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ポストプレスブック2021:多田紙工 コロナ禍を変化のチャンスに繋ぐ

2021.8.10

社会に求められる技術で市場獲得へ

 

p20-1 多田社長

多田 信社長

「切る」「折る」「綴じる」の専門業者として、断裁機16台、折加工機49台、中綴じ機13台の設備力と技術力で、圧倒的な製本加工サービスを展開している株式会社多田紙工は、昨年、全国の印刷市場に大きな影響を及ぼした“コロナ禍”という時代のうねりに対し、従来型の需要はコロナ禍後も復元しないと考え、事業全体の見直しと新たな時代に向けた組織の再編を図る。それにより、24時間体制で短納期・小ロットへの対応を強みにしてきた入間郡三芳町のグループ会社「TAD三芳株式会社」を4月末で本社に統合。5月からは、さいたま市南区の本社工場へ生産設備も一極集中させ、大ロットから小ロット・多品種まで、柔軟にこなせるサービス体制を整える。
これまで、TAD三芳では、ロータリーフィーダーを使用する定期案件があったこともあり、24時間体制を基本に稼働していた。しかし、そうした定期刊行物そのものが市場の縮小の影響を受けて減少。一方で24時間体制の利便性から、TAD三芳の稼働に頼ってきた部分もあった。そこで、グループ会社を統合することで、お互いの重複している設備を再編。
それと同時に営業担当者の増加と、業務決定権の見直しなど事業の再構築を図る。「2社を統合することで、お互いの技術や設備の強みを生かし、より多様なニーズに対応できるようにしていきたいと思っています」と展望している。
実際、2社で分散化していた情報や、設備が一本化され、2つの拠点を行き来するコスト負担も減少するなどの効果が期待できるとしている。さらに今回の“コロナ禍”という大きなタイミングを、変化のきっかけとしてとらえ、社内の再編も進めていく。
業務推進における決定権の見直しとは、膨大な情報処理と関係する。これまで様々な加工内容の情報を日々の工程会議の開催にて調整することにより、全般的に緻密な管理を行っていた。今後は、これまでの各製品(断裁、平台折、中綴、折出等)の責任者が受注責任者となり、各工程の製造部門の管理者に対し製造指示を出す。
ボトムアップの合議制からトップダウン方式の採用により、スピーディーで筋肉質な組織を目指す。それにより、様々な業務の担当者は自らの意識を変えるきっかけになるのではないかと期待している。

社会に求められる加工が注目

 

p20-3 切る015172020年は、同社にとって、最大の市場であった商業印刷の市場が縮小したことが最大のインパクトとなった。この分野では、折り加工や中綴じ加工などが減少した。しかし一方で、返信用封筒も含めた封筒の折りなど、ロータリーフィーダーを使う受注は「なんとか持ちこたえてくれた分野です」という。
しかし縮小した断裁加工についても、全てのニーズが減ってしまったわけではないとも指摘する。印刷クライアントの中には、小売業のように集客することができずビジネスそのものが低迷した業種がある一方で、宅配などの受容で新たな市場を開拓したり、逆に利益を伸ばした企業も存在する。コロナ禍でも負けずにビジネスを展開してきた企業において、必要とされる印刷物も存在する。
危惧する点としては「コロナ禍で紙はそれほど必要ではないということがバレてしまったといえます」とも語る。これまで集客のために配布してきたチラシも、三密を避けるため、あるいは自粛のために配布できないために削減した。一方で来店客などのエンドユーザーは、必要なものであれば時間を見計らいながら来店し、情報はネットから獲得しているなど、来店客とのかかわり方が変わりつつある。
「これからは本当に印刷メディアが必要なものは何かということが線引きされるようになってくるのではないでしょうか。その時、本当に必要とされる紙メディアを提供できるのか、そのための加工技術を提供できる企業でいられるための組織の見直しが求められていると思います」と語っている。
そうした中で改めて注目されたのが、針金を使わない中綴じ機「エコ.プレスバインダー」や、小サイズの折り加工を可能にするミニ折り機である。
グラフィック社が発行している「デザインの引き出し」でも2回連続して掲載。2020年10月に発行された「デザインのひきだし41」では、付録にエコ.プレスバインダーで製本した冊子が同梱された。続けて、2021年2月に発行の「デザインのひきだし42」では、多田紙工が制作したおみくじが採用された。
このおみくじは、PODで印刷を行い、ミニ折機とユニットで紙を折り、最後に剥離糊付けまでしたもの。折り畳まれたおみくじは、多くの人にとって昔から馴染のあるスタイルだが、小さく折って、最後にのりづけするところまで出来る企業が少ないというのが実態だという。
掲載されたことで、一般企業からおみくじについての問い合わせもくるようになった。「おみくじは寺社仏閣に限ったものではないようです。イベントや店頭でも内容を変えることで利用できます」とのこと。「こうした取り組みが、大きなビジネスになるわけではありませんが、新規開拓の一助になればいいと思います」と語っている。

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「デザインの引き出し」でも紹介されたおみくじの見本

 

新しい多田紙工を目指す

 

コロナ禍で需要が低迷したことは、会社を変革するチャンスになったという多田社長。減少した紙メディアの市場については、コロナ禍後に復活するとは考えていない。これを機に、拡大していた規模を見直し、最適な生産の現場づくりを目指す。あわせて設備の見直しも行っていけるのではないかとの期待もある。
併せて、現場の在り方、生産工程、品質管理、人材育成にも着手し、従来からの体質の脱皮を図る。それと同時に、営業力を強化していくことで、新規市場開拓にも力を入れていく予定だ。
TAD三芳の統合は、社員にとっても危機感を持ってもらうきっかけになったのではないかとみている。「コロナ禍になったことで、大きな変化の流れがきています。これからの時代に向けて、我々が持つ技術やノウハウを、何で提供できるのかを考える機会になっています」と現状を分析する。
加えて、新しいことへのチャレンジも積極的にしていきたいと考えており、「製本・後加工にしばられることなく、新しい“多田紙工”の姿を創っていきたい」と言う。
なおTAD三芳は5月以降、「TADクロスメディア」として社名変更する。デジタル印刷技術を駆使した営業会社として、一般顧客や、神社仏閣、個人などをターゲットに特徴ある製品を販売していく。

 

株式会社多田紙工
本社:埼玉県さいたま市南区松本1-16-1
代表:多田 信氏
TEL 048-863-7987
http://www.tadashikou.co.jp/

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