大洞印刷 HP Indigo 30000 デジタル印刷機を導入マーケティング機能を備えたパッケージ印刷へ

大洞印刷 HP Indigo 30000 デジタル印刷機を導入<br>マーケティング機能を備えたパッケージ印刷へ
大洞印刷の大洞専務取締役
大洞印刷の大洞専務取締役

小ロットクリアファイル生産強化へ

クリアファイル専門のネット通販サービス「ボラネット」を展開する大洞印刷株式会社(岐阜県本巣市)は、このほど日本HPの厚紙専用B2判デジタル印刷機「Indigo 30000 デジタル印刷機」を導入し、厚紙に加え、アルミ蒸着紙、非用紙素材を利用した小ロットパッケージの生産を開始する。来年春ごろを目処にパッケージ印刷のネット通販サービス「イロハコ」(予定)を展開するほか、マーケティング機能を持つパッケージで新たな需要を開拓していく。

同社は2004年秋、UVオフセット印刷機でクリアファイル印刷を開始。新工場披露時の贈答品として配布したのが始まりで、その後、反響を呼んだことから本格的な生産をスタートさせた。
当初はカタログ通販から販売を始めたが、需要の増加に伴い、業界で先駆けてクリアファイル専門の通販サイト「ボラネット」を立ち上げた。今ではクリアファイルが同社の売上の半分を占め、トップシェアに近づくまでに成長。300線の高精細印刷と、超音波方式による溶着で品質が高く評価されている。

大洞印刷のクリアファイル製品
大洞印刷のクリアファイル製品

そうしたクリアファイル市場では、ここ数年、急速に小ロット、多品種、短納期の要求が進んでいる。これまで大判のUVインクジェットプリンタで小ロット需要に対応していたが、オフセット印刷の小ロット適性を上げると同時に、2011年秋、「実質、クリアファイルを本格的に印刷できるデジタル印刷機はIndigoだけ。継続的に機械をバージョンアップでき、投資した資産を長く使える点も評価している」と、日本HPの「HP Indigo 5600 デジタル印刷機」(導入当初は5500。その後、バージョンアップ)を2台導入し、小ロットのクリアファイル生産を開始。およそ500部までをデジタル印刷機による生産に切り替え、全体最適化を図った。
もう一点、同社で変化しているクリアファイル需要は、一般企業からの受注増。同業者である印刷会社向けのサービスと位置付けていたが、大手印刷通販会社がテレビコマーシャルなどの告知活動により、印刷ネット通販サービスの認知度が向上。これにより一般企業からの発注が増えてきた。
同社の大洞広和専務取締役は、「件数が増える一方で、顧客単価が下がっている。クリアファイル全体の売上も増えており、小ロット・多品種生産のテコ入れが必要だった」と課題を感じていた。デジタル印刷の売上比率も10%近い。生産体制の見直しで、今年春、最新のA3判対応「HP Indigo 7800 デジタル印刷機」を導入。Indigo 7800はIndigoの第三世代機で、「生産の安定性が増し、歩留まりが良い」(大洞専務)ことを評価した。
加えて今年9月にはB2判、厚紙対応の「HP Indigo 30000 デジタル印刷機」を国内で初めて導入した。一つがフィルムへの印刷適性が高いことからクリアファイルの生産性向上によるコストメリットの獲得が狙い。もう一つが新しい市場への挑戦である。

小ロットパッケージの通販サイト
「イロハコ」来春開設へ

B2判、厚紙対応の HP Indigo 30000 デジタル印刷機
B2判、厚紙対応の HP Indigo 30000 デジタル印刷機

2012年にドイツで開かれた世界最大の印刷機材展drupa2012。大洞専務は巨大なHPブースの中に展示しているIndigo 30000を見た時、これから自社に必要となる設備なることを直感した。
Indigo 30000導入にあたり、クリアファイルが印刷できることは前提。「日本のクリアファイル印刷市場は今後、急激に増加すると予測できない。当社ではこれまで小ロットから大ロットまで、しかも様々な素材、形状を用意し、シェアを伸ばしてきた。また、クリアファイルの分野でトップが見えてきた今、単一商品から、もう一つの柱を作る必要がある」。同社はクリアファイルをはじめ、販促印刷物を提供しており、CAD、抜き、UV印刷、多色印刷のノウハウを持っている。これらの技術を横展開する際、最も近い市場と感じたのが「パッケージ」。全く手掛けていなかったわけでないものの、新しい分野に進出するための武器としてIndigo 30000に期待した。
同社が志向するパッケージは、小ロット・多品種。来年春の開設を目指しているパッケージ専門サイト『イロハコ』で受注を見据える。この分野では先行する企業がいくつかあるが、Indigo 30000の高い素材対応力を前面に出し、コートボール、カード紙に限らず、アルミ蒸着紙や透明素材などの特殊原反を使った製品を揃えて差別化を図る。
現在、想定される対象は小ロットのパッケージ生産で困っている印刷会社や、個人的にインターネットを通して製品を販売できるネット通販である。

マーケティング機能のパッケージ

1点ごとに異なる絵柄のパッケージ
1点ごとに異なる絵柄のパッケージ

同社のソリューション営業部隊は、顧客のマーケティング活動や販売を支援する部署である。顧客の元を訪問し、営業・企画・現場に向けての勉強会や展示会・内覧会の企画運営を手掛ける。
実際にソリューション営業部隊は、パッケージの違いで売上の差を検証するA/Bテストなどテストマーケティングの支援も提供している。ここを橋頭堡に、パッケージを使った新しいマーケティングやブランディングを提案する。
「他社さんの事例ですが、例えばコカ・コーラのネームボトルキャンペーン。2億本を生産したのでけっして小ロットではないが、多くの人の名前をラベルに印刷するのはデジタル印刷でしかできない。お客様の売上を伸ばすような提案ができればと考えている」

同じ製品でも異なる小ロットパッケージでA/B分析
同じ製品でも異なる小ロットパッケージでA/B分析

クライアントが考えるパッケージは副資材であり、コスト重視。そうした既成概念を打ち破るには新しい切り口が必須である。資材の調達ではなく、販促予算を割いて取り組みたくなる企画を打ち出していく。
「今まであまりない試みだけにお客様の認知がすごく重要。啓蒙活動に力をいれなければならず、労力、時間もかかると考えている。潜在市場を掘り出すためには、同じ試みを目指す同業者と連携して事例を作り、お客様のアイデア発想のきっかけづくりが課題になってくる」
パッケージ市場では新参者といえるが、同社が狙うのは需要の創出。今後はトップシェアが見えるクリアファイルを固めつつ、新しい分野にチャレンジしていく。

【大洞印刷株式会社】
岐阜県本巣市下真桑290番1
TEL058-320-5123
https://www.bora-net.com/

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