印刷女子「夏の勉強会&交流会 in 東京」レポート:老「村田金箔」とエプソン販売の最新ショールーム「EPSONXaILab」を巡る 50名超の印刷女子が参加、業界の女性活躍推進へ着実な歩み
印刷業界の女性ネットワーキング団体「Girls Who Print Japan(GWPJ)」は、7月10日に「印刷女子 夏の勉強会&交流会 in 東京」を開催。午前の部では村田金箔の見学、午後の部ではエプソン販売株式会社のショールーム「EPSONXaILab(エプソンサイラボ)」で勉強会・交流会と、一日で合計50名以上が参加した。印刷会社の経営者や営業担当者、新卒社員、さらには就職活動中の大学生まで、印刷に関心を持つ幅広い層が一堂に会した。
印刷業界の女性ネットワーク
キーワードは「刷って、語って、つながって」
GWPJは2009年に米国で発足した世界最大級の印刷業界女性ネットワーク「Girls Who Print」の日本支部として、2025年に活動を開始した。交流会、勉強会、業界課題の研究会、情報発信などを柱に、「刷って、語って、つながって」の精神で活動を広げている。参加者は印刷会社、メーカー、メディア関係者、教育機関、学生など幅広い層から構成されており、現在のメルマガ会員数は約300名、イベント参加者の累計は延べ250名に上る。
創業161年の老舗が紡ぐ「光」の世界 村田金箔社を訪問
金箔に包まれた社内空間 参加者を迎える
午前の部では、東京・文京区に拠点を置く村田金箔株式会社の見学が行われた。社内のエレベーターは全面金箔で覆われ、随所に金色の加工が施された空間は、同社がこだわりをもつ「光る」を体現するものであった。
GWPJ事務局・セントラル印刷株式会社代表取締役の関野里美氏は冒頭の挨拶で、「村田金箔さんとは何十年来のお付き合いで、『光ることで印刷物の付加価値が高まる』と教えてくれました。社内にはいたるところに金の輝きがあり、その空間には独特のエネルギーを感じていて、今日はとてもわくわくしています」と語り、長年の敬意を示しながら参加者を歓迎した。
続いて村田金箔グループ会長の村田淳氏が同社の歩みや技術・サービスについて紹介した。創業161年の老舗である同社は、当初は金閣寺をはじめとする寺社仏閣向けの純金箔を主力としていたが、現在は蒸着製品を中心とした化学製品を扱う企業へと事業を転換。伝統技術を礎に、時代に応じた変化を続けている。
名刺への箔押し加工についても触れ、「インパクトがあるということは記憶に残る。営業の道具として有効だ」と実務的な観点からその価値を説いた。
紙にとどまらない箔の可能性 多彩なサンプルを展示
同社では印刷から箔押し、デザインの相談まで幅広く対応しており、扱う箔の種類も多岐にわたる。見学では実物サンプルを通じて、紙への加工にとどまらず布や置物など多様な素材への箔押しが可能であることが示され、参加者はその質感や加工精度を手に取りながら確認した。
毎年制作されるという箔押しのカレンダーのほか、食べられるホログラムの開発、チョコレートへの転写技術、オブラートへのホログラム加工、ホテルのスペシャルカクテルへの採用、七五三の千歳飴への応用など、食と印刷加工技術を融合させた取り組みも披露され、参加者の関心を集めた。
会場にはさらに、村田金箔が開発した家庭用箔押し専用箔「ウチハク」の体験コーナーも設けられた。2021年5月にクラウドファンディングで誕生した同製品は、自宅で手軽に箔押しが楽しめる文房具で、機械や電力を必要とせず子どもでも安全に扱える。体験ではペン先から糊が出る専用のグルーペンを使用し、参加者はそれぞれオリジナルの作品づくりを楽しんだ。
エプソン新宿ショールームで勉強会・交流会 最新技術と活発なディスカッション
EPSONXaILabにて 「体験型」の場で学びを深める
午後はエプソン販売のショールーム「EPSONXaILab(エプソンサイラボ)」で勉強会・交流会が行われた。同施設は1月14日にオープンし、実際の業務シーンを想定した課題解決のソリューション体験の場として設計されており、働く空間そのものが体験の場となるという独自のコンセプトを持つ。
冒頭ではGWPJ事務局からこれまでの活動が改めて振り返られ、「普段の業務ではなかなか知り合えない方との出会いがあった」「新しい気づきや考え方に触れることができた」「業界の未来について前向きにディスカッションできた」といった参加者の声も共有された。
360度没入型シアターを体験
「EPSONXaILab」は主に7つのエリアに分かれている。イベントや勉強会、トークショーなど多様な形式に対応する多目的ステージ、プリンターやオフィス機器を実際に稼働させクリエイティブな業務を効率的に進められるクリエイトブース、エプソンの技術や共創プロジェクトの実例を展示するアイデアフォールなど、それぞれ異なる体験が用意されている。
会場内で話題を呼んだ設備の一つが、紙源プロセッサー「PaperLab Q-40」と乾式オフィス製紙機「PaperLab Q-5000」。「PaperLab Q-40」で細断した使用済みの紙を、「PaperLab Q-5000」の水を使わない「ドライファイバーテクノロジー」によって繊維化し、新たな紙として再生する。紙面情報を抹消できるため情報漏洩リスクの軽減にもつながるほか、環境負荷の低減にも貢献する。小型サイズのため複数フロアや営業所ごとへの導入も可能で、実際にエプソン販売の社員名刺にもこの技術で再生された紙が使われている。
同じく注目を集めたのが、6台のプロジェクターを搭載した「イマーシブシアター」だ。360度湾曲型の没入型映像システムで、映像と音響が一体となった体験空間を形成する。見学では沖縄の海中映像、演者側の視点から撮影したライブ映像、大阪・道頓堀の川下り体験映像、ドローン撮影映像など多様なコンテンツが実演された。企業のブランディングや自治体の観光PR、不動産会社のプレゼンテーションなど幅広い用途への活用が説明されたほか、従来のモデルルーム制作と比較したコスト削減やリードタイム短縮の効果についても報告された。
「推し印刷アイテム」でワークショップ 発展可能性を議論
プログラムの締めくくりとして、参加者を7名程度のチームに分けたワークショップを実施した。事前に「印刷の魅力を体現していると思うアイテム、または私の推し印刷アイテム」を1点以上持参するよう呼びかけられており、参加者はそれぞれ持ち寄ったアイテムをチーム内で披露し合った。その後、各アイテムの発展可能性についてグループディスカッションを行い、印刷技術の応用や新たな価値創造について活発に意見を交わして、充実した一日を締めくくった。
GWPJ事務局インタビュー:
GWPJが描く未来 「1000人規模」と業界イメージの刷新へ

イベント終了後、GWPJ事務局にこれまでの活動と今後の展望を聞いた。
当初は参加者が少なくベテランが中心だったが、現在は若手女性の参加が増加しており、コミュニティは着実に成長しているという。今後の目標として、来年開催予定のIGASに向けた100名規模のイベント実現を掲げており、長期的には1000人規模のコミュニティへの成長を目指している。女性管理職の増加やキャリアを考える機会の創出、印刷業界のイメージアップ、人材確保への貢献も重要な目標として位置づけている。
関野氏は「女性誌や印刷の専門誌にとどまらず、一般の雑誌やニュースメディアにも取り上げられるような活動を通じて、印刷業界が女性でも働きやすく起業しやすい業界であることを広く伝えていきたい」と語った。
さらに印刷業界における女性活躍の意義についても言及し、「男性は製造を優先して考えがちだが、女性はものづくりだけでなくことづくりのアイデアが豊富だ。ことづくりの視点が印刷の可能性を広げるきっかけになる」と指摘した。顧客ニーズの多様化に伴いコミュニケーション能力や企画力がより重要になる中、女性の強みが発揮しやすい環境が整いつつあるとの見方も示した。
アンケートでは同業者同士でつながりたいという希望が多く寄せられており、GWPJはその需要に応える場としての役割を担っていると考えている。関野氏は「ネットワークはキャリアのステップアップにつながる。自分の働き方やその先を考えられる場にしていきたい」と語り、今後も異業種との連携を積極的に進め、印刷業界の枠を超えた広がりを目指す考えを示した。
同団体が最終的な目標として掲げるのは「男女問わず自分らしく働ける印刷業界の実現」だ。女性同士が本音で語り合い、互いの現場を見せ合えるこのコミュニティが生み出す連携は、業界全体の活性化に向けた確かな一歩となっている。
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