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【製本・加工】中正紙工
中綴じの新たな表現「和紙のホチキス」
製本技術から生まれた取り組み

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2020.5.21

 

ペーパーリングをつくった製本会社

 

紙のホチキス

和紙を使ってスティッチングした中綴じ製本

カレンダー製本を強みとしている有限会社中正紙工は、紙製のカレンダーリング製本「ペーパーリング」でも知られる企業。これに続く紙製の製本システムとして、紙ホチキス「和紙のホチキス」も提案している。和紙のホチキスは、ペーパーリングと同様に、これまで金属だったホチキスを紙でできないかという要望から生まれた。

紙ホチキスの開発は約5~6年前にさかのぼるが、大量生産に対応できる据え置き型の市販機の導入は3年前から。据え置き型の第1号は中正紙工の工場に設置されており、いつでも和紙ホチキスのニーズに対応できるようになっている。なお、ペーパーリング、紙ホチキスとも、特許はトーカイコーポレーションに譲渡している。

和紙のホチキス開発で最も苦労したのは、紙の針を紙に通すという工程。一般的な金属のホチキスの針は、針自らが紙を突き差して、綴じる。しかし、和紙ホチキスは和紙をこより状にしたものなので、紙を突き破れる強度はない。そこで、綴じる紙にあらかじめ穴を開けて、そこに和紙の針を通すようになっている。システムは、大型のボビン糸のようにコイル状に巻かれた紙ホチキスの芯を、針の長さにカットして、針であけた穴に差し込み、折り畳んでから、重なった部分を熱圧着で綴じる。

この和紙のホチキスの機械は、ホリゾンの中綴じ機に連結できるように設計されている。和紙のホチキスの部分は新しく開発されたシステムではあるが、中綴じそのものは技術としては新しいものではなく、「既存の設備から着想を得て生まれたものです。中小企業にとって新しい設備を開発するのは難しい。今ある設備と技術を生かして、いかに新しいものづくりをするかを目指した中から生まれています」と、同社の中村勝彦氏は語っている。

 

針金ではなく紙の芯で中綴じ

 

紙のスティッチ装置はホリゾンの中綴じ機に連結している。

紙のスティッチ装置はホリゾンの中綴じ機に連結している。

和紙のホチキスは素材が紙のため、針金を使わない中綴じ製本が実現する。そのため、CSRレポートや、株主総会用の資料など、耐久性よりも、環境に優しい企業というブランドイメージをアピールする素材としての利用も考えられる。加えて、針金ではないため危険性も低いことから、子供向けの夏休みのオリンエンテーリングのノートなど子供向けの素材、あるいは高齢者、リハビリ施設で使う案内などで利用される機会が増えそうだ。また、和紙製のため水に弱いという特性を逆手に取り、水につけることで簡単に取れることを想定した利用の提案も行っている。

和紙のホチキスは、最大A4サイズの冊子まで対応する。据え置き型は、1時間当り1,000~1,300冊程度の製本が可能。2つの和紙のホチキスの針を巻いたリールを同時に動かせるので、同じ冊子に2色使いをすることもできる。

一方、持ち運びができるポータブルサイズのシステムは、一冊ずつ綴じていくため、1時間あたりの生産量は250冊ほど。据え置き型よりも生産性が低いが、2㎜を超える厚さや大判変型サイズにも対応できるなど、特長ある使い方ができる。

現在、和紙ホチキスの色は7色で展開している。そのため水引のような感覚でも利用できるのではないかと考えている。

和紙ホチキスを広く紹介しようとpage展や販促EXPOなどへ出展するようになったのは2年前。展示会でPRしたことで新しい提案をしたいと考えている企業や、デザイナーなどが興味を示してくれるようになった。興味を示してくれる人のアイデアの中には、芯の部分だけ使いたいという人も登場しており、従来のホチキスを超えた利用用途へと広がっていくのではないかと期待している。

 

オリジナルのものづくり

 

中正紙工は、製本会社ではあっても、カレンダー製本、リング製本を強みとしてきた。リング製本は、カレンダー以外にも色々なところで活用されている技術であるが、カレンダーへの用途は高い。年間60万~70万部のカレンダーを製造している中で、ペーパーリングはダブルリングと同じくらいのシェアを占めるようになってきている。

カレンダーは企業の販促品として活用する傾向が強いが、コロナウイルスの影響などから、次年度向けカレンダーの生産量の減少を懸念している。カレンダーは生活空間において、無ければ困るものでもある。そのため安さを追求すると、良いものと比較された時に簡単に捨てられてしまう商材になりかねない。販促品としてのカレンダーは、費用対効果を狙うため、ある程度のコストをかけ、工夫をこらしたカレンダーであることも必要であり、ペーパーリングなどの採用が増えてきていると分析している。

ただし、ペーパーリングが紙製であることを知らないエンドユーザーも多い。紙製であることを訴求していくことができれば、まだまだ伸びしろがあるのではないかと考えている。

同社ではその他に、卓上カレンダーのスタンド「ライズポップ」を開発し、特許を取得している。卓上カレンダーの課題を解決し、壁掛けタイプにもできるというもの。壁掛け兼用の卓上タイプのカレンダーにあった壁に掛ける穴の部分の凹凸をなくし、壁掛けで利用するときには卓上用のスタンドが邪魔にならず、壁掛けをしない時に不要なハンガー部分をなくしている。これにより、捨てる時の分別作業も不要で、製作する際にはデザインに気を遣うこともなくハンガー部分がないので加工の手間数も削減するなど、製造と顧客の両方に優しいカレンダーとなる。

「お客様からは、環境によいものを提案してほしいと言われます」という中村社長。しかし、「実は環境に悪いものはつくっていないと断言しています」という。つまり分別さえきちんとすればリング製本であってもリサイクルできるからだ。ただし差別化の提案として「金属よりも安全なカレンダーがあります」とアピールしている。

特長あるカレンダー製本を提案していると、新しいアイデアの具現化に向けた相談を寄せられることも多い。これまでも、広げると十字になり、綴じた時の4辺にリング製本をしているカタログや、全てのページの用紙の種類や判サイズ、印刷方式が異なるカタログづくりなども一般的な印刷・製本ではできない仕事を受注したこともある。

製本会社にとって当たり前の技術も、一般的には驚きが隠れていたりする。技術をどんどんアピールしていかなければ産業としてすたれてしまう。最近は簡単にアピールできる時代にはなったが、従来通りの受注を行う一方で、技術を広く紹介し、新しいアイデアを吸収して、市場を創造することも必要であると考えている。「新しいもの、面白いものにも目を向けることでチャレンジのきっかけはあると思います。顧客と一緒にものづくりを行う企業になっていきたい」と語っている。