イニュニック 本の物質的な価値を高める特殊印刷・加工、紙の特徴を引き出し、作品をドラマチックに

 株式会社イニュニックは出版・頁物印刷の分野で、特殊印刷、特殊加工を駆使した豊かな表現を提供している。美大の学生からは「イニュニックにいけば面白いものができる」と作品集や卒業論文集の制作が依頼されることが多い。同社の山住貴志社長が持つ豊富な用紙や印刷、加工の知識とアイデアが、素材、印刷機、加工機を通して形になる。顧客からはしばしば「山住さんが選んだ紙ならば間違いないからお任せします」と全幅の信頼が寄せられるという。同社にとって、大塚商会を通して導入したRICOH Pro C9210、同C7210S、同C7110Sは、様々なコンテンツがデジタル化される中、本という“物質”としての価値を生み出す欠かせないピースとなっている。

山住貴志社長

紙の常時在庫は300種

 同社は1991年、軽印刷業者として創業。当初は頁物や封筒、伝票を中心に同業者の下請け専門の業態で、軽オフセット印刷機、封筒印刷機の2台からのスタートだった。徐々に都庁や区役所の官需も増え、MacintoshやWindowsによるDTPを取り込みながら業容を拡大。都庁や区役所から受注するデータはオフィス用ソフトで作成されたものが多く、表作成ソフトで入稿されることもあったが、四苦八苦しながらデータハンドリングの技術を身に付けて行った。
 一方、軽オフの需要は2000年代に入ると年々減少。同社でもオフセット印刷のカラー化に取り組むなど試行錯誤したが、好転するまでには至らなかった。その頃、印刷ネット通販が助走期間から浮上し始め、業界構造が変わる入口に差し掛かっていた。同社の山住貴志社長は「従業員がWebページを作り始めて、いよいよネットの時代かなと感じていました。印刷ネット通販の動きを見ているとそれが確信に変わり、早くからネット受注による印刷サービスを開始しました」と、企業の舵を大きく切った。軽印刷を提供する印刷ネット通販サイトはまだなかったことと、Windowsでもオフィスソフトでも受け入れられるデータハンドリングのノウハウが基盤となり、山住社長の判断は当たった。

コデックス装
ホワイトトナーを使った帯(左)と表紙
RICOH Pro C9210

 印刷ネット通販を開始して3年後、山住社長は小ロット印刷需要の増加からオンデマンド印刷機を導入した。「あまり儲かるイメージがなく、気が乗りませんでしたが、小ロットでカラーという時代が間もなく来ると感じていました」。ところが予想外に短期間でオンデマンド印刷の需要が伸び、菊四裁4色機の仕事がオンデマンド印刷機へと流れ、急遽導入した菊半裁4色機も、オンデマンド印刷機の増設に伴って稼動率が低下。今ではカラーオンデマンド印刷機4台を備え、オフセット印刷はA全4色機中心に生産している。
 主力の出版・頁物印刷物は、アートブックや写真集などのグラフィック系の自費出版や同人誌が多い。少部数がほとんどだが、インターネットによる受注システムを基盤に全国から注文が入る。
 「スマートフォンの拡大で印刷物が縮小すると予測し、グラフィック系の出版物に舵を切りました。おかげさまで特殊な印刷、特殊な加工はイニュニックという認知が広がっています。コロナ禍でペーパーレス化や町の店舗、飲食店の閉店が進み、ますます思い入れがある印刷物しか残らない状況になると思います」
 山住社長の本への想いは強い。「本はコンテンツの力が問われる」という信念で、出版印刷物に従事してきたが、「最近は表紙や装丁が良くなければ手に取ってもらえない時代になりました。良い内容を伝えていくためには印刷と製本の力がより必要になってきています」と、物としての表現力にこだわるようになり、特殊印刷、特殊加工のノウハウを積み重ねていった。“面白い”表現ができるという評判がデザイナーを引き寄せ、「彼らから用紙それぞれの表現やトレンドを教えてもらっています」と相乗効果で同社の立ち位置を強固にしている。
 RICOH Proを導入したのは2012年。以来、初期型のRICOH Pro C901から現在のRICOH Pro 9210、同7210S、同7110Sまで機種を更新してきた。「お客様は自分のお金を握りしめて本を作ります」という自費出版はシビアな印刷品質や出来上がりが求められる。印刷機にも相応の機能が求められるが、RICOH Proは高い見当精度や印刷品質でその要求に応えてきた。

 「オンデマンド印刷の8割はリコー機で出力しています。アートブックや写真集はドラマチックに仕上がるように作品に合う用紙を選ぶので、この紙でなければ印刷できませんでは話になりません」
 同社では常時、300種類以上の用紙をストックしている。用紙によって色の出方や仕上がりが異なり、それぞれの特徴を活かした印刷が必要となる。オンデマンド印刷であればその場で出力し、デザイナーに確認してもらうこともできる。グラフィック系の出版物で多用される上質系やファンシー系の用紙は濃度ムラが出やすいが、RICOH Proはそうした用紙にも対応しており、「バランスが取れた機械」と評価している。

特殊トナーでプレミアム感
 同社に並ぶ製本機をはじめとするクリースやフォイル、中ミシン綴じなどの加工機は様々な表現を形にしていく。これらの加工機は例えば、糸綴じの背がそのまま見えるコデックス装や、表紙が本文よりも一回り大きいチリ付き製本など、変わった形態の本を生み出す。山住社長は「これからはオンデマンド印刷+デジタルオンデマンド加工機がキーワードになってくると思います」と見ている。

 RICOH Pro C7200S、同C7110Sの特色トナーは主に表紙や帯に利用され、アイキャッチ効果を高める。同社では蛍光ピンク、蛍光イエロー、ホワイト、クリアを使用しており、ここに特殊な製本形態を加えることで一層、プレミアム感が増す。
 「書店で販売する本も、帯の文字をホワイトにしたいというニーズが結構あります。RICOH Proのホワイトトナーはこすっても落ちず、UVオフセット印刷で3回通しするぐらいの濃度が1回で出ます」
 山住社長は、こうした特殊印刷や特殊加工の認知度を高め、アイデアが出せる仕掛けを検討している。「クリエイターはDTPソフトを使って自分で作品を仕上げます。彼らに操作が簡単なオンデマンド加工機を使ってもらい、アイデアの発露にできるようなことができればと考えています」と、物としての価値をさらに追求する意向である。

RICOH Pro C7210S

株式会社イニュニック
住所:東京都板橋区中丸町31-3
https://inuuniq.co.jp/

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