イニュニック 全自動糸かがりシステムSMYTH DX―E導入 デジタル印刷1冊から〝180度開く〟次世代のブックバインディング
東京都板橋区の株式会社イニュニック(山住貴志社長)は、2025年1月末にホリゾン・ジャパンからデジタル印刷に対応した全自動糸かがりシステムSMYTH DX―Eを導入し、本格的なサービスを開始した。POD(オンデマンド印刷機)と連動させることで、1冊からの糸かがり製本を可能とし、アートブックや写真集、企業のブランドブックなど高品質な小ロット製本ニーズへの対応を強化している。
SMYTH DX―Eは、デジタル印刷された枚葉紙を折り、糸で綴じる工程を自動化するシステム。従来の大量生産向けの糸かがり製本では対応が難しかった極少部数の案件にも柔軟に対応する。対象となる製品は、アートブックや卒園アルバム、学術研究書向けの丸背製本、写真集、180度フラットに開くことが求められる楽譜集、オリジナル10年手帳など多岐にわたる。
山住社長は「糸かがりによる製本の特徴は、しっかり180度開くことです。オンデマンド印刷機に対応したかがり機の導入によって、小部数のコデックス装・丸背上製本(丸背、角背)製本が出来るようになりました。数冊からでも、ノドまでしっかり開く本を作りたいというお客様の要望に応えていきたい」と語り、受注の拡大に手応えを見せている。
デジタル印刷×伝統の糸かがり製本で次世代のブックバインディング
デジタル化が加速し、印刷物の付加価値が問われる昨今、同社はあえて手間のかかる糸かがり製本の価値に着目した。オンデマンドによる少量生産により、高い堅牢性と「開きの良さ」を備えた本づくりを実現することで、顧客とともに新たな価値を創り出す「価値協創」の未来形を目指している。
同社の最大の強みは、高い技術力が求められる特殊製本を小ロットから柔軟に請け負う体制にある。特にノド元まで180度フラットに開くことができる「コデックス装」や、堅牢で重厚感のある「上製本」など、従来のオンデマンド印刷の枠を超えた付加価値の高い仕様にも対応する。作家やクリエイターが抱く「一冊へのこだわり」を形にする姿勢を重視しており、一冊単位の注文であっても妥協のない品質を維持する。
多様化する出版ニーズに対し、熟練の製本技術と柔軟なサービスを組み合わせることで、同社は小ロット特殊製本市場で独自の存在感を示している。
ホリゾン・ジャパンが販売する全自動糸かがりシステム「SMYTH DX―ED」は、デジタル印刷市場で存在感を高めている。同機は、デジタルプリントされた枚葉紙のフィーディングから折り、糸かがりまでを一気通貫で行う最新鋭の製本システムである。最大の特徴は、デジタル印刷機との親和性の高さだ。従来の糸かがり機はオフセット印刷による大量生産を主眼としていたが、DX―EDはセット替え時間を大幅に短縮し、一冊単位の極小ロットから中ロット生産で極めて高い生産性を発揮する。これにより、従来はコストや工期の面で困難だった少部数の糸かがり製本において、劇的なコスト低減と短納期化を実現した。
印刷業界では多品種少部数化が加速しており、他社との差別化を図る「高付加価値化」が喫緊の課題となっている。糸かがり製本は、本が180度フラットに開く「見開きの良さ」と、長期保存に耐えうる「堅牢性」を兼ね備えており、同社が受託する高級感のあるアートブックや写真集、実用性の高い手帳や楽譜集などの需要に合致する。
卒アルや企業ブランドの需要拡大、耐久性と広開性が支持
イニュニックが展開する小ロット糸かがり製本は、学校アルバムや企業のブランド本市場で大きな注目を集めている。特に、米国流のイヤーブック文化を持つアメリカンスクールの上製本アルバムや、幼稚園の卒園アルバムで、その需要が急速に高まっている。背景にあるのは、糸かがり製本ならではの「堅牢性」と「開きの良さ」に対する高い信頼である。
インターナショナル校では、卒業後も長く保管することを前提とした重厚な上製本が主流であり、長期保存に耐えうる強度と高級感を両立させる仕様が求められる。また、見開きで写真を大きく配置するデザインでも、180度フラットに開く糸かがり綴じは、中央のノド元まで見渡せるため極めて親和性が高い。
一方、幼稚園のアルバムでは、活発な子供たちが繰り返し手に取ってもページが脱落しない耐久性を持ち、多くが並製本でありながら、最新鋭の全自動糸かがり機を駆使し、従来は採算面から困難であった少部数の案件を高品質かつ適正コストで実現。これにより、小規模な園やクラス単位の注文であっても、一生ものの記念品として価値のあるアルバム本の提供が可能となっている。
ウクライナ写真記録集をコデックス装で意匠性と機能性が融合
イニュニックは、写真家・映像作家の多田海氏によるウクライナの記録集『Siren and Life ウクライナで綴る、戦争と日常』を制作した。同書のデザインは元NHKの高橋氏が担当。表紙をリソグラフで印刷し数種類のバリエーションを用意したほか、本文写真はリコーのPOD機で出力した。
製本は、同社が得意とする「コデックス装」を採用した。背が露出するこの様式は、糸かがり綴じの構造がそのまま意匠となり、クラフト感溢れる独創的な佇まいを生む。180度フラットに開く機能性は、見開き写真を損なうことなく見せる。素材の質感を活かした装丁は、ドキュメンタリー作品の世界観に深い質感を与えている。
山住社長は、デジタル技術と伝統的な製本技術の融合による差別化に自信を見せている。今後の戦略について「Web、オンデマンド印刷、製本を持ち、どう差別化するかを追求する」とした上で、特に小ロットの学術本市場に注目する。「本がしっかり開くことは、実用的な学術本や研究資料で極めて重要な機能です。オンデマンドによる少部数生産でも、本格的な糸かがり製本を提供することで、一般的なコピー製本や安価な糊付け製本とは一線を画す価値を提案したい」と語る。
社名「イニュニック(生命)」に込めた想いを最新鋭の糸かがり技術で形に
情報のデジタル化が進むからこそ、手に取った時の機能性と堅牢性を併せ持つ糸かがり本のニーズは、専門書や資料の分野で確実に存在し続ける。同社は、利便性の高いWebの窓口と高品質な小ロット製本を組み合わせ、独自の市場開拓を推進する構えだ。
社名のイニュニック(inuuniq)は、イヌイットの言葉で「生命」や「命」、「言葉は神なり、言霊なり。」を意味する。一冊の本を、単なる情報の束ではなく、形ある「命」のように大切に扱う同社の姿勢は、今回の全自動糸かがりシステムの導入によってさらに深化を遂げた。デジタル印刷の利便性と、伝統的な製本技術がもたらす高い堅牢性・機能性の融合は、本という媒体に新たな価値を与えている。
山住社長は「少部数であっても、作り手の想いが詰まった本を最高の形で残したい。特殊製本や冊子印刷の可能性を広げ、お客様のこだわりに応え続けることが私たちの使命です」と語り、一冊から始まる本づくりの未来に強い期待を寄せている。価値協創を掲げる同社の挑戦は、デジタル時代の出版文化で、確かな足跡を刻み続けている。
- 株式会社イニュニック
- 東京都板橋区中丸町31―3
- ℡03―5995―6608
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