ミューラー・マルティニ オーナーのルドルフ・ミューラー氏が4年ぶりに来日、「印刷された本の未来、日本の印刷・出版業界の革新力を信じている」
ミューラー・マルティニ グループ(スイス)オーナーのルドルフ・ミューラー氏が4年ぶりに来日し、10月15日、東京都板橋区のミューラー・マルティニジャパン本社で開いた記者会見で、日本の出版・書籍市場の動向や印刷・製本業者の現状と課題を語るとともに、同社のソリューションを説明した。ミューラー氏は、来年2月22日から25日までスイス・ルツェルンで開催されるフンケラーイノベーションデイズにも言及。12月末で五反田隆氏が代表取締役を退任し、来年1月1日付で現・営業技術開発部部長のモーマン・トビアス氏が代表取締役に就任することを明らかにした。
ミューラー氏は記者会見で、「長い間、世界でもっとも重要で尊敬される書籍市場のひとつ。豊かな読書文化、出版社や書籍生産会社の卓越した品質基準、そして業界の革新的な精神は、世界的に認知と称賛を集めている」と日本の出版市場を評価。一方で課題として、出版社、印刷会社、製本会社への人口動態の変化、労働力不足、コスト上昇への圧力を挙げ、「歴史は、変化の時期が機会も生み出すことを教えてくれる。イノベーションは常に、課題が新たな解決策を必要とする場面で生まれてきた」と語った。
その上で問題点は印刷された本の価値ではなく、タイトル数の増加や過剰生産に伴う財務リスク、コスト増、不必要な返品にあることを強調。加えて書店が持つ発見、インスピレーション、専門知識、人間関係形成の場という文化機関の機能の重要性を示し、書店の将来が「利便性、利用可能性、顧客体験を融合させた賢明な統合によって形づけられる」との見解を述べた。
日本の書籍市場の長年の課題である高い返本率については、「膨大なコストを生み、サプライチェーンに大きな圧力をかけている」と指摘。「より正確に販売できる数を生産することが重要」と書籍生産の方向性を指した。それらを背景に小部数発行、オンデマンド印刷、柔軟な部数補充モデルが世界中で伸長している現状に触れ、その実現に重要な役割を果たすデジタル印刷に期待を寄せた。併せて、「明日最も成功する書籍生産者は、オフセットかデジタルのどちらかを選ぶ企業ではない。両技術を知的かつシームレスに組み合わせられること」と、オフセット印刷とデジタル印刷を融合させた生産環境の構築を訴えた。
ルドルフ氏は、そうした大量印刷、ショートラン印刷、1冊の注文でも同等の効率で生産する生産環境として“スマートファクトリー”を提言。そのビジョンとして「印刷機や製本ラインにとどまらず、出版社、印刷会社、書籍生産会社、物流パートナーをバリューチェーン全体でデジタルにつなぐ統合型ワークフロー」と展望した。
その先には“ライトアウト・プロダクション”という高度に自律的な生産環境を想定。注文がデジタルで処理され、書籍は自動的に作成され、人の介入を最小限に運営できるワークフローで、ミューラー氏は「労働力不足が深刻化する中で、この能力は多くの組織にとって決定的な競争優位となる。ここに書籍生産の未来を見ている」と展望した。
ミューラー・マルティニにとって日本市場は「今後も戦略的な市場であり続ける」と位置づけ、「印刷された本の未来、日本の印刷・出版業界の革新力を信じている」と力を込めた。最後に「私たちの業界の未来は、より多くの本を生産することではなく、適切に本を生産すること。求められている本を、適切な時間に、適切な場所で、ちょうど良い生産数で」と述べ、「これこそが、私たちが日々達成することにコミットしていること」と締めくくった。
会見の終わりには、2027年にスイス・ルツェルンで開催されるHunkeler Innovation Days 2027への来場を呼びかけた。最新のイノベーションとデジタル印刷・加工のワークフローソリューションを体験でき、印刷の未来を実際に見て、業界の専門家とアイデアを交換できる機会になるとし、「2027年にルツェルンでお待ちしている」と来場を呼び掛けた。
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