、グラフィックサービス業の定義や私たちのポジショニングをあらためて明確にしていく取り組みも進めていきたいと思っています。
ぜひ、会員一社一社から様々なご意見をいただきたいと思います。皆さんの声があってこそ、ジャグラはより良くなります。ジャグラは自分たちが欲するものを自分たちでつくるという文化を持っています。年に一度の全国大会が毎回温かく、もてなし感があふれるのも、開催地の皆さんが自分たちで考え、手をかけてつくり上げているからです。
儲かり、元気のある会員がどんどん増えていくジャグラ――それが私の描く未来像です。会員企業の発展があってこそ、従業員の幸せや地域への社会貢献につながります。「ジャグラから始めよう」という気概で、皆さんとともに歩んでいきたいと思っています。
原田大輔(はらだ・だいすけ)氏 1969年1月、福岡県大牟田市生まれ。大学卒業後に福岡市内の広告代理店に勤め、2001年に電子決済代行業として株式会社グッドクロスを立ち上げて独立。「成果物に関わるビジネスがしたい」というモノづくりへの強い思いから同年、「ビジネス名刺印刷所」を開設し、インターネット経由での名刺印刷の受注を開始した。現在は印刷事業、電子決済事業、コールセンター事業、Web事業を手掛ける。
▶ジャグラホームページは こちら
―出典:プリテックステージニュース 2026年7月15日号【暑中特集号】
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