【MIC】水上会長、河合社長が語る スタンダード市場に上場 ”360°フルサービス”展開で業態変革し売上4倍に

MIC株式会社は12月25日付で東証スタンダード市場に上場した。それに先立つ12月9日、東京都新宿区の本社で開いた上場承認に伴うプレス発表で、これまでの変革の歩みと今後の事業展開などを説明した。

同社は「デジタル×フィジカルで、”企業の未来にイノベーションを起こす”」をビジョンに掲げ、企業の販促マーケティング業務の非効率を解消するリテール販促支援の”360°フルサービス”を展開している。スタンダード市場への上場で調達した資金は人材獲得・育成とシステム化、自動化に向けた設備投資に充てる。
1946年に創業した同社は商業印刷を中心とした事業形態から・フルサービスカンパニー・へと変貌を遂げている。1988年に同社の社長に就任した水上光啓現会長は、社内の管理体制、生産体制、営業体制を徹底的に革新し、同社を中堅企業へと成長させてきた。
水上会長はプレス発表で、MIC(当時 水上印刷)に入社後の人材採用の苦労を振り返り、「家業から企業への転身を目指した」と人材を基軸にした経営の原点を説明。徹底的に採用と教育に注力し、若い人材を育て上げて、明るく元気のある”水上イズム”を浸透させた。それが企業風土として定着し、現在の成長の土台が築かれた。
一方、2000年代に入り、売上の約3割を占めていた主力業務の消失の危機が見え始めると、水上会長は新たなビジネスとして”ワンストップサービス”に着目し、印刷に限らず企画からアッセンブリ、在庫管理までを総合的に提供する業態へと同社を変革した。契機は2006年にイギリス企業8社の視察だった。

このうちL&S Printing社と、Bezier社がMICの業態のベンチマークとなった。L&S Printing社は当時、バス&ボディケア用品を販売する店舗300店に販促物を送るフルフィルメントサービスを展開。Bezier社は1200店舗を経営するスーパーマーケットの販促品の発送業務を請け負っていた。イギリス企業の視察は”360°フルサービス”のきっかけとなったコンビニエンスストア向けの販促物のフルフィルメントサービスへとつながっている。そうした方向性のもと、河合克也社長をはじめとする経営幹部、社員が一丸となり、・ワンMIC・の精神で、企業のマーケティング活動を最適化する現在のフルサービスカンパニーへと進化させてきた。

2021年には水上印刷株式会社から現社名に変更。現在、同社の正社員数は344名で、印刷工場の「多摩ファクトリー」、フルフィルメントの「るのパレット」、「サンゲート」、「はちフィル」の拠点を持つ。2025年3月期の売上高は113億9900万円(対前年期比112・7%)を見込んでいる。10年で売上規模は約4倍となっており、今後も年平均7%から15%のペースでの成長を目標に掲げる。

MICの水上光啓会長
MICの河合克也社長

社会課題解決を成長エンジンに
「1ドルの印刷物の周辺には6ドルから8ドルの付帯サービスがある」
・360°フルサービス・のベースには、かつてPIA(米国印刷工業会)が指摘した印刷業の事業領域拡大への考え方が貫かれている。河合社長はプレス発表で「売上はこの10年で4倍になった。顧客企業の課題に360°フルサービスが響いたからこそだと思う」と事業成長の要因を強調。その上で、「顧客第一主義で進んできたが、今後は社会課題の解決にも焦点を当て、我々の事業を膨らましていきたい」と今回の株式上場の目的を挙げ、「ワンMICとして社会課題を解決するにはもっと人が必要。そのための仲間づくりというところが大きな決断の背景だった」と、人材の獲得と教育の必要性を説明した。
MICのサービスは顧客の課題を可視化し、平均100ページにわたる提案書で解決策を提案するコンサルティング型。販促物のフルフィルメントサービスに限らず、配送した販促物の設置から施工、回収、効果測定までを展開しており、人材とその能力が成長のキーポイントといえる。この10年間でMICの事業領域は一気に拡大し、それにより新たな部門が設置され、人員も増えた。2014年に2人でスタートしたクリエイティブ部門は現在100名を超える。2016年時点で0人だった開発などのシステム部門は約30人に増え、海外からの人材も採用する。成長速度やビジネスの進化に合わせた人材の獲得、育成は今後も欠かせない。
「チラシ1枚で終わるプロモーションはない。逆にアプリ1つで終わるプロモーションもない。アプリやSNS、ボードや什器などデジタルとフィジカルが混在する中で、お客様は複雑な業務を抱えている。私たちが一括してそうした業務を引き受けることで業務負荷が軽減される。コスト削減や売上増に加えて、お客様の時間を創造する部分を重視している」(河合社長)
こうしたサービスを提供するためにMICでは一貫して教育投資を続ける。MICの就業時間内教育時間は社員一人当たり年約200時間に達する。教育費用は一人当たり約23万円で、経済誌に掲載されたランキングに当てはめると日本で14位に入る。ビジネススクールでMBAを取得した社員は4名。・日本一勉強する会社・を標榜し、『ひとづくり本部』を設置するなど人材育成を進めている。
その一方で、「人材を核とするために働きがいと働きやすさに力を入れている。教育、制度に加えて、社員が健康であることが生産性を高めることが実証されている」(河合社長)と健康経営にも取り組み始めた。ストレスチェックや看護師による面談など社員の健康を維持する環境をつくり・日本一健康な会社・を目指すとしている。
水上会長はプレス発表で「業態変革の一つの形を作りたいと思っていた。この間、社員一丸、ベクトルを合わせワンMICで進み、素晴らしい社長、社員に恵まれてこのたび上場が承認された」と述べ、上場を契機としたさらなる成長を見据えた。
 【360°フルサービス】
コンサルティング、システム開発、BPO、クリエイティブ、ものづくり、フルフィルメント、フィールドサポートに至るまで、販促業務に必要なサービスを一括で提供するサービス。例えば、各メーカーから多店舗に向けて各々配送していた販促物は、配送経路がまちまちで、かつ店舗に届いても手間や時間の制約から販促物が掲示されないケースがある。MICは各メーカーから販促物を受け取り、アッセンブリして各店舗に配送することで、配送経路を集約。店舗での販促物の掲示作業も効率化されている。2024年10月31日時点で、全国のドラッグストア1万9440店のうち、1万572店が同社のサービスを導入しており、店舗カバー率は54%に達している。

関連記事

最新記事