マル・ビ 特殊素材の針・当て飛び検知、レンチキュラー印刷などで活躍

マル・ビ  特殊素材の針・当て飛び検知、レンチキュラー印刷などで活躍

 株式会社マル・ビ(東京都新宿区、白倉和昌社長)は2017年、ダックエンジニアリング株式会社のインライン検査装置を導入し、取り扱いが難しい特殊紙印刷の品質管理体制を強化した。


 同社は1973年、製版業として創業。画像処理の高い技術が評価され、取引先である印刷会社に製版フィルムや色校正紙を提供してきた。しかし、2000年以降、主力の製版フィルムが急速な印刷工程のコンピュータ・トゥ・プレート化により需要が減少。近い将来、主力業務が消失する危機が見える中、同社はUVオフセット印刷機を導入し、同業者からのレンチキュラーレンズ、アルミ蒸着紙、ユポなどの特殊素材や厚紙の印刷受託へと舵を切ることになる。

白倉社長

 同社代表取締役社長の白倉和昌氏は営業部長だった当時を振り返り、「うまく業態変革ができたと思います」と述べる。現在では新たな領域で確たるポジションを固め、業界内に“難しい素材=マル・ビ”というブランドが浸透した。


 特殊素材や厚紙の印刷は受注の6割を占める。POPやカード、パネル、ノベルティなどの商業印刷系の商材が中心で、そのほとんどがRMGTの四六半裁オフセットUV 6色印刷機と同5色印刷機によるホワイトや特色、ニスを加えた多色刷りとなる。

 

 レンチキュラーシートは、印刷機のフィーダー部で針飛びや当て飛びにより給紙不良を起こすと、印刷された絵柄とレンズに角度のズレが生じてうまく絵柄が切り替わらないことがある。シートはPETやPPをベースにした合成素材で、静電気による針飛びや当て飛びによる斜め搬送が起こりやすい。また、印刷時にはホワイトインキが多用される。絵柄の輪郭の形にホワイトインキを2度引きし、その上からCMYKを印刷することもある。2パス、3パスを要す場合には高い見当精度が求められ、原反を正確に搬送しなければならない。

RMGTのUVオフセット印刷機に搭載された
DACインライン検査機
検査内容をモニタリング

 同社ではオペレータがパラ検などで針飛びや当て飛びをチェックしていたが、不具合の全てをカバーすることが難しかった。仮に納品後にクレームが生じ、刷り直しや全数検品が求められた場合、時間や資材のロスは重い。一般的な用紙に比べてレンチキュラーシートはロスの負担も大きい。


 同様の問題はアルミ蒸着紙や厚紙、薄紙の印刷でも抱えている。同社では反りやすい素材を円滑に給紙、搬送させる技術やノウハウを蓄積してきたが、特殊素材の針飛びや当て飛びは完全に解消することが難しく、オペレータの作業にも負担をかけていた。そうした課題の解決策として、白倉社長が着目したのがインライン検査装置だった。


「導入を検討し始めたのは、アルミ蒸着紙のように印刷紙面が反射する素材でもカメラで検査できるようになった頃でした。検討した結果、反射素材の検査精度が最も高く、RMGTの印刷機との相性も良かったダックエンジニアリングの検査装置を選びました」


 導入後は、針飛びや当飛びで、正しく給紙されなかった素材の特定が可能になり、目視検査の作業負担が大幅に削減された。インライン検査装置が装着された6色機の機長は「針飛び、当て飛びの検査で大いに助かっています」と効果を語る。白倉社長も「エラー箇所に合紙がインサートされるほか、刷本全てにナンバリングもしているので、異常の発見と記録の効率は各段に上がっています。すごくサポートしてくれます」と評価する。


 ダックエンジニアリングのインライン検査装置は給紙不良以外にも、アルミ蒸着紙やベタが多い厚紙のピンホールなども発見する。目視検査では作業者の疲労度で精度が左右されるほか、繁忙期になると仕事を終わらせることが優先されてしまい、検査が不十分になってしまうことがあったが、インライン検査装置で良品を確実に出荷できる体制が強化された。

 白倉社長は「今後、慢性的な人手不足が予想されます。経験が乏しくても検査や機械操作ができる自動化は欠かせなくなります」と見ている。労働者不足という経営課題についてもインライン検査装置が果たす役割は大きい。


株式会社マル・ビ=東京都新宿区赤城下町45

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