印刷博物館 世界のブックデザインが一堂に「世界のブックデザイン2024–25」内覧会・レセプション開催 

印刷博物館は12月12日、東京都文京区にある印刷博物館P&P ギャラリーで「世界のブックデザイン2024–25」展の内覧会およびレセプションを開催した。同展は、世界各国のブックデザインおよび造本技術の潮流を紹介する企画として毎年実施されており、今回は2025年12月13日から2026年3月22日まで開催される。

会場では、「世界で最も美しい本2025コンクール(BBDW)」の受賞図書をはじめ、日本の「第58回造本装幀コンクール」、ドイツ、カナダ、オランダ、中国、ポーランド、ポルトガルの各国コンクール受賞図書を含む約180点を展示。展示されているすべての書籍を実際に手に取って閲覧できる構成とし、各国のデザイン思想や造本技術の違いを体感できる内容となっている。今回の展示では、ポルトガルとポーランドの作品が初めて紹介されている。

内覧会で実際の本を手に取る来場者
展示の様子
館長の挨拶

京極夏彦館長が語る「本」という表現媒体

レセプション冒頭では、印刷博物館館長の京極夏彦氏が挨拶に立ち、「本は人類の宝である」と述べた。書籍は単なる情報伝達の手段ではなく、内容、装幀、造本、そのすべてが揃って初めて一つの表現になると強調した。

また、京極氏は「人類最大の発明は言葉であり、その言葉をテクノロジーとして有機的に展開するのが印刷」と指摘。電子書籍と紙の本はメディアの違いこそあれ、本質的には同じ存在であり、現代社会に溢れる多様な情報も書籍の延長線上にあると語った。
最後に展示を通じて、デザイン、印刷、出版に携わる人々が何かを持ち帰り、興味を広げてほしいと来館を呼びかけた。

京極氏

国際的視点から見る印刷書籍の価値

続いて、ゲーテ・インスティトゥート東京所長のメラニー・ボーノ氏がビデオメッセージで挨拶した。デジタル化の進展や読書習慣の変化、不透明な経済情勢など、出版業界が国際的に大きな課題に直面している現状に触れながら、こうした時代に展示が開催されること自体が、印刷された書籍が今なお強く重要な存在であることを示していると述べた。

その上で、本というメディアが持つ文化的意味を改めて感じられる機会であり、各国コンクールを通じて、書籍がデザイン作品としても価値ある存在であることを多くの人に伝えられる点に意義があると語った。

メラニー・ボーノ氏

活字文化と造本装幀の国際展開へ

乾杯の挨拶は、一般社団法人日本書籍出版協会専務理事の樋口清一氏が務めた。樋口氏は、日本書籍出版協会が日本印刷産業連合会と共催で造本装幀コンクールを主催していることに触れ、活字文化や出版文化のコンテンツは、造本装幀という表現を通じて初めて一つの作品として成立すると語った。
さらに、文化庁が発足した「活字文化グローバル展開協議会」の取り組みに言及。日本の優れた造本技術や出版文化を国際的に発信していく重要性を強調し、同協議会では、日本の出版物の海外展開を後押しする枠組みとして「CBX(カルチャー&ビジネストランスフォーメーション)」を掲げており、造本装幀の価値を世界に伝える契機となることへの期待を述べた。

樋口氏

世界のブックデザイン2024–25 開催概要

  • 会期 2025年12月13日(土)~2026年3月22日(日)
  • 休館日 毎週月曜日(1月12日、2月23日は開館)、12月27日~2026年1月4日、1月13日、2月24日
  • 開館時間 10:00~18:00
  • 入場料 無料 ※印刷博物館地下展示室は別途入場料が必要
  • 会場 印刷博物館(東京都文京区水道1丁目3番3号 TOPPAN小石川本社ビル)

▶「世界のブックデザイン2024–25」詳細はこちら

会期中は関連イベントも多数実施

会期中は展示に加え、造本やブックデザインへの理解を深める関連イベントも予定されている。オンラインとリアルの双方でトークショーやワークショップを展開し、作品の背景や技術、思想に触れる機会を提供する。

  • ONLINEトークショー
     「第58回造本装幀コンクール審査を振り返って」
     日時:2026年1月16日(金)18:30~20:00
     定員:300名(先着順、事前申込制)
  • 製本ワークショップ(初級)
     「文庫本サイズのメモを使って ハードカバーのノート作り」
     日時:2026年1月25日(日)10:30~12:00
  • 製本ワークショップ(中級)
     「文庫本をハードカバーに」
     日時:2026年1月25日(日)14:00~17:00
  • トークショー
     「第58回造本装幀コンクール受賞者〈受賞作〉を語る」
     日時:2026年2月28日(土)15:00~16:30
  • ONLINEトークショー
     「審査の現場から —〈世界で最も美しい本2025コンクール〉報告と解説」
     日時:2026年3月6日(金)18:15~19:30

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