惠友印刷 インプレミアIS29で菊半裁の特色を内製化~存在価値を高める高品質・対応力

 惠友印刷株式会社は、1995年に東京飯田橋で創業。板橋に本社工場を構え、出版印刷を主力としている。板橋区は「絵本のまち板橋」を掲げており、同社も学術書や学習参考書、イタリア・ボローニャ関連の絵本など、教育系・アート系のコンテンツを多く手がけることで文化振興に寄与してきた。2022年8月にインプレミアIS29を導入し、デジタル印刷の大幅強化を図った。導入の背景や効果について、萬上孝平社長、常務取締役の大澤俊雄氏、板橋工場長の田村裕一氏、印刷課オペレーターの上森亮人氏にお聞きした。


代表取締役 萬上孝平氏「インプレミアIS29はオフセットの機長が驚くほどの印刷ができ、社内にインパクトを与えました」




◀「絵本のまち板橋」に貢献する同社のインプレミアIS29導入の注目度は高い。「工場見学のご要望が続いています。お客様にも、明るく前向きな話題を提供できました」(萬上社長)

約1カ月のジョブ分析で採算に乗ることが判明

 惠友印刷株式会社では、2013年にPODを導入し、運用してきた実績やノウハウを生かして、新たにインプレミアIS29を導入。すでに全体の2割弱を占める特色の仕事を同機に置き換えている。
 「オフセット印刷機は全て菊全機以上のため、菊半裁サイズの特色案件は長く外注しており、その必要性を感じる場面も多くありました。現在は、デジタル印刷機のハイエンド化、高品位化、量産体制強化が進み、オフセットの代替として耐えうるレベルになっています。そこでインプレミアIS29を導入し、菊半裁の特色ものを内製化する計画を立てました」

 同社では、1日の印刷ジョブの約2割が特色だった。検討段階で、KOMORIが約1カ月のジョブ分析を行い「ジョブをどの程度置き換えれば採算に乗るかの具体的な提案があったのも安心材料でした」と、萬上社長は話す。さらにインプレミアIS29は「色域が広くて、彩度の高さに優れており、オフセットで表現できなかった色調も表現できる点に未来を感じました。さらに、バージョニング印刷、バリアブル印刷などもデジタル印刷機ならではの武器でした」と語っている。

 材料や電力料の高騰が進み、価格転嫁を避けられない状況の中、損紙などのロスも少ない上に、印刷部数や用途によって、オフセット印刷機との最適な使い分けができるインプレミアIS29は、採算性にも優れている。

常務取締役 大澤俊雄氏
「インプレミアIS29を使い、孫と娘のために母子手帳を絵本として表現しました。このようなBtoCの活用も促進しています」
板橋工場長 田村裕一氏
「書籍印刷では、特にイン
デックスを刷り、丁合で切ったときに見当ずれが全くないのに驚きました。本当にすごいことです」
印刷課 オペレーター 上森亮人氏
「オフセット印刷の再版ものもK-カラーシミュレーター2で色合わせできます。保守や操作も短時間で可能なことが多く、助かります」

サンプルづくりで営業の提案力向上に貢献

 データさえあれば数枚からすぐに印刷できる特性を生かして、営業の提案にも変化が出てきている。「インプレミアIS29は、サンプルづくり、校正刷りに秀でています。商談時にサンプルを持っていくことで、案件を進化させていくことができています」と萬上社長は話す。

 田村工場長は、出版印刷の観点から「インプレミアIS29の、両面ワンパスで見当のズレが非常に少ないという特長は、書籍にとても向いています」。さらに、「色が安定していて、細部の表現が良いため、写真印刷では特に鮮明に感じます。同じデータを扱った場合、オフセット印刷機よりも調整が少なくて済みます」と手ごたえを語った。厚紙のジョブに対しても「従来は厚紙専用機でないと刷れず、外注していた厚紙の案件も内製化でき、重宝しています。0.6ミリまで刷れるのはありがたいです」。
 また、インプレミアIS29は絵本をつくりたいという個人の夢の実現にも一役買っている。「知人が制作した絵本を20冊つくり、その方の10年越しの夢を叶えることができました。デザイナーの中では、個人的に本をつくりたい需要が多くあり、今後は夢の実現に貢献していきたい」と、デジタル印刷の特性を十分に生かした活動へ向けた抱負を語った。

個人のオリジナル絵本の制作など、デジタル印刷の可能性を追求している。
美大生の卒業記念作品集を少部数で制作した。「A3サイズはPODでも印刷でき、よくありますが、B3サイズができるのはインプレミアIS29ならではなので、とても喜ばれました。このサイズは需要が高まるのではないかと期待しています」(田村工場長)

「81色チャート表」で
顧客の欲しい色がすぐに見つかる

 「使用される特色に近似したチャート表を出して、81色の中からお客様に指定してもらっています。お客様の欲しい色に近い色が見つけられ、特色ジョブを進める上で非常に良い機能です。初版をオフセットで印刷し、少部数・極小ロットの再刷をインプレミアIS29で刷るという提案も、お客様に受け入れられています」

 以前はオフセット印刷機の機長を務めていた、インプレミアIS29のオペレーターの上森氏は、「印刷前準備や切り替え作業などの大がかりな設定が必要なく、画面一つでできるため、作業の効率化が図れています。印刷機に重要な温度調整もインプレミアIS29がやってくれるので、朝から一日作業をしていても色の変化がなく、日にちが経っても劣化や色抜けもない。色の安定性が高いので、安心して仕事ができます」と評価した。

教育や文化という面で存在価値を高めていく

 今後、萬上社長は「本機の色域の広さを活用し、クリエーターに作品のイメージを膨らませてもらい、新しい本づくりを進めていきたい」と話す。BtoCビジネスの拡大も見据え、すでにオリジナルのシール絵本サイト「Petako」を開設している。
 戦略としては、デジタル印刷機の比重を徐々に高めていく計画だ。「絵本出版に関わる中で、コンテンツ・データを握る重要性を痛感しています。お客様の一番近い存在になることで、C S(顧客満足度)を高めていきたい。実力のある職人集団としてさらに成長するなど、根底の強化を基本戦略とし、奥付けに名前が載るような印刷会社を目指していきます」
 無印良品と共に、製作過程でできる「つかみほん」の販売会を開催するなど、SDGsにも取り組む同社。萬上社長は「当社は初等教育、中等教育、教育系のコンテンツを商ってきました。今後も、絵本制作などを通じて、教育や文化という面で存在価値を高めていきたいと思います」と語った。

惠友印刷株式会社
住所:東京都板橋区大原町46-2
https://www.keiyu-printing.jp/

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