【インタビュー 東京技術協会鈴木將人社長】印刷&動画の「ハイブリッドマニュアル」を印刷会社と市場開拓

パーツカタログの制作から印刷・製本まで、マニュアルの製作・印刷で絶大な信頼を得ている株式会社東京技術協会は、マニュアルのテキストと動画を組み合わせた「ハイブリッドマニュアル“2.5D動画”」を商品化した。同社は1919年に創業。テクニカルイラストレーション、2D/3D、CG、CAD等の3Dコンテンツ制作やVR開発などの高い技術力を活かした「ハイブリッドマニュアル」制作からコンサルティングを行う。鈴木將人代表取締役社長に「ハイブリッドマニュアル」を印刷会社と共に行う取り組みや、今後の事業の方針に関して語っていただいた。

株式会社東京技術協会 鈴木將人代表取締役社長

――印刷業界におけるハイブリッドマニュアルの市場動向についてお聞きします。

鈴木:新型コロナウイルスが2類から5類に移行したことによって、ようやく具体的な活動ができるようになりました。コロナ禍が明けて具体的な事業の計画が出来るようになり、デジタル化、DX、3Dコンテンツの市場は活発になりつつあります。現在は新規顧客の獲得に特に力を入れております。
その上で当社は、新しい事業を行うパートナーとして、印刷会社と「ハイブリッドマニュアル」、「テクニカルイラストレーション」のコラボレーションする事業を進めております。印刷会社のお客様と共に3DCGコンテンツの課題の解決に当社が関わり、サポートをしていきます。そのための活動として、まず印刷会社の方に当社の事業を簡単なものと捉えていただけるよう努力しております。

デジタル領域の課題を印刷会社と共に解決します

鈴木:東京技術協会は現在、印刷会社が抱えている、CADデータや3DCGのデータの加工の問題を解決していくことを取り組んでおります。具体的な活動として、当社のエンジニアが印刷会社の営業マンと同行し、ヒアリングを通して制作物を作り、印刷会社の成果物として印刷会社に提供をしていくというものです。
「CADデータを使ってこんなことができないか」「これを元にマニュアルを作成するにはどうすればよいのか」といった、印刷会社から寄せられる課題に対して、当社の社員が直接取材やヒアリングを行い、コンテンツ制作の部分を一任していただきます。印刷会社はデジタルの領域で困っていても、誰かに相談できずにいることもあります。同時に、印刷会社も顧客から印刷物と動画等のコンテンツを同時に求められる場面も増えてきました。デジタルに関わる悩みを抱える印刷会社は今後も増えていくと考えております。当社が印刷会社のデジタル領域に関わることで、仕事がなくなってしまうという心配を持つ印刷会社も出るかもしれませんが、当社で製作した制作物は印刷会社様の商品として使っていただけます。また当社とタッグを組んでデジタルに関わる仕事を行うことで、顧客からデジタルに関わる仕事を請け負える会社であると認識されて、信頼を高めることができるというメリットがあります。

顧客からCADデータを任され信頼されるために

鈴木:既に印刷会社から依頼も承っておりますが、今まで印刷会社にITに精通した社員がいない等の理由から、こうした事業を難しくしていたという問題もありました。実際にありました例ですと、印刷会社のお得意先から「CADデータを持っており、それを使ってマニュアルを作りたい」という相談を受けたことがありました。これに対して「ではどのようなCADデータをお持ちなのかお得意先に聞いてください」と答えを返しましたところ、そのまま連絡が途絶えてしまったということがありました。これは、印刷会社の担当者がCADデータに複数の種類があることを分かっていなかったために、お客様にどう聞けばよいか分からなかったため起こってしまったことです。専門家でないお得意先も、CADデータの種類を理解していると思い込んだために起こってしまった事象の一例です。
そのため当社では、できる限りシンプルに考えていただけるよう努力をしております。そのために当社のスタッフが同行して、印刷会社の顧客とのヒアリングの段階から印刷会社の顧客と関わり、お話を聞くことから始めています。2D/3DCG、CADに限らず、機械の説明はテクニカルイラストレーションの制作に関する制作の理屈が分かっていないと納得のいくものを作ることが出来ません。難しい専門的なものであっても、当社に安心して一任していただけるよう努力をしております。

テクニカルイラストレーションの事例 マスク製造装置

2.5D動画のテクニカルイラストレーションと印刷テキストを組み合わせる

鈴木:印刷会社の方から、当社の事業を理解していただける取り組みに着手をしており、印刷会社の皆様に「テクニカルイラストレーション」を理解していただくためのレクチャーを行っています。「テクニカルイラストレーション」は難しいものではありません。「テクニカルイラストレーション」は、2Dの線画を立体的に表現する2.5Dイラストの動画で見せたい構造や仕組み、動きなどを分かりやすく表現する技術です。
元が2Dの線画は、3Dモデリングを作成する必要がなく、コストが3DCGの約半分になります。見えない部分の情報もイラストとして表現することが出来るため、様々なメリットがあります。印刷会社の視点から見た「テクニカルイラストレーション」は、2Dのイラストレーションを図版として印刷することにより、違和感なく印刷物と動画を両立出来ることができるものです。
印刷会社の視点から、デジタルの製作物に求める最も重要な点は、「データを印刷物に落とし込むことができるか」であると考えております。「テクニカルイラストレーション」は、動画としてイラストを動かしつつ、図版としてそのまま印刷が出来ます。
「ハイリッドマニュアル」の事業を知っていただき、理解していただくことが重要です。「テクニカルイラストレーション」は、イラストを動かし、そのまま図版として印刷をすることが出来ます。動画と図版を組み合わせた2.5D動画マニュアルが「ハイブリッドマニュアル」の理解を深めていただくために最適と考えております。

テクニカルイラストレーションの事例 太陽熱メタネーションシステム

「テクニカルイラストレーション」を起点にハイブリッドマニュアル市場へ

鈴木:印刷会社と共に広い視点からアプローチすることで、テクニカルイラストレーションの多様なサービスを提供していきます。当社は印刷会社です。印刷用の図版や制作物を理解をしているため、印刷を前提としてお話しを通すことができます。印刷会社の視点から制作物を作ることが出来ることから「テクニカルイラストレーション」に限らない、幅広いのパートナーであることが当社の強みであると考えております。
私はコロナ禍の中で事業が進まなかった際、常に「コロナが開けた時が勝負だ」と言っておりました。コロナ禍が明けてどの会社も新しいことを一気に始めます。そのための準備に、社内外のコミュニケーションを円滑にするため、本社を自社ビルから現在の銀座に移しました。これから当社は、ハイブリッドマニュアル市場を印刷会社とスクラムを組んで開拓して参ります。

<「株式会社東京技術協会」概要>
所在地:東京都中央区銀座1-8-16銀座アスタービル4F
代表者:鈴木將人氏
TEL 03-3528-6741
FAX 03-3528-6745
https://www.togi.ne.jp/

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