マイクロソフト/LinkedIn 仕事場で急激に増加しているAI活用・・・AIが働き方と労働市場をどのように変えるのかの最新レポート発表

マイクロソフトと LinkedIn は、日本を含む31カ国3万1,000人を対象とした調査およびLinkedInの利用動向などのデータを基に、AIが働き方や労働市場にどのような影響を与えているのかを明らかにするレポート「2024 Work Trend Index」を公開した。

それによると、従業員は職場でのAI活用を望んでおり、企業が準備するのを待とうとしない傾向にあることや、AIは従業員の目標設定を高め、キャリアの上限を打ち破る可能性を秘めていることなどが明らかとなった。

従業員は職場での AI 活用を望んでおり、企業が準備するのを待とうとはしない

現在、ナレッジワーカーの75%が仕事でAIを使用しており、その効果がすでに現れている。
ユーザーはAIが役立つこととして、時間の節約(90%)、最も重要な仕事への集中(85%)、より創造的になれる(84%)、より仕事を楽しむことができる(83%) を挙げている。
またほとんどのリーダーは、AIが不可欠であることに同意しているが、すぐにROIを示さなければならないというプレッシャーから、迅速に動くことが難しくなっている。

リーダーの79%は、競争力を維持するために自社へのAI導入が不可欠であることに同意しており、59%がAIの生産性向上の定量化に懸念を抱いている。

また経営層からの指導や許可が無いことから、従業員は自分たちでAIを使い始めている。AIユーザーの78%が、自分のAIツールを職場に持ち込んでいる(BYOAI)。
BYOAIを推進するもう 1つの要素は、仕事が従業員の能力を上回るスピードで増えていることにある。68%の人が仕事のペースや量に負担を感じ、46%の人が燃え尽き感に悩まされていると答えている。また、メールの過負荷状態も継続しており、メールの85%が15秒以内に読まれ、典型的なケースでは1通のメールを送信するごとに約4通のメールを読まなければならない。

AI は従業員の目標設定を高め、キャリアの上限を打ち破る

AI は労働市場にも影響を与え始めている。企業はすでにAI技術者の獲得に乗り出しており、AI技術者の採用は過去8年間で323%増加している。
現在、企業はChatGPTやCopilotのような生成AIツールを使用するスキル、つまりAI適性を持つ非技術系人材に目を向けている。

 ・リーダーの66%が 、
  AI スキルの無い人材は採用しないと回答。

 ・リーダーの71%が、
  AI スキルを持たない経験豊富な候補者よりも、
  AI スキルを持つ経験の浅い候補者を採用したいと回答。

 ・若年の求職者は 新たな強みを手にするかもしれない。
  リーダーの77%が、AIによって
  若い人材により大きな責任を与えられるようになると回答。

AI パワーユーザーの台頭と彼らが明らかにする未来

今回の調査により、AIをほとんど利用しない懐疑的なユーザー、AIを幅広く利用するパワーユーザー、その中間である初心者と中級者という4タイプのAIユーザーの存在が明らかになった。

パワーユーザーとは、AIを使い慣れている、あるいは非常に使いこなしており、少なくとも週に数回は仕事でAIを使用し、1日に30分以上の時間を節約しているユーザーのこと。
このパワーユーザーは、AIを活用することで、膨大な仕事量を管理しやすくなり(92%)、創造性が高まり(92%)、最も重要な仕事に集中できるようになり(93%)、モチベーションが上がり(91%)、仕事が楽しくなった(91%) と回答している。

またパワーユーザーは、仕事のやり方を根本的に変えている。彼らがAIを利用するのは、会議を欠席した際の遅れを取り戻すため(+56%)、情報を分析するため(+51%)、ビジュアルコンテンツをデザインするため(+49%)、顧客と対話するため(+49%)、ブレーンストーミングや問題解決のため(+37%)など。
すでに個人の作業の枠を超え、AIを活用してビジネスプロセスやワークフローを再設計するケースも66%多くなっている。

Copilot に関する調査:AI はどのように労働時間を再編成しているのか

マイクロソフトが複数業種の60人のCopilotユーザーを対象に、6カ月間にわたるランダム化比較試験(RCT)を実施した結果、AIが職場の労働形態を根本的に変えたことが示された。
[メール] 全体として、Copilotのユーザーでは、個々のメールを読む回数が11%減り、メールのやり取りに費やす時間が4% 減少している。最も効果があったユーザーでは、メールを読む時間が25%から45%短縮した。

[会議) 会議に費やす時間が増えた企業もあれば、減った企業もある。一つの仮説は、AIが、情報の蓄積として、そして創作活動への近道として会議の価値を高め、ブレーンストーミングから容易に文書の初稿が得られるようになったというもの。効率性が高まったことで会議の回数が減る企業もあれば、価値が上がったことで会議の回数が増える企業もあるということ。AIの能力が進歩するにつれ、研究者はこの効果が続くと予想している。つまり会議の時間を短縮できるとともに、会議の価値を高めることができる。

[文書> 全体として、Copilotのユーザーでは、Word、Excel、PowerPoint での文書編集量が 10% 増加している。最も大きな影響を受けた企業は、20%増加した。これは、人々が節約した時間を、情報の作成や消費といった価値の高い作業に再利用していることを示唆しているのかもしれない。

進むべき道

従業員のAIに対する熱意をビジネスの変革につなげることが、リーダーにとっての将来の機会となる。その方法は組織によって異なるが、一般的な始め方を紹介する。

① ビジネス上の課題を識別し、AIを適用する: あらゆる機能で効率化が可能だが、重要なのは、プロセスを選び、AI を適用すること。たとえばカスタマーサービスから始め、電話対応時間の改善にフォーカスするなど。

② トップダウンとボトムアップの両方のアプローチ:実験から変革に至るには、CEOから若手の従業員に至るまで、組織のあらゆるレベルでの関与が必要。AIでチームを活性化させるために、ビジネスラインのリーダーを参加させることが、ビジネス上の利益につながる。

③ 研修の重視: AIのパワーユーザーは、独学で学んでいるわけではない。一般的なタスクと、自分の役割や機能に合わせた使い方の両方について継続的なトレーニングを受けている。
*LinkedInの LinkedIn Learning はスキルアップに適しているほか、マイクロソフトのCopilot Scenario Library は特定の職務や機能のユースケースを提供している。

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