マンローランド 櫻井印刷所を訪問 日本の伝統的な“和綴製本”を体験、「印刷」という共通言語を通じた国際交流

マンローランドジャパン株式会社は、同社公式ウェブサイトで、株式会社櫻井印刷所への訪問レポートを公開。その内容を紹介する。

印刷文化がつなぐ伝統と体験 川越とオッフェンバッハ 文化と産業の交流拠点

江戸情緒を残す街・川越と印刷と工業の街・オッフェンバッハ(ドイツ・ヘッセン州)

この二つの都市は1983年に姉妹都市提携を結び、以来40年にわたり、文化・教育・産業の各分野で交流を重ねてきた。オッフェンバッハは、印刷やタイポグラフィの歴史が息づく工業都市であり、ドイツを代表する印刷機メーカー「マンローランド・シートフェッド(manroland Sheetfed GmbH)」の本拠地でもある。一方の川越は、江戸期から続く蔵造りの町並みや職人文化が根付く地域だ。近年、両市の絆を象徴する出来事として、オッフェンバッハ商工会議所一行が川越を訪問し、地元企業「櫻井印刷所」で日本の伝統的な“和綴(わとじ)製本”を体験した。この出来事は、まさに「印刷」という共通言語を通じた国際交流の象徴といえる。

櫻井印刷所「文星舎」に見る、日本の印刷文化の原点

川越市元町にある「文星舎」は、櫻井印刷所が運営する体験型スペースである。ここでは、和紙を用いた和綴製本や活版印刷など、アナログ印刷の魅力を誰もが体験できる。

*1 和綴とは) 糸で紙を綴じる日本古来の製本技法であり、奈良時代から続く伝統を持つ。折り重ねた和紙を針と糸で綴じることで、紙の柔らかな質感と手仕事ならではの温もりが生まれる。デジタル化が進む現代においても、“触れる印刷”として国内外の来訪者に人気が高い。

*2 活版印刷との融合) 文星舎では、明治~昭和期に主流だった金属活字を用いた「活版印刷」も体験できる。活字を並べ、インキを付け、紙に圧をかけて印字するその工程は、まさに印刷産業の原点である。ドイツからの来訪団がこの手仕事を体験したことは、印刷文化の原点を国境を越えて共有する意味を持つ。

ドイツ・オッフェンバッハ商工会議所(IHK)会頭 Kirsten Schoder-Steinmüller氏, 専務代表取締役社長 櫻井理恵氏, IHK 取締役社長 Markus Weinbrenner氏, マンローランドジャパン 代表取締役 小玉泰史氏

アートとサイエンスが融合する印刷の未来

1871年、ルイ・ファーバーとアドルフ・シュライヒャーによって、ドイツ・オッフェンバッハで創業されたマンローランド社(当時Faber & Schleicher)。1911年に「ROLAND」ブランドのオフセット印刷機を開発して以来、150年以上にわたり印刷機械技術の進化を牽引してきた。

現代の印刷は、デジタルとアナログの融合によって成り立っている。和綴・活版といった“アートの領域”は、人が紙に触れ、想いを伝える温度を持つ。加飾で表現された芸術的な印刷も同様に、美しさや魅力ある印象を与えることがある。一方で、現代における自動化された印刷機は、“サイエンスの領域”として精密な制御と生産効率を極める。この「アートとサイエンス」の融合こそが、印刷の合理性や芸術性を紐解く鍵となる。特に日本市場では、小ロット・多品種・短納期が進み、顧客の求める“体験価値”が重視されるようになった。その中で、デジタル制御による効率化と、手仕事による感性価値を両立させることは、一つの印刷の未来の形といえるかもしれない。

伝統が導く革新 ― 国際交流の意義

櫻井印刷所での和綴体験に参加したオッフェンバッハ商工会議所の一行は、日本の印刷文化の源流に触れた。それは単なる文化体験だけでなく、「印刷とは何か」を問い直す機会でもあった。ドイツと日本、産業と文化、デジタルとアナログ。これらが交差するところに、印刷産業の新たな可能性がある。マンローランドが掲げる「WE ARE PRINT.®︎」というスローガンは、その精神を象徴している。印刷は、情報を伝えるだけでなく、人と人、国と国を結びつける力を持つ。川越とオッフェンバッハの交流は、まさにその原点を思い出させてくれる。

和綴が一針ずつ紙を束ねるように、印刷の歴史もまた、世代を超えて技術と想いを紡いできた。その糸は今、川越からオッフェンバッハへ、そして再び世界へと伸びている。アートとサイエンスの融合がもたらす新しい印刷の時代、伝統と革新を共に歩む日本とドイツの精神が息づいている。

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