NACAMURA どんなアイデアも製本して付加価値を追求~おみくじ折りやECO*TOJIがヒット商品に

技術の集積と時代の変化に適応  

 株式会社NACAMURAは折り紙の断裁から始まり、1953年に創業した製本会社。墨田区内に本社と事業所を所有しており、特殊本の分野での需要と確かな地位を築いてきた。先代社長の中村健一氏の代ではDMや商標登録を所得したECO*TOJIの確立を行うなど、常に新しい挑戦を行っている。  

現在は三代目社長の中村洋平氏のもと、先代より受け継いだ技術の研鑽に専念をしていくと同時に、業務としてできる幅を広げること、IoT化の推進のため、新しい製本機械を積極的に導入し、時代の変化への対応をしていくことに焦点を置いている。

中村洋平社長(左)と中村文夫工場長

中村洋平社長は「NACAMURAは先代から積み重ねてきた知識や経験、お客様のアイデアを実現してきたことが会社の独自性に繋がった企業。他社では断られるような依頼も引き受けることができることが強みであると同時に、現在は時代が変わり、変化も起こっています。先代からの技術を大切にしていきながら、出来ることを増やして技術の発信を行っていきたい」と今後の会社の方針を述べた。

IoT化で得られるデータ活用で
信頼される企業へ

特殊加工を詰め込んだパンフレット

 NACAMURAでは現在、新しい製本設備を導入に力を入れている。21年には、おみくじを生産することができる糊付装置付ミニ平行ナイフユニットや、貼込入紙機を導入。糊加工の対応力を強化した。昨年は「Multi」折機を導入し、既設の「正栄機械」「HEIDELBERG」「Herzong+Heymann」折機に加えて、さらに対応できる紙種・厚み・サイズを拡大した。  断ち・抜き・折り・綴じ・貼りの複数の工程を組み合わせてユニークな製品を可能にするというNACAMURAの強みは、新しい技術の追求の積み重ねにより成り立っている。

一方で設備と工程が増えることは管理の難しさに繋がる。工程ごとに進捗や注意事項、予備数を連携しなければならないが、確認のために機械を停止すれば、それが原因で不良のリスクとなる。

対策として、設備のIoT化による管理能力の強化をテーマに、作業状況を確認することができるセンサーを設備に搭載するなど、作業全体を可視化する投資を今年より特に進めている。

センサーの導入によって、進捗確認のために作業を止める手間を省き、作業の工程を記録として残せるようになることで、用紙や加工方法による作業の難しさや不良率の減少など、次の仕事へ繋がるお客様へのフィードバックも可能になってくる。

不良を出しずらい仕組みづくりと同時に、紙の需要が減少している今、IoT化の推進により、共にアイデアの実現にチャレンジできるお客様との関係性強化を達成することを重視している。

時代に適応し自社のみではなく
業界全体で盛り上げていく

 近年デジタル化等の理由から紙の需要自体が減りつつあり、NACAMURAでも依頼の内容に変化が見られつつある。
A4の二つ折り等のどこでもできる仕事の依頼がほぼなくなっているが、変形サイズや複雑な折りを用いる仕事は増えており、かつてより付加価値の追求が求められている。

同社で商品登録も行っているECO*TOJIの需要にも変化が見られ、以前は教育現場等で使用するドリル等での需要があったが、コロナ禍の影響でドリルの需要自体が減ってしまった。
しかし、SDGs等の環境に配慮をした取り組みとして、CSRレポートや企業案内等の需要は増加傾向にある。

取引先も従来の印刷会社からの依頼の他、おみくじ用の設備を導入してからは、「おみくじそのものを作ることができる」として、企画会社やイベント会社といった新しい取引先から新たな需要が発生している。
中村社長は現状の需要が変化をしていくことに対して「紙の持つ良さを明確化し、デジタルにはない動きを大切にしていくことができれば、製本業界は十分盛り返すことが可能です」と語っている。

一方で、「自社のみで生き残っていくことは当然難しく、業界が一丸となって、規模を維持できるようにしないと、いざ需要が増えても製本できなくなってしまいます」とも語った。

ECO*TOJIの糊付けをはじめ特殊折丁もこなす「正栄機械」折機
二丁製本を得意とする「ミューラー・マルティニ」中綴機

同社のホームページでは、名前が付いていないものも含めて、多様な折り方があることを知ってもらいたいという想いから、多様な折り方の解説と百種類以上の折りのシミュレーションを公開をしている。
自社で持っている技術を占有せずに公開をすることで、製本業界全体を盛り上げていきたいということが狙いだ。

「同業者とコスト等で戦っていくのではなく、協力して対他媒体と戦っていく必要があります。自社のみではなく業界全体が盛り上がっていくことが今後の業界の発展には必要不可欠です」と中村社長は語った。
同社に限らず先代から高度な技術を受け継いだ会社は数多く存在しており、今後NACAMURAは、紙の可能性を追求していく会社としてできる領域を増やしていきながら、多くの同業者と共に高い技術をアピールして、製本業界全体を盛り上げていきたいとしている。

<『株式会社NACAMURA』概要>

株式会社NACAMURA
本社:東京都墨田区東駒形4-6-3
代表:中村洋平氏
TEL 03-3622-8832
〈本所事業所〉
東京都墨田区本所2-14-5
TEL 03-3623-6011
https://www.nacamura.co.jp/

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