リコー 医師の文書作成負担を軽減 那須赤十字病院にGPUサーバ・LLM・生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」を提供し退院サマリー作成を効率化
リコーは、那須赤十字病院(栃木県大田原市)にオンプレミス環境で稼働するGPUサーバ、自社開発の大規模言語モデル(LLM)と生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify(ディファイ)」およびその他AI動作に必要なソフトウェア・サポートサービスを提供し、退院サマリー作成業務の効率化を支援している。医師の長時間労働が問題視される中、文書作成の負担軽減につながる取り組みとして注目される。
電子カルテと連携し、AIが下書きを自動生成
那須赤十字病院では、これまで医師が看護師の報告書やリハビリ記録など、入院中のさまざまな記録を参照しながら退院サマリーを作成していた。しかし、その作業は時間と労力を要し、大きな負担となっていた。
リコーは、オンプレミス環境に自社開発のLLMとDifyを導入し、病院の電子カルテと連携させることで、退院サマリーに必要な情報を要約し、ドラフトを自動生成する。医師はこのドラフトをもとに退院サマリーを作成できるため、業務の効率化と医療の質の両立が期待される。
高性能なLLMをオンプレミスで運用可能に
リコー製LLMは、700億パラメータという大規模モデルでありながら、省リソース設計によりオンプレミス環境での運用を実現。
患者情報などの機微なデータを扱う医療現場では、クラウド利用が制限されるケースも多い。こうした課題に対し、高性能なオンプレミス型AIは有力な選択肢となる。
市民開発による活用の広がりも
AI活用の定着に向け、リコーは病院職員向けにDifyの操作教育も実施。これにより、医療情報管理部門の事務職員が電子カルテと連携したアプリケーションを自ら構築し、現場の課題に即した改善を実現している。
那須赤十字病院 医療情報管理課 課長の宮内昭広氏は、「Difyの使い方を習得したことで、退院サマリー作成の業務改善が実現した。今後は外来サマリーへの展開も進めている」と述べている。
「使えるAI」で現場のDXを支援
リコーは1990年代からAI開発に着手。2015年以降は画像認識を活用した深層学習AIを、2020年からは自然言語処理を用いた業務支援AIを展開。2023年には独自のLLMを発表し、現在は日英中3言語対応のモデルをベースに、業種業務に合わせたAIソリューションを提供している。
今後も「使える・使いこなせるAI」の提供を通じて、現場に即したデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する。