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全印工連 印刷産業DXの開発に着手、ITを活用した協業で最適生産・付加価値向上へ

2020.5.14

左からFFGSの辻氏、リコージャパンの高橋氏、富士ゼロックスの真茅氏、全印工連の臼田会長、江森常務理事、KOMORIの梶田氏、SCREEN GP ジャパンの木谷活氏

左からFFGSの辻氏、リコージャパンの高橋氏、富士ゼロックスの真茅氏、全印工連の臼田会長、江森常務理事、KOMORIの梶田氏、SCREEN GP ジャパンの木谷氏

全日本印刷工業組合連合会は中小印刷業の生産性と付加価値を向上し、印刷産業の新たな成長軌道を描くプラットフォーム『印刷産業デジタルトランスフォーメーション』(印刷産業DX)の開発に着手する。クラウド上で印刷会社の設備の稼動状況を可視化し、最適な協業の仕組みを構築するとともに、MIS(経営情報システム)機能により確実に収益を確保する。全印工連の臼田真人会長は印刷産業DXを「収益逓減構造からの脱却を目的とした令和版印刷構造改善事業」と位置付けている。

 

令和版の構造改善事業

 

印刷産業はメディアの多様化による需要の減少、過剰設備による供給過剰、低い生産性、労働力不足、後継者不足の課題を抱えている。これにより高コスト体質でありながら過当競争が生まれ、収益の低下を招いている。

5月13日に開いた記者会見で全印工連の江森克治常務理事は「付加価値を高めるために需給ギャップを埋める。需要に対して供給量があまりにも多い状態が過当競争を生み出している。製造をやめる企業には付加価値を生み出す業態に転換して頂くという事業を展開していきたい」と説明。高い生産性による低コスト構造を構築しながら、適正な需給バランスを維持し、収益の向上を図っていく。また「印刷製造により力を入れて生産性を上げるファクトリーという役割と、その印刷を通じて付加価値を生み出していくサービスプロバイダーという役割に分けていくことを考えている。その二つをつなぐのがDXの基幹システムになる」との構想を語った。

印刷産業DXシステム略図

印刷産業DXシステム略図

印刷産業DXはそれらの基盤になるもので、利用する印刷会社が受注した案件から最適な生産設備を見出して製造する受発注機能、収益を可視化するMIS機能をはじめ、決済機能、評価機能を持つ。外部システムとの連携が可能で、請求書発行システムから請求書を自動で発行することもできる。

受発注や製造へのジョブ情報の受け渡しにはJDF(電子化された作業指示書の標準仕様)などが用いられる。ファクトリー側ではJDFを活用し、例えば機械の自動セットアップなどにより効率的に生産する。将来的には物流や新聞折込、封入・封緘の周辺サービスにも広げていく。

開発に当たっては経済産業省の補助金を活用する。事業規模は1億円(2分の1助成)。5月25日の申請を予定し、6月中旬の認可を目指す。

今期は「印刷DX推進プロジェクト第1期」として、試行に必要となるシステムの開発、生産性向上の目標値設定に取り組む。来期、10グループ(1グループ想定10社)による試行に移り、本稼動に必要な要件の整理、生産性向上のモニタリングに入る。また、「印刷DX推進プロジェクト第2期」として生産性目標に対する仮説検証などを進め、2023年の本格稼動を目指す。

運用に際しては当初、印刷工業組合員を対象とし、順次、組合員以外の利用を促す。利用料は今後検討し、「最低限のランニングコストをカバーできるだけの料金設定が必要。できるかぎり負担がない範囲」(臼田会長)を設定。全印工連では約1,000社での運用を仮定している。

記者会見にはプロジェクト参加協力企業から富士ゼロックス㈱取締役専務執行役員の真茅久則氏、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ代表取締役社長の辻重紀氏(つじの字は点一つのしんにょう)、リコージャパン執行役員産業ソリューション事業本部長の高橋卓也氏、SCREEN GP ジャパン代表取締役社長の木谷活氏、小森コーポレーション取締役兼常務執行役員の梶田英治氏も出席。プロジェクト推進とDXシステム開発への協力を強調した。

臼田会長は記者会見で「全印工連は時代に合わせて産業の構造改善を常に改良し、先輩方が施行してきた。我々の組織そのものが先輩方の想いを継いでいる。このタイミングで必要となることを今起こさずにいつ、だれがやるのだという想いに駆られて大きな一石を投じた」と述べている。