Home DX

【インタビュー FFGS】ジョブのオートプランニング~最適生産に結びつくフェニックス

  富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社(FFGS)のジョブプランニング&面付ソフトウェア『tilia phoenix(フェニックス)』は、これまで人手で時間をかけていたジョブ設計、面付けをAIで自動化し、製造コストの最適化を実現する。版面設計は専門技能を必要とし、その精度によって工数やコストが左右される。tilia phoenixは個数や部数、面付する画像の形状・面積、納期などのパラメーターに基づき、最適な版面設計を自動化。加えて人件費や時間コストをもとに適切な印刷デバイスを選択し、印刷現場の生産の最適化を支援する。同社技術一部主任の武内 稔氏に面付に留まらないtilia phoenixについて伺った。

富士フィルムグラフィックソリューションズ株式会社技術一部主任の武内 稔氏

コストを考慮し自動で無駄のない面付を実現

tilia phoenixは“インポジションAI”により、紙器パッケージやアクリルグッズ、シール・ラベル、サイン、軟包装、什器、商業印刷、頁物印刷など幅広いメディアに対応する、コストを加味した面付レイアウトを自動で生成可能だ。さらにメディアサイズやデバイス、後加工機からコストが最適なデバイスや台数を判断するジョブプランニングも自動で行える。

面付レイアウト機能は、PDFなどのデザインデータから、殖版や入れ子レイアウトなどを瞬時に面付け。印刷用のデータ作成をはじめ、高度なアルゴリズムを用いてデザインデータ内のダイラインを抽出することで、ダイカッターや断裁機用のカッティングデータを出力できるので、CADソフトによる複雑な作業も不要になる。更に新バージョンではページジョブにも対応しており、tilia phoenix内で台割作成から大貼りまでの自動化が可能となっている。

MISとの連携で、最適生産ソリューションを実現させる。

例えば、アクリルグッズの場合、アクリルボードに形状、数が異なる絵柄を面付する必要がある。オペレーターが作業すると8台、565枚のアクリルボードが必要だったアクリルグッズの印刷事例では2台、370枚に抑えられた。作業時間は30分以上からわずか5分に短縮した。

大判インクジェットで分割印刷(タイリング)が必要となる場合、同じ絵柄でも掲示するスペースが異なれば、分割するレイアウトが変わる。掲示場所ごとにデザインソフトで一つずつ作業することになり、数に比例して工数が増える。tilia phoenixではCSVで掲示場所ごとの分割ラインを入力することで、一瞬で作業が終了する。あるユーザーでは月末に集中するタイリング作業で、数日の深夜残業が発生していたが、tilia phoenix導入後は深夜残業から解放された。

FFGS技術一部主任の武内 稔氏は、「MISなどの上流システムとの連携がポイントになる」と述べる。MISに入力されている数量や紙種、紙目、納期、サイズなどの受注情報と、印刷機や後加工機、庫紙・素材の製造コスト、準備を含めた製造時間などからAIが最も効率が良い面付を生成するにとどまらず、かつ適切な印刷デバイスを選択する。武内氏は、ここが単なる面付ソフトウェアと異なり、FFGSが提唱する“最適生産ソリューション”に結びついてくるという。

Tilia Phoenixが対応するメディア

“余力(利益)”を生み出す生産管理支援ツール

最適生産ソリューションは新しい事業領域に、生産現場の改善から創出された経営資源の余力を投入して、成長戦略につなげるための生産環境構築を支援するFFGSの考え方。受注データや実績データを元に現場を分析し、富士フイルム独自のメソッドにより各工程の設備の稼動状況や作業時間、人・物の動き、人件費、材料費を含めたコストの詳細を可視化し、課題を抽出し、改善。その過程で生まれた余力・リソースを新規事業に展開していく。オフセット印刷とデジタル印刷の共存による最適生産体制の実現もその一つとなる。

オフセット印刷とデジタル印刷では仕様やコスト構造が大きく異なる。準備時間や後工程の工数を考慮すると部数コストだけの比較だけでは、オフセット印刷とデジタル印刷を分ける本来の損益分岐点がぶれる。しかも生産全体を最適するためのジョブプランニングは熟練者の経験と技術が必要となる。tilia phoenixではロット数などの画一的なルールで生産デバイスを選ぶのではなく、サイズにジョブの情報、設備の特性、資材の情報から生産時間とコストが最適となる生産パターンを自動で判断する。

「tilia phoenixはオフセット印刷とデジタル印刷を相互利用するための最適生産を構築するための生産管理支援ツールです。アクリルジョブの場合、枚数が決まらなければ資材の発注ができません。あらかじめ必要となるアクリルボードの枚数がシミュレーションできれば余分な資材を発注することがなくなります」(武内氏)

tilia phoenixに必要となるマスターは約10項目。時間単価、素材コスト、インキコスト、刷版コスト、断裁コストなどを入力するだけなので、マスター生成は難しくない。

  製造業全般で技術者の高齢化と技能の伝承が課題となっている。人手不足も深刻で、現場の人員確保が難しい。印刷業でもジョブプランニングや面付作業は属人化しやすく、特定の技能を持った作業者に業務が集中する。小ロット・多品種化が進み、ジョブ一点当たりの単価が下がる一方で、ジョブプランニングや面付作業の数は増加する。

  武内氏は「ノウハウの塊であったジョブプランニングや面付を自動化することで、属人化や技能伝承の問題も解決することができると考えています」と述べている。

関連記事

最新記事