東グラ三多摩支部 三鷹で「印刷業界のためのSNSマーケティング講座」開催 SNS×印刷会社のアセットで独自の価値創出を目指す
東京グラフィックサービス工業会(東グラ)三多摩支部は8月20日、東京都三鷹市のMusashino Valleyで「印刷業界のためのSNSマーケティング講座―紙の価値をマーケティングの力で広げる」を開催した。会場には三多摩支部員以外の参加者も含め約40名が集まった。特別講師に株式会社EMOLVA 代表取締役の榊󠄀原清一氏を迎え、SNSマーケティングと印刷会社の持つアセットを掛け合わせることの可能性を示すセミナーとなった。

地域の人や同業界の人にも広く役立つ情報を提供
開催挨拶に立った三多摩支部の川井伸夫支部長(株式会社文伸)は、「当初は東グラ会員向けのセミナーを企画していたが、地域の人や同業界の人の役に立つような内容にしたいと考え、無料のSNSセミナーを開催することとなった」と開催の経緯を語り、非会員の参加者向けに東グラの活動などを紹介した。
セミナーの前には、エンターテインメント事業を行っている株式会社櫻澤瀉(さくらおもだか)のCEOでスタンドアップコメディアンの櫻澤 啓氏が登壇し、スタンドアップコメディを披露。軽快なトークで参加者の笑いを誘い、和やかな雰囲気でセミナーが幕を開けた。
印刷を“使う”、SNSを“使う”
セミナーで榊󠄀原氏は、「紙かWebか」ではなく「紙もWebも」提案できる企業へ変革する重要性について講演した。冒頭、具体的な数値を用いて印刷業界の市場の現状を提示。印刷用紙需要が91年ピーク時から44%減、事業者数も21年間で62%減少していること、2025年だけで321社が市場退出したことなどを挙げ、縮小傾向を指摘した。一方で「情報を運ぶ紙(グラフィック用紙)」は減っているが「物を包む紙(板紙)」は横ばいであること、CDのジャケットや御朱印帳、映画の鑑賞特典など「モノであることに価値がある」印刷物は伸びていることを紹介した。
上記のデータを踏まえ、「印刷会社は、“印刷を目的にする会社”と“印刷を手段として次のビジネスに繋げる会社”に分かれている。印刷業を手段にできる会社がこの先残っていくと思う」と見解を述べ、「印刷会社に限らず、“業界・職種”ではなく“人”によって残るか残らないかが決まる。この考え方はSNS事業者である自社にも当てはまる」と述べた。
なお、マスメディアからインターネットへ、検索エンジンからSNSへ、さらにこの2〜3年でショート動画等により「調べなくても情報が自動的に入ってくる時代」に変化したと説明。これによりSNSを活用する企業としない企業の差が拡大していると語った。
さらに購買行動プロセスにおいて、SNSは最初の「認知」と最後の「拡散・シェア」の両端を担う点で唯一無二であり、一方で印刷物は主に中間(比較・検討)に強みを持つと持論を展開し、両者を掛け合わせる必要性を強調した。
プラットフォーム×施策×印刷会社のアセットで価値創出
次に榊󠄀原氏は、SNS業界の構造的課題を紹介した。インスタ・TikTok・YouTube・X等、SNSのプラットフォームは多数存在する。そこに公式アカウントの運用やインフルエンサーの起用、タレントの起用、ユーザーによる口コミ(UGC)等の“施策”を組み合わせると20以上のパターンがあり、これらをどのように組み合わせて活用するのかを決めるのがSNSマーケティングであると解説。さらに「宣伝動画の再生回数は多いものの実売に繋がらなかったケース」、反対に「宣伝動画の再生回数は少なかったものの実売に繋がったケース」を挙げ、「バズ」と「売上・集客」は必ずしも直結しないことを説明した。
榊󠄀原氏は「SNS運用の効果を得るには、当て込みではなく、各企業が“きちんと最適解を出して戦略を立てた上でSNSを運用する”という概念を持つことが大切」とし、自社に適したプラットフォームで、自社に適した施策を打つことの重要性を述べた。同氏の会社EMOLVAによるブランディング戦略について複数の事例を紹介しながら、「戦術ではなく戦略を描けるかどうかが重要だ」と強調した。
最後に、印刷会社が持つ現場知識、顧客との長年の関係性、地域の歴史等は「AIには代替できないアセット」であり、これをSNSと掛け合わせることで独自の価値を創出できると提案。「受けた仕事をこなすだけでなく、クライアントの本当のニーズを掘り起こす」ことが今後のビジネスモデルとして重要だとし、自社との協業も呼びかけて講演を締めくくった。

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