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朝日印刷工業 JetPress720S導入で地域需要を取り込む

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2016.4.7

アルバム製作で潜在需要の大きさを実感

朝日印刷工業の富沢部長

朝日印刷工業の富沢部長

群馬県前橋市に本社を置く朝日印刷工業株式会社(群馬県前橋市、石川靖社長)は昨年10月、富士フイルムのインクジェットデジタル印刷機『Jet Press 720S』を導入し、オンデマンドプリントショップ『DiPS.A』で展開するコンシューマー向け印刷事業を強化した。
同社は創業以来、市町村郡史や官報、官公庁の書籍・パンフレットなどを手がけ、今でも受注額全体の約7割を官公庁の仕事が占める。一方、2000年代以降、コンシューマー直結型の事業を強化する方針を立て、地域密着のサービス展開による受注拡大を目指す。その拠点の一つが、2001年に開設したオンデマンドプリントショップ『DiPS.A』だった。POD機による小部数印刷サービスのほか、オリジナルブランド『tocotowa(トコトワ)』の紙文具などの販売も行っている。
同社制作部長の富沢充芳氏は「社内でジョブ分析を行なったところ、10万円以下の小規模なジョブが60%以上を占めていました。この小さなジョブを、確実に効率よく積み上げ、これまで以上に伸ばしていくには、もっと消費者と直接触れ合う機会をつくる必要があると考えました」という。
2003年には、『DiPS.A』の向かいのコミュニティホール『ノイエス朝日』でギャラリー業務を開始。地域で表現活動を行なう人に作品展示や交流の場を提供している。さらに2011年、消費者参加型の新たな情報発信メディアとして、群馬県初の口コミサイト『ぐんラボ!』をオープン。「印刷物の製作」にとどまらず、より幅広い視点から新サービスを展開し、“地域のプラットフォーム”として育てていこうという戦略を打ち出した。

このB to Cの事業をより大きな柱として成長させるべく、2011年には、『富士ゼロックス Color 1000 Press』を導入。PODの生産体制を強化し、営業活動も、従来からの官庁・法人担当とコンシューマー担当を分け、それぞれがより柔軟に動けるようにした。この新体制のもと、『Color 1000 Press』を活かして最初に取り組んだのが、「卒業アルバムを復活させようプロジェクト」だ。県内を中心に、過疎地域や山間部などの学校に、卒業アルバムの製作を提案した。
「過疎地域では児童の数が減り、それに伴って卒業アルバムを取りやめるという学校が増えていました。部数が少ないため、従来手法で印刷するとコストがかかりすぎるということで、学校も保護者も製作を諦めていた。そんな状況を知り、何とか復活させられないだろうかと考えたのです」(富沢部長)
同社が提案した卒業アルバムは、名入れやパーソナルページなど、PODならではのバリアブル要素を盛り込んだもの。これまでに30校以上で「卒業アルバムの復活」を実現したことで、富沢部長は「デジタル印刷の潜在需要の大きさをあらためて実感した」という。
「カレンダーや写真集、あるいは自分史などの個人向け出版の分野で、需要は充分に見込めると確信が持てました。そこで、さらにクオリティが高く、幅広いサイズに対応できるデジタル印刷機を新たに導入し、サービス拡充を図ろうと思いました」

クオリティと機動力を活かし、写真集の製作から販売まで

潜在的な小部数・高品質ニーズを、いかに掘り起こすか。そのための新たな主戦力として選んだのが『Jet Press 720S』だった。導入他社を見学するなど、約1年半にわたり検討を重ね、昨年10月に導入した。決め手になったのは、「オフセット同等以上の色再現性」と「優れたメンテナンス性」だと富沢部長は語る。
「発色のよさに加えて、印刷面が非常に滑らかでした。テカリや凹凸がなく、自然な仕上がりが得られます。また、色域が広く、鮮やかな色調も再現できるため、写真集などの用途に最適だと感じました。メンテナンス性では、プリントヘッドがモジュール構造になっている点がありがたいです。万が一エラーが起こっても、ユニットごとの交換ではなくモジュール単位で交換できるので、メンテナンスに伴う機械停止時間を最小限に抑えられます。これらのメリットは、小ロットの高付加価値印刷を追求していくうえで強力な武器になると考えました」
富沢部長は自ら撮りためた風景写真やスナップ写真を『Jet Press 720S』で出力し、大判の写真集を製作。写真館や写真愛好家などにサンプルとして見せると、大きな手応えを感じるという。
「最近は、デジタルカメラで撮った写真をデータで保管したまま、紙媒体に落とさない方が多くなっているようです。まして個人の作品集なんて考えも及ばない。その理由は、費用と手間がかかり、多くの部数を印刷しても一般に販売する手段を持たないからです。そこで、1冊から手軽に作品集がつくれ、必要なだけいつでも増刷できますよ、販売をお考えなら販売や紹介のチャンネルを確保して売れる仕組みを提案します、という話をさせていただいています。こんな提案ができるのも、『Jet Press 720S』があればこそ」
同社は、『ノイエス朝日』で開催する作品展でも、『Jet Press 720S』を活かした独自のサービスを展開。あらかじめ展示作品を撮影し、『Jet Press 720S』で作品集を製作、展示期間中に販売するというもの。売れ行きの状況に応じて、増刷し会場に供給する。作者の要望があれば、より豪華な装丁で製作することもできる。Jet Pressのクオリティと機動力を活かすことで、作品展に新たな付加価値を提供している。
このほかにも、バリアブルのオリジナルカレンダーや、地域出版物で絶版となっていた貴重な書籍の復刻など、『Jet Press 720S』活用のアイデアは尽きない。今、サービス開始に向けて準備を進めているのは、『晴れの日の記念誌』をつくるという企画だ。
「温泉地の旅館やホテルなどを対象に、宿泊客の記念として写真集や冊子をつくってはどうでしょうかと。旅館で撮った写真や、周辺の観光地で撮影した写真を当社に送っていただければ、それを記念誌としてまとめ、直接お客さまへお届けするというサービスです。群馬県は温泉王国ですから、旅館やホテルの宿泊パックにこの記念誌製作を組み入れていただき、たくさんのお客さまに喜んでいただければと願っています」(富沢部長)

『Jet Press 720S』が生み出す価値を地域の力に

従来の営業スタイルを見直し、B to Cの小ロット印刷市場へとビジネス領域を広げている朝日印刷工業。この戦略の背景にあるのは、「印刷会社はもっと消費者に寄り添い、直結した販売チャンネルを築き、製造から配送まで一貫したサービスを提供することが重要ではないか」という考え方だ。
「よく、“マス・プロダクションからマス・カスタマイゼーションへ”と言われますが、まさにその通りだと痛感しています。『Jet Press 720S』によって、より高い付加価値の製品・サービスを提供できる体制が実現しました。これは、従来の印刷の概念、スタンダードを変えていくもの。そして、経営的観点で見れば、価格競争とは無縁の、しっかりと利益を確保できる土壌になっていくものだと信じています。今後、『Jet Press 720S』が生み出す価値をどんな形で消費者に提供できるか、さらに研究を重ねていきたいと思います」
朝日印刷工業が、『Jet Press 720S』を中核に据えたプラットフォーム事業で目指すのは、情報活用・交流の場を大きく広げ、地域の活性化へとつなげていくこと。地方創生が重要視されるいま、同社の取り組みには熱い期待が集まっている。

サンプル03

JetPress720Sで出力されたフォトブックサンプル①

p39追加

JetPress720Sで出力されたフォトブックサンプル②

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JetPress720Sで出力されたフォトブックサンプル③