総論①「推し活EXPO2026【夏】」から見る”自分だけのひとつ”

RX Japan合同会社が主催する「推し活EXPO【夏】」が6月24日から26日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。アニメ・キャラクターグッズやライブ用グッズ、スポーツ応援グッズからライセンス・版権ビジネスまでを網羅する同展示会には、小売店・雑貨店・エンターテイメント業界など幅広い来場者が訪れた。印刷・出力技術の観点から会場を取材すると、「その場で作る」「自分だけの一点物」「思い出を持ち帰る」という3つのキーワードが、出展各社のソリューションに通底していることが見えてきた。

エプソン販売株式会社のブースではA4・A3・モバイルの各プリンターを活用した推し活グッズ制作を提案した。スマートフォンの写真を使ってうちわ・ステッカー・カードなどを手軽に作れるアプリケーション「Epson Creative Print」の体験コーナーを設けた。会場には手軽・簡単・高画質を特長とする家庭向けコンパクトフォトプリンター「カラリオミー PF-71」なども展示され、パーソナルプリントの需要も取り込んでいた。

エプソン販売の推し活グッズ制作提案

また、株式会社yomiyomiが提供する「Live Memory Print(ライブメモリープリント)」も展示されていた。マイクに向かって推しへの愛を大声で叫び、音量が一定基準を超えると自動でカメラが起動して撮影が行われる仕組みで、撮影したデータはエプソン販売のコンパクトレシートプリンター「TM-m10」によりその場でプリントアウトされる。ライブの熱量をそのまま声にぶつけるという体験の楽しさはもちろん、叫び声が周囲への自然な呼び込みにもなる点も、イベント演出としての魅力といえる。

Live Memory Print
Live Memory Printで撮影された写真

株式会社アスカネットは、推し活を「カタチ」として残すフォトブック・フォトグッズ事業を前面に打ち出している。プロフォトグラファーからの評価が高い「MyBook」「ASUKABOOK」などのブランドを軸に、1冊からの高品質フォトブック製造と法人向けOEMの両軸で事業を展開してきた同社は、イベント限定グッズやファンクラブ特典、EC受注販売など推し活市場特有の多様な発注形態にも柔軟に対応できる。缶バッジ収納BOXや背景アルバム、patapataシリーズなど、昨今の推し活スタイルを反映した商品も多数取り揃えている。

なかでも、素材とレーザー加工を組み合わせた「スエードフレーム」と「スエードリボンバッグチャーム」に目を惹かれた。

「スエードフレーム」は全12色のスエード素材にレーザー加工を施したフォトフレームで、推しカラーに合わせた色選びができるうえ、好きな文字の刻印も可能。中身の写真やポストカードを差し替えられ、気分やシーンに応じて長く使い続けられる点も支持を集めそうだ。「スエードリボンバッグチャーム」は、推しカラーのスエードリボンとレーザー刻印の文字、好きな画像を組み合わせたフォトチャームで、ライブやイベントに持参する”持ち歩ける推し活グッズ”として提案された。画像・カラー・文字のすべてを自分で選べる構成は、パーソナライズ印刷の思想をグッズの領域へと押し広げたものといえる。

オンデマンド印刷で培ってきたノウハウが、こうした多品種・小ロットのパーソナライズプロダクト対応を支えている。

アスカネットの推し活グッズ
スエードフレームとスエードリボンバッグチャーム

キヤノンマーケティングジャパン株式会社は、イベント・施設向けのプリントサービスソリューションを展示した。

ブースではセルフ撮影・プリント体験を手軽に提供できるアプリ「セルフフォトプリント for PIXUS・SELPHY(PoC実施中)」を紹介した。フォトブースのような感覚で来場者が撮影からプリントまでを自ら完結できる直感的な操作性が特長となっている。オリジナルフレーム機能により季節イベントやキャンペーンに応じたデザイン変更が可能で、プリント待機中には任意の動画を再生してブランドメッセージや施設訴求にも活用できる。一般流通機器で構成できるため導入・設置のハードルが低い点も、中小規模のイベント主催者には訴求力がある。

また、ミニフォトプリンター「SELPHY CP1500」と連動するアプリ「ランダムプリント for SELPHY(PoC実施中)」も紹介された。STARTボタンをタップするとランダム演出が再生され、どの写真がプリントされるかわからないガチャ的な体験を提供する。ブラインドパッケージングのような事前在庫準備が不要なため、グッズ管理コストの削減にもつながる。

セルフフォトプリント
ランダムプリント

今回の推し活EXPOで感じたのは、推し活市場がパーソナライズ印刷にとって親和性の高いフィールドになりつつあるということだ。

従来の印刷ビジネスは、同じものを大量に刷るロットの経済が前提だった。しかし会場に並んだソリューションはほとんどが、小ロット、または「自分だけの一つ」を作り・体験できるものだった。これは受け取る側がただの「消費者」ではなく、制作プロセスに関与する「当事者」として位置づけられている。自分の写真、自分の推し、自分の世界観といったそれぞれの「好き」を印刷物や出力物に織り込むことで、モノは単なる商品を超えて「自分だけの証」へと昇華される。

デジタルコンテンツがいくらでも複製できる時代だからこそ、「一人ひとりに向けて刷られた一枚」は唯一性を持つ。推し活市場はその需要を鋭敏に映し出す場のひとつであり、印刷業界にとってパーソナライズの可能性を改めて感じさせる。

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