キングプリンティング アグフアJETI TAUROで、ビジュアルコミュニケーションの価値高める

キングプリンティング アグフアJETI TAUROで、ビジュアルコミュニケーションの価値高める

 キングプリンティング株式会社(大阪府堺市)はこのほどアジア1号機となるアグフアのハイエンド・ハイブリッドUVインクジェットプリンター『JETI TAURO(ジェットアイ・タウロ)』を導入し、稼動を開始した。9月16日、同社と日本アグフア・ゲバルト株式会社は大阪府堺市のキングプリンティング本社工場で導入の動機や経緯などを説明。キングプリンティングではJETI TAUROの導入により、少量多品種のサイン・ディスプレイをスピード生産することで印刷の価値向上を図っていく。

キングプリンティングが導入したJETI TAURO

高生産・高品質のマシン JETI TAURO  

 キングプリンティングが導入した『JETI TAURO H3300LED』はロール印刷ユニットタイプで、マニュアル印刷テーブルによりボード状のメディアにも対応する。リコー製のプリントヘッド60本を搭載し、最大生産力は453㎡/時と高速。サイズは最大幅3.3mまでに対応し、デュアルロールにより2本のロールを同時に印刷することができる。インクはCMYKにライトシアン、ライトブラックを加えた6色と、ホワイトインクを搭載している。

 インクタンクは大容量で長時間の運転が可能。インクボトルを替えながらの連続稼動にも対応する。また、インクの消費量を抑えながら品質を維持するアグフアのシンインクレイヤーテクノロジーを搭載し、低ランニングコストを実現した。

 ロール紙は直径60㎝、重量700㎏のジャンボロールの装着が可能。一般的な直径36㎝、重量100㎏のロールに比べて、用紙交換作業の回数を削減し、長時間の連続印刷を可能にしている。シート印刷時には最大4枚までの同時描画が可能。印刷ガイドで基材をセットするため、見当精度も優れている。

 RIPはワイドフォーマットインクジェットプリンターに最適化した『ASANTI』。プリンターから生産ジョブ数や枚数、消費インク量、消費用紙枚数、生産時間、廃棄比率などの生産情報を可視化し、経営判断に活かすことができる。

 対象市場は商業印刷やサイン・ディスプレイ、スクリーン印刷、ダンボール、建材装飾。

 日本アグフア・ゲバルトの岡本勝弘社長は記者発表で「3.2mのハイエンドインクジェット市場でナンバーワンのシェアを獲得するという目標に近いところまでビジネスが成長している。今回、JETI TAUROのアジア1号機を導入して頂いた。サイン・ディスプレイ業界のリーディングカンパニーであるキングプリンティング様に導入頂いたことは光栄。JETI TAUROでビジネスを伸ばして頂きたい」と述べている。

 また、アグフア本社のグローバルJETIプロダクトマネージャーのレインヒルデ・アラート氏はキングプリンティングの導入に感謝の意を述べ、開発のポイントとして①シンインクレイヤーテクノロジー、②プラスチックや木材など多種多様な印刷基材への対応、③長期稼動に耐える堅牢性、④ロール・シート切り替え時のダウンタイムの減少、⑤『ASANTI』によるプリプレスの自動化を挙げた。その上で「キングプリンティング様のホームページからどのような仕事をしているのか拝見させて頂いた。全ての仕事で今まで以上に高品質、かつ高生産性で、サポートできると信じている」と述べた。

花摘氏 キングプリンティング様の創業の経緯と現在のお仕事の内容からお話頂けますか。

光弘氏 キングプリンティングの社名は「キングサイズの印刷」という意味です。大型印刷を中心にビジュアルコミュニケーションに関わるあらゆる制作、ソリューションを提供しています。

 当社は1917年に手書き看板の工房として創業し、今年で104年を迎えました。創業当時は映画が大衆娯楽の王様で、映画館を飾る絵看板の注文が殺到している状況でした。その中で手書きよりも効率良く、質の良い看板を大量生産する手法として、創業者が目を付けたのがオフセット印刷でした。

 当時、日本では大型サイズの印刷機が存在していませんでした。そのため、海外から紙幣用の印刷機を購入し、自らの手で改良して看板用の印刷機として使い始めたのが日本初の大型オフセット印刷機となります。

 現在は世界最大級の1.3m×2.0mサイズとA四倍版のオフセット印刷機を設備しています。1997年には他社に先駆けて導入した国内1号機となる5mサイズのインクジェットプリンターを導入しました。現在、大小様々なサイズのインクジェットプリンターを30台設備しています。

 主要業務は主に大型サイズの商業印刷物です。駅構内のポスターや屋外のビルボード、商業施設などの装飾、店舗のタペストリーを多く手掛けています。最近は内装や展示会の装飾も増えています。

花摘氏 続きましてJETI TAURO導入までの経緯と、当時考えられていた課題を教えて頂けますか。

光弘氏 当社はオフセット印刷とインクジェットプリンターを大規模に設備しています。数量や仕様に応じて最適な方法を組み合わせてワンストップで生産できるところが強みです。量産はオフセット印刷、少量はインクジェットプリンターと使い分けています。

 一方、少量多品種の短納期の需要にはインクジェットプリンターの台数を増やしてカバーしていました。年々、インクジェットの需要が高まり、品質もオフセット印刷と遜色なくなっており、インクジェットプリンターの生産性をもっと高めていけば、お客様に対して画期的なサービスが展開できるのではないかと考えていました。

 そうした経緯で2年前から海外の展示会に積極的に足を運び、高速インクジェットの調査を始めました。当時は生産性の面からシングルパスのマシンを調べていましたが、安定性と品質面で優れるマルチパスのインクジェットプリンターの方が当社のお客様に合うと思い発想を変え、マルチパスの高速インクジェットプリンターを使ってオフセット印刷並みの生産性を確保するオペレーションができないか、様々な角度からシミュレーションしてきました。その結果、数字上で可能性が見えてきたので、昨年から具体的に導入を検討してきました。

花摘氏 JETI TAUROの決め手と導入の狙いを教えて頂けますか。

光弘氏 数社の高速インクジェットプリンターの候補がありましたが、それほど多くの選択肢はありませんでした。

 当社ではアグフアの大型プリンター2台を導入しており、長いお付き合いの中で、メーカーとしての信頼があり、アグフア製品の中で検討を始めました。通常、この規模の設備投資であれば、海外メーカーであっても実機を見て確認します。しかし、世界的な新型コロナ禍では難しかったので、ベルギーのアグフアのショールームでオンラインデモをしてもらったり、実際に使う印刷メディアを送ってロングランのテストをしたりしました。制約がある中で検証を繰り返し、品質、生産性、安定性が高いと確信し、導入に至った次第です。

 導入の狙いは印刷メディアの付加価値を高めることです。JETI TAUROにより印刷メディアの多品種印刷における短納期対応が可能になります。これによってお客様に、印刷メディアが柔軟で利便性の高いメディアであることを再認識して頂きたいと思っています。とくに私たちの大型ビジュアルコミュニケーション市場ではデジタルサイネージが増えています。短納期という利便性を備えることで、パフォーマンスが良い印刷メディアはまだまだ戦えると考えています。

花摘氏 最後に今後の展望とビジョンをお聞かせください。

光弘氏 JETI TAUROで少量多品種でも短納期が可能になり、広告主は広告宣伝に地域制を反映しやすくなります。このように印刷メディアに対する認識を変えるポテンシャルを備えていると考えています。

 広告はますますパーソナルなものになっています。印刷メディアもそれに追いついていく必要があります。具体的な稼動計画はこれからですが、JETI TAUROは必ず貢献してくれるでしょう。創業以来のイノベーションの精神で、印刷メディアの付加価値向上を追求していきたいと思います。

 当社は昨年CIを実施し、「世界を楽しく美しく」の理念を掲げました。グローバルに限らず、視覚的な世界や個人的な世界を、我々のビジュアルコミュニケーションの手で楽しく、美しくしていきたいという想いを込めました。グラフィックは存在するだけで環境が変わります。その力をもっと生かしていきたいと考えています。

キングプリンティング株式会社 大阪府大阪市西成区玉出西2丁目7番16号

https://www.kingprinting.co.jp/

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