朝日印刷工業 DiPS.A 消費者と触れ合う前橋まちなか店

朝日印刷工業  DiPS.A 消費者と触れ合う前橋まちなか店

街づくりと交流のコミュニケーションセンター

 群馬県前橋市の朝日印刷工業株式会社(石川靖社長)は、前橋市中央通りに「DiPS.A」(デジタル・プリントステーション朝日)「前橋まちなか店」を8月にオープンした。若手デザイナーのシェアオフィス、信用金庫の新規事業部、コーヒーショップが入るビルの1階に店舗を構えたDiPS.Aは、若者の間で沸き起こる“前橋まちづくり”再興のコミュニケーションセンター的役割が期待されている。

 朝日印刷工業は昭和24年創業、社員102人の綜合印刷会社。本社に隣接するデジタル・プリントステーションで「DiPS.A(デジタル・プリントステーション朝日)」、コミュニケーションハウス「ノイエス朝日」を運営。企画提案、制作、印刷、製本・加工まで一貫生産し、群馬県の文化を紹介する書籍や出版、自費出版等に強みを持つ。

 DiPS.A前橋まちなか店は消費者との接点を求めて今年新たに開設した。石川社長は「印刷の役割をさらに高めるためには消費者と触れ合う場が必要」と前橋まちなか店をコミュニケーションセンターとして位置付ける。

 DiPS.A事業は、店舗だけでなく、移動式店舗のスタイルの形式をとっている。2019年7月には群馬県立歴史博物館内のミュージアムでショップとしても運営を開始。ミュージアムショップでは、企画展に合わせた書籍類・グッズ販売のほかに「みやま文庫復刻POD」「地域文化復刊POD」を受注し地域に根差したショップとして評判を呼んでいる。

 DiPS.A前橋まちなか店は銀座通り、中央通りが交差する前橋の中心地にある。市街地エリアでは人口減、後継者難の影響を受けて衰退していた。しかし、地方創生や行政の再興施策をきっかけに前橋における中心地の街づくり再興事業への気運が高まってきた。

石川社長(右)と前橋まちなか店長の石川瞳氏

 石川靖社長は「以前は閑散としていた前橋の『まちなか』も人の流れが変わってきました。若い人が増え、新しい店も出てきました。いまウィズコロナ後の街づくりの拠点が求められています。DiPS.Aまちなか店のビルにはカフェ店舗、10数名のデザイナーのシェアハウス、2階には信用金庫の新規事業部が入りました。まちなか店で実現したいのは、例えば、コーヒーを飲みに来た人達が印刷物に興味を持ったり、印刷物の相談に来た人がコーヒーを飲んでいく。交流の中から印刷物を作りたいと思った人が同居しているデザイナーにデザインの依頼をしたり、起業したいなと思う人が同居している金融機関が相談に乗ってくれる。その延長線で印刷をお店に発注してくれる、というような循環型の経済を小さなこの場所で実現できないかということが何よりのテーマなのです。印刷をさらに身近にして街の再興、発展に役立てたい」と語る。

 まちなか店は石川社長の長女、石川瞳氏がまちなか店の店長を務める。石川瞳店長は入社8年、本社のDiPS.Aでカウンターワークや製造部門を経験。製造部門ではインクジェット印刷機Jet Press 750のオペレーションも行う。「ものづくりが大好き」という。

DiPS.A前橋まちなか店

デジタルと紙が融合して

活発なコミュニケーションを

 オープンから約2か月が経ち、石川店長は「本社のDiPS.AをB to Cが中心でしたが、印刷物を使っているお客様が何を求めているのだろうかということをより深く知りたいと思っていました。まちなか店では消費者と触れることが出来ます。オープンしてから驚くほど多くの出会いがありました。土曜日にはワークショップを開いていおり、リングノートを作るワークショップが好評です。また商店の方々が印刷を楽しむスペースとなってきており、新しく事業を始める方が訪問されます。ネット通販では判らない紙質を見本帳で確かめることが出来たと嬉しそうでした。対面でお客様と触れ合う機会は大切です。印刷物がどう使われるのか、その先の事が分かります。若者が紙に興味を持ってもらって紙にこだわるお客様と触れ合う機会を大切にしています。印刷会社は企業や官公庁のパンフレットやチラシをたくさん印刷するだけではありません。B to C向けのショップ運営をすることで一般の方や個人店からの少ない枚数の印刷に対応しています」と語る。

ノベルティや文具、布地印刷

 個人商店などで使われる少部数の印刷に対応するショップとしてハガキ印刷や写真プリント、メニューやショップカード、のぼり旗、オリジナルグッズといった商品まで幅広く扱う。オリジナルのノート、ユポ紙のノート、Tシャツプリント、布印刷を印刷するガーメットプリンター、リソグラフ、リング製本機、記念誌や自分史の見本を展示。『まちの印刷屋さん』として気軽にお茶をしながら“印刷や本の話しをしましょう”という店舗づくりになっている。

 ハガキの印刷や写真プリントといった身近な印刷物やメニューやショップカード、のぼり旗にオリジナルグッズなど商店で使う商品も扱っている。

 また活版印刷のこだわりの紙を使った紙製品を「tocotowa」のオリジナルブランドを紹介。ノート、マスキングテープをはじめとするセレクト雑貨・文具や数百種類の紙の販売、特殊紙を使ったオリジナルリングノート作りのワークショップを定期的に開催している。

 まちなか店近くには石川社長が発案した「本の家」が11月1日にオープンする。絵本と童話の専門店で、お母さんや子供を対象にしたワークショップの開催なども計画している。石川社長は「デジタルが進化する中でも印刷はその中心にあります。紙や様々な素材を組み合わせてまちなかのコミュニケーションに役立つことを目指したい」と今後の方向を語っている。

DiPS.A前橋まちなか店 群馬県前橋市千代田2-10-1

https://www.dips-a.jp

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