ゲッティイメージズ調査 アジアコミュニティの「家族」や「カップル」のビジュアルに根強い伝統的価値観、消費者の共感を⽣むビジュアル選択を

市場の分析データに基づいた、質の⾼い1億8,000万点以上のコンテンツを提供するストックフォトサイト「iStock」は、同サイトを運営するゲッティイメージズのビジュアル調査「VisualGPS」による市場のニーズやトレンドをもとに、世界中の契約クリエーターに対して撮影指導を⾏うことで、時代に合わせたコンテンツを提案している。

11⽉22 ⽇の「いい夫婦の⽇」は、夫婦やカップルが、お互いに感謝の気持ちを表現するきっかけになることを⽬指し制定された⽇本独⾃の記念⽇。ゲッティイメージズでは、この「いい夫婦の⽇」に合わせ、「家族」や「カップル」のビジュアル表現について、⽇本をはじめとしたアジアコミュニティに着⽬し、歴史や⽂化的な価値観を分析しながら考察している内容を発表している。
それによると、⽇本と同じように、韓国、中国、台湾、タイなどのアジア太平洋地域では共通して、⾼齢化、出⽣率の低下などの⼈⼝問題を抱えおり、少なからずこういった課題に影響を与えている一方で、アジア独⾃の歴史や⽂化も伺えるという。そうした背景を踏まえた上で、現代における多種多様な「家族」や「カップル」を企業やブランドの広告で表現する際のビジュアルコミュニケーションについて、iStock のビジュアル専⾨家が解説しているので紹介する。

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■⽇本、韓国、中国の伝統的な価値観と⼈⼝動態問題

アジアコミュニティの⼈々の「家族」や「カップル」のビジュアル表現を考える前に、まずは⽇本、韓国、中国の結婚に関する最近の考え⽅と、各国が抱える⼈⼝動態問題について理解していきましょう。

【⽇本】
 厚⽣労働省によると、出⽣率は2022年に1.26となり、過去最低を記録、7年連続の低下となりました。10代の若者は結婚をためらい、17歳から19歳のうち、「必ず結婚する」と考えているのは16.5%とわずかです。「結婚相⼿がいない」という割合も5割ほどになっています。家庭⽣活と相容れない企業⽂化、⼩さな⼦供に対する世間の寛容さの⽋如なども、多くの⽇本⼈カップルが結婚して家庭を持つことを躊躇する⼀因になっているようです。

【韓国】
 韓国は、2022年の合計特殊出⽣率が0.78と、⽇本の⽔準をさらに下回っています。個⼈が未婚を選択する「⾮婚化」が⽬⽴ち、企業は未婚の従業員に⼿当や有給休暇などの福利厚⽣を提供しているそうです。30代で配偶者がいない⼈の割合は42.5%と、過去10年間で著しく増加しています。⾼い住宅費、結婚観の変化、ワーク・ライフ・バランスへの懸念といった要因が、婚姻率の低下につながっています。
【中国】
 中国では、婚姻率が⼤幅に低下しており、2013年には年間約1,350万組だったカップルが、最新のデータでは約680万組にまで減少しています。若者の中には結婚をストレスの増⼤、家族の責任、経済的負担と結びつけて考えている⼈も少なくありません。経済的な課題、住宅費の⾼騰、男⼥の役割分担の変化が、未婚を選ぶ若者の増加につながっています。

1419593106,Koh Sze Kiat,iStock

■伝統的な結婚規範と現代の多様な価値観

 このように、⽇本、韓国、中国で婚姻率と出⽣率の低下が⼤きな課題になっています。⽇本をはじめとする東アジアでは、儒教的な結婚観が根強く残っており、結婚に対する多様な価値観を認めず、結果的に⼈⼝問題を悪化させているようです。伝統的な「⽀配的な男性」と「従順な⼥性」を象徴している事象もあり、例えば韓国では、結婚した⼥性は「チプサラム(Jip-saram)」(家の⼈)と呼ばれることがあります。⽇本語の「家内」や英語の「House wife」にも通じるところがありますが、さらに儒教の教えに深く根ざした伝統的な規範が、家族の役割分担を厳格なものにしていたり、結婚することなく⼦どもを持つことをタブー視したりといったことにつながっています。
 ⼀⽅、台湾では2019年に同性婚が合法化されました。台湾を筆頭に、多種多様な家族形態や、結婚のダイナミクスの変化を認める、よりインクルーシブな政策が必要とされているのではないでしょうか。

■iStockで⼈気の「家族」や「カップル」のビジュアル傾向

 まだまだ根強い伝統的な結婚や家族の価値観の影響で、企業やブランドの広告に使われる「家族」や「カップル」のビジュアルにも、偏りが⾒られています。iStockで⼈気の「家族」や「カップル」のビジュアルを分析すると、20代から30代の男⼥のカップルが多く、幼い⼦供を持つ「3⼈家族」が登場するものが好まれています。また⼥性は家庭内での妻や⺟親といった伝統的な役割に配役されること
が多く、男性は主にビジネスシーンでリーダーシップを発揮しているようなビジュアルが多いのが特徴です。
 LGBTQ+の⼈たちが「家族」や「カップル」として広告に登場するケースは限られていて、「レインボー」のシンボルやイラストで表現されることが多い傾向にあります。 

1409917358,Edwin Tan,iStock

 また、障害のある⼈が登場するケースも限られていて、「家族」や「カップル」の描写の中というよりも、⾞椅⼦を使⽤している⼈や介護を必要としている⼈、あるいは60歳以上の⼈が多い傾向にあります。
 これらの調査結果から、企業やブランドの広告で、アジアコミュニティの⼈々が登場するビジュアル傾向として、年齢、性別、性的指向、障害に基づく役割や固定観念が根強く堅持されていることが浮き彫りになりました。家族やカップルの描写においても、特定のパターンや理想が根強く残っており、役割分担や婚姻状況、家族構成に多様な表現が反映されていないようです。

■アジアコミュニティの⼈々の多様性を広告ビジュアルで表現するためには

 VisualGPSの調査結果によると、アジアコミュニティの消費者の8割が「企業の広告において、多様なライフスタイルや⽂化を反映したビジュアル」を求めています。特に、広告の中で「⾃分⾃⾝を反映したような姿」の描写があると、その企業やブランドを好む傾向があり、こちらも8割となっています。
 実際、この地域の⼈々は、主に、体型やジェンダー、年齢やライフスタイルなどの要素で差別を感じることがあるようです。⼤多数の⼈々が多様性を反映したビジュアル表現を⽀持しており、企業やブランドはこの地域の⼈々のこういった感情を前向きに捉えることが重要ではないでしょうか。

 ブランドやクリエイターは、積極的にステレオタイプに挑戦し、より多様性を踏まえたビジュアル表現をしていきましょう。カップルや家族を表現する際には、現代の「絆」や関係性に理解を持ち、多様な家族構成、独⾝者、友⼈同⼠のつながりなど、幅広い視点を持ったビジュアル描写を⼼がけましょう。
 その上で、LGBTQ+コミュニティの⼈々、性的指向や性⾃認、障害のある⼈、⼦どものいないカップル、シニアカップル、国籍の異なるカップルなど、さまざまな多様性を反映させましょう。企業やブランドが消費者との信頼を獲得することに貢献できると思います。

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「アジア太平洋コミュニティのためのインクルーシブなビジュアルストーリーテリングレポート」
 このガイドラインは、ゲッティイメージズが継続的に⾏っているビジュアル調査「VisualGPS」の調査結果に基づくもので、アジア太平洋地域(APAC)の広告におけるアジア系コミュニティのビジュアル表現の傾向や課題についてまとめている。
https://engage.gettyimages.com/asian-representation-toolkit#/en/asian-representation-toolkit

 またゲッティイメージズは、2020年2⽉より、世界的な市場調査会社であるMarketCast 社と提携し、26 カ国13⾔語で1万⼈以上の消費者と専⾨家を対象に調査を⾏い、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにした「VisualGPS」と呼ばれるガイドラインを作成している。VisualGPS の詳細情報は こちら から。

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