東洋美術印刷 カラー印刷+後加工のデジタルブックオンデマンドシステム、本当に欲しかった部数で、必要だったカラー印刷を提供

 『共感を生み出すクリエイティブカンパニー』を合言葉に、クリエイティブと印刷技術を融合させたコンテンツ製造サービスを展開している東洋美術印刷株式会社では、デジタル化による効率化・自動化に積極的に取り組んでいる。同社のグリーンプリンティング認定工場でもある埼玉工場では、連帳型インクジェットプリンターとスマートバインディングシステムによるデジタルブックオンデマンドシステムの生産現場が実現している。
同社・代表取締役社長の山本久喜氏と、取締役常務執行役員の山本國人氏、生産管理センター長の船津雄司氏に話を伺った。

山本社長(中央)をはさんで山本常務(左)と船津センター長
東洋美術印刷 埼玉工場のデジタル印刷のエリア
デジタルブックオンデマンドシステムの見本

在庫レス、スピード対応というニーズ

 東洋美術印刷の埼玉工場に連帳型インクジェットプリンター及びスマートバインディングシステムが導入されたのは2016年。これを機に同社では、カラーの無線綴じ・中綴じによる小ロット冊子印刷を実現する『デジタルブックオンデマンドシステム』の生産ラインが確立され、同年末から本格的にサービスがスタートした。

 デジタルブックオンデマンドシステムの生産ライン確立の背景には、書籍・冊子印刷の小ロット化という市場への対応や、ターゲットを絞ったカタログ・冊子印刷の生産の実現という戦略があった。実際、それ以降、カタログおよび冊子の小ロット化が進んだが、コロナ禍を契機に、その流れが加速。最近では、必要最低限の印刷しかつくらないという風潮へと変化しつつあるという。
 

 同社においては、受注の割合の高い保険会社をはじめとする金融系企業の約款も、激しい小ロット化の流れにある。『デジタルブックオンデマンドシステム』を構築した当初は、新たな提案として、それまで一般的だったA5サイズをA4サイズへ変更し、誰もが読みやすいユニバーサルデザインの採用とフルカラー化の提案を進めていた。しかし、コロナ禍により市場は一気に急変し、ペーパーレス化とデジタル化へのシフトが進んでいる。

一方で、ペーパーメディアとして必要とされている市場もある。しかし、こうした市場も、最近では余分に在庫をしない傾向にシフトしている。その結果、不足分が発生した時だけ発注がくるという傾向も顕著になってきており、年度末にはそうした需要が多く寄せられる。不足分への対応は、小ロット生産とスピード対応が求められる分野でもあるため、『デジタルブックオンデマンドシステム』が威力を発揮する。

印刷・製本のデジタルワークフロー

 『デジタルブックオンデマンドシステム』の生産ラインは、キヤノンの連帳インクジェットプリンター「ColorStream6700Chroma」と、後加工機はホリゾンのデジタル印刷向け書籍製本システム「SmartBindingSystem」と中綴じ製本システム「StitchLiner6000D」で構成されている。工場フロア内に連帳印刷機と製本機および検査装置がニアラインで配置され、無駄なく効率よく作業できる一貫生産体制が構築されている。
 その結果、本当に欲しかった部数、必要だったカラー印刷に応える最新のデジタル印刷製本システムの環境が実現。同社では、この生産ラインを「Color SolutionIntegrated(CSI)」として提案している。CSIは、高速輪転インクジェット印刷機と自動製本システムの組み合わせにより、小中ロットの冊子印刷を、より経済的により柔軟に実現。モノクロ冊子のカラー化や、在庫リスクの解消など、様々な情報伝達ニーズにも応え、柔軟な冊子作りで新たな付加価値が提供できる。
 特に同社の埼玉工場には、デジタル印刷のエリアとオフセット印刷のエリアが隣接している。そのためオフセット印刷とデジタル印刷を併用し、表紙:オフセット印刷/本文:CSIデジタル印刷機+製本:CSI無線綴じ製本、あるいは、印刷:オフセット印刷+製本:CSI中綴じ製本、という組み合わせでの生産も可能になる。

連帳シートに対応している自動製本システム。上はSmart BindingSystem

 デジタル印刷の強みである “必要な時に、必要な部数を、必要な情報で” を反映した小部数印刷やバリアブル印刷に対応できることから、世界に一つだけのDM、世界に一つだけのカタログづくりも可能になる。特に同社では、美術カタログ等、高い再現性や表現力が求められる印刷物づくりにも長年取り組んできた。そのため “美しい印刷” も得意としており、このノウハウを活かすことで、伝えること、表現することにもフォーカスした生産が行われている。
 なお同社では、JDF連携によるワークフローも構築。生産している冊子は1冊毎にユニークコードが付与され、管理されているので、印刷不良が発生した場合には該当する冊子のみ排出するなど無駄のない生産も行える。デジタル管理された生産ラインをフル活用することで様々なメリットが享受できる。今後もデジタルブックオンデマンドシステムを活かした印刷の提案を進め、無駄なく、必要な、それでいて訴求力の高い印刷物の配布を広めていきたいと展望している。

<『東洋美術印刷株式会社』概要>
本  社:東京都千代田区飯田橋4-6-2
TEL   :03-3265-9861
埼玉工場:埼玉県ふじみ野市大井武蔵野1367-2
https://www.toyobijutsu-prt.co.jp/

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