NS印刷製本 A全判両面兼用機導入で製本・加工の利便性向上~ポストプレスは専門性をより高める

 印刷・製本・発送までの一貫体制で幅広い業務に対応するNS印刷製本株式会社は、今年2月、小森コーポレーションのA全判4色・両面兼用枚葉オフセット印刷機『リスロンA37P』に印刷機を更新した。印刷機能を強化することで、主力の製本・加工サービスの利便性を高め、ワンストップ体制に磨きをかける。  戦後まもない時期、余った紙の収集、配送業務から始まった同社は、紙の販売と合わせて断裁業にも取り組み、1962年に有限会社中村紙業として設立。その後、顧客の要望に応え、折り機、中綴じ機を導入し、大手印刷会社からの仕事を中心とした製本業務を請け負っていた。
 1977年には、一度に多くの運送業務を引き受けたことをきっかけに、梱包・運送部門のユニバーサルを設立。さらに約20年前にハマダのモノクロ両面軽オフセット印刷機を導入し、印刷部門へと事業を拡大した。

 現在は学校のテキスト類や、多彩な折りを施したパンフレット、カタログの中綴じ製本などを得意とし、小ロットから大ロット、印刷、製本、加工のどの工程からの注文でも引き受け可能な対応力を持つ。売上ベースでは、印刷会社からの製本の仕事が7割、専門学校などの印刷から加工までの仕事が3割ほどを占める。  
 同社では5年前に他社から印刷工場、人材を含めて菊全判4色機の事業を引き継ぎ、本格的に印刷事業を取り込んだ。同社の中村盟社長は、「当社の豊富な製本、加工技術を駆使し、製本会社としてのスキルを上げつつ、内製化した印刷設備を組み合わせることで提案力が強化されました。印刷から事業としても昔から引き受けていましたが、事業を承継して以降、その利益が向上しました」と、印刷部門拡充の効果を強調する。

中村盟社長(左)と中村睦専務
小森コーポレーションのA全判4色・両面兼用機

 印刷から製本・加工までワンストップで引き受ける外注先は顧客にとって利便性が高い。横持ち費用の削減や納期の短縮のほか、品質の面でも高い製本・加工技術にマッチした印刷が可能になる。  
 今回、設備更新した『リスロンA37P』はLED-UVを搭載。紙面が乾燥された状態で刷本が排出されるため、すぐに後加工に移せる。これにより、インキのセット時間が短縮され、納期の柔軟性が高まるほか、中間製品の滞留が削減される。表裏印刷も印刷後にすぐに反転して裏面を印刷することができる。
 今年4月にはオンデマンド印刷機も更新し、富士フイルムビジネスイノベーションの『Apeos Pro C810』を導入した。オンデマンド印刷機では100部からの自費出版など、小ロットの冊子ものを主に取り扱っている。ホームページを見て連絡してくる小口のエンドユーザーがほとんどで、個人からの受注が徐々に増加し、利益を上げているという。

 「印刷会社が製本・加工を内製化している中で、製本だけできますといってもあまりメリットを感じてもらえません。発注先の印刷会社が変れば、製本会社も変わる確率が高いので、印刷からワンストップでサービスを提供することで、お客様により利便性が感じてもらえます。同時に、製本・加工技術を高めて、専門性を持つことが重要だと考えています」(中村社長)

ミニ折り、アイレット綴じなど
特殊な加工に対応

 主力の製本・加工ではさらに専門性を高めている。折り加工のラインナップは、2つ折り、3つ折り、4つ折り、8つ折りをはじめ、巻き3つ折り、DM折り、観音折りなど、特殊な折加工に対応。能書きなどのミニ折りなども強化した。幅広い加工の需要に応えられるよう、穿孔機、角丸機、スジ押し、ミシンなどの加工機も取り揃え、A3判中綴じ+2穴、二丁製本などの専門業者ならではの加工メニューを持つ。

PURにも対応した無線綴じ機
更新したオンデマンド印刷機

 製本技術・品質管理を担当する中村睦専務は「最小で名刺サイズの半分まで折ることができるので、豆本などの折りも可能です。また、両観音折やジャバラ折り、新しい工法のかえる折りまで多彩な折りに対応しています。抜きや穴あけなどの手作業も含めた他の加工との組み合わせで、より利便性の高い製品に仕上げます。当社はお客様の要望に合わせて、設備と技術を組み合わせながら成長してきました」と同社の強みを語る。

 とくに中綴じ製本は同社の得意分野で、3ラインにより日産で最大18万部の生産能力を持つ。サイズはA6からA4までの通常サイズに限らず、B4、A3の大サイズにも対応する。中綴じ製本ラインにはドリルが装着され、穴あけ、綴じ、2つ折りまでワンパスで加工することができる。

 最近、需要が増えているのはアイレット綴じ。紙面のデザインに制限がかからないため、製本仕様に採用されるケースが増えている一方、都内でも対応できる製本会社が少なく、同社を頼る印刷会社は多い。

 無線綴じ製本は、ホリゾンの最新無線綴じ機『iCE BINDER BQ-480』を導入。PUR製本も提供する。

 同社を含む業界全体の課題として中村社長は、人材育成、人材不足を挙げ、「働き方改革というテーマが取りざたされる中、当社は多能工化を進め、折りから中綴じ、断裁機までを1人で扱える人材を育成することで属人化の解消に取り組んでいます」と述べる。

 以前は断裁、折り加工に長く従事する職人が多かったが、現在はその数が非常に減少している。人手不足の状況からみても、職人を1から育て上げるのは時間がかかる。「断裁の工程で、物理的な操作としてはボタンを押すだけと言っても、間違いをなくすためには当然知識と経験が必要です。1度で1,000枚ほどカットされ、間違えたら全て刷り直しです。中綴じなど各種加工に対応し、トラブルにも対処しなければなりません」。(中村睦専務取締役)

 今後はA全判機と同時に導入した小森コーポレーションの工程管理システム『KP-コネクト』の活用を見据える。中村社長は「3年計画で本社と工場をネットでつなぎ、工程の可視化やデータ連携に取り組みます」とデジタルトランスフォーメーションにも着手する。

<「NS印刷製本株式会社」概要>

NS印刷製本株式会社
東京都新宿区早稲田鶴巻町568
代表:中村 盟氏
TEL 03-3203-5421
http://ns-p.co.jp/

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